映画館、増収企業が大幅減少でコロナ禍並みの苦境…も「鬼滅」効果で光明、25年度は回復か

帝国データバンクが実施した映画館業界動向調査によると、2024年度の国内映画館市場は前年度比3.3%減の2775億円となり、コロナ禍以来4年ぶりに縮小した。メガヒット作の不足や洋画配給本数の減少、動画配信サービスの浸透が主な要因となった。
2024年度の業績動向では、売上高が「前年度並み」となった企業が46.1%を占めた一方で、「増収」企業は26.5%にとどまり、前年度の45.4%から18.9ポイント大幅に低下した。増収企業の割合が4割を下回ったのは新型コロナウイルス対策により外出制限が厳しかった2020年度以来となる。
映画動向では『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』『ゴジラ-1.0』『キングダム 大将軍の帰還』など邦画の話題作が相次いで公開されたが、興行収入400億円を超えた『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に匹敵するメガヒット作は少なかった。洋画では『インサイド・ヘッド2』などが人気を集めたものの、米ハリウッドでの脚本家・俳優ストライキの影響で配給本数が減少し、集客に苦戦する映画館が多数を占めた。
損益面では「赤字」企業の割合が44.8%と4年ぶりに拡大した。深夜営業が多い映画館では人員確保が困難となり給与引き上げを実施したほか、電気代やポップコーンなど飲食サービスの仕入れ価格上昇により運営コストが大幅に増加した。多くの映画館で鑑賞料金や飲食メニューの値上げ、クレーンゲーム設置など映画上映以外の事業強化を図ったが、入場者減少の影響が大きく「減収減益」傾向が強まった。
その一方で、2025年度は好転の兆しを見せているという。夏休み期間中に公開後1カ月で興行収入257億円を突破した『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』、実写邦画としては22年ぶりに興行収入100億円を突破した『国宝』などメガヒット作が相次いだ。これらの作品により、映画ファン以外の一般客層も大画面の迫力や音響などの「リアル」体験を求めて映画館に足を向ける傾向がみられる。
ただ、洋画大作への依存、動画配信サービス台頭といった課題は依然として残存しているとしたことで、各社の業績予想を基にした2025年度の映画館市場は、前年度から微増となる2800億円前後が予想されている。