ウルトラマンは「中国で稼ぐ」他作品と異なる構造 人気×中国ゆえの“課題”も露見、直近決算は減退
                    円谷フィールズの人気シリーズ「ウルトラマン」は近年海外展開が顕著で、他作品とは異なり「中国で稼ぐ」という特徴的な収益構造を持つ。昨年度の円谷プロ全体のライセンス収入で国内は9.6億円だったのに対し、中国単体で52億7000万円を記録。海外全体の約90%を占めており、同市場での力強い伸びが際立った。
同社は10月31日に2026年3月期の中間決算を公表。この開示が行われた前のタイミングに「スーパー戦隊」の終了報道(公式未発表)がなされただけに、他のヒーロー作品にはない、ウルトマンの特異的な海外展開がソーシャルメディアなどで取り上げられ注目を集めていた。
同社は今年7月から約2年半にわたる「ウルトラマンシリーズ放送開始60周年」記念事業を展開中で、中国・上海にて同作の記念展示イベント「追光之旅·展望奥特曼60周年主题展」を9月まで開催した。会場となったデパート・上海新世界城では地上階で壁面ラッピングやモニュメント展示などを撮影する人も多く見受けれれた。

直近は「50%減」と落ち込みも
人気上昇とともに好調を見せている同作だが、直近の四半期決算では減退も目立っている。今回の中間決算において「ウルトラマン」などの同社IP関連(コンテンツ&デジタル事業セグメント)の売上高は前年同期比5.7%減、営業利益は同64.6%減となった。

これについて同社は「中国市場において、主力商品のブロック玩具やトレーディングカード関連のライセンス収入が減少し、一時的に減収・減益となった。一過性のヒット商品の販売が落ち着いたこと、IPの多様化に伴い現地パートナーが取り扱い商品の見直しを行ったことが主な要因」と説明。
事業収入を見ると、中国からのライセンス収入は14億4000万円と前年同期比50.3%減と大きく落ち込んでいる。

加えて、3ヶ月前の四半期決算では”好調ゆえ”の問題として「非正規品流通による収益機会の損失」という側面も露見。同社は「ウルトラマンの人気が高まる中国市場において、非正規品の流通が顕著となり、ライセンスビジネスの収益機会に影響を及ぼした」と言及している。

こうした問題の対抗策の一つとして、同社は越境ECサービス「Tmall国際」での中国向け商品販売を7月に開始。自社企画商品のウルトラマンカードゲームは国内外でMD収入が増加し、グローバル累計出荷枚数は約1億2000万枚に達するなど収益性の高い商材の展開も進めている。
また、地域分散の試みとして北米・アジア等への展開も同時進行しており、同地域のライセンス収入は3億7000万円と同37.8%増を記録。全体では減収ながらも地域分散が進んでいる。