婚約、浮気、復讐、モラハラ乱立?Webコミックの利用動向から見る3つの今後のトレンドは


婚約、浮気、復讐、モラハラ乱立?Webコミックの利用動向から見る3つの今後のトレンドは

NTTソルマーレが運営する電子コミックサービス「コミックシーモア」はサービスの20周年を記念し、マンガ市場の20年間の変遷と今後のトレンド分析を発表した。

同社の調査によると、スマホ普及とコロナ禍を通じたライフスタイルの変化が電子コミック市場における大きな転換点となっていると説明。コミックシーモアの読者データや売れ筋タイトルの分析から、次世代のトレンドとして「自立したヒロインが主人公のロマンス・ファンタジー」「夫婦問題・復讐ドラマ」「社会的制裁をテーマにした青年復讐もの」の3つのジャンルを挙げた。

自立ヒロインが輝く「ロマンス・ファンタジー」については、2023年頃から令嬢系や和風モノなど様々なバリエーションで人気を博している中、近年は『おひとり様には慣れましたので。婚約者放置中!』など、自立したヒロインが自ら人生を切り開く作品が台頭している。これらの作品は30代以下の読者が半数以上を占めているといい「読者が自己投影しやすいヒロイン像へとアップデートが進んでいます」と分析した。

「夫婦問題・復讐ドラマ」は、夫への不満やモラハラ、浮気といった家庭内の問題を描く作品として現代女性のリアルな悩みに寄り添うジャンルとして支持を集めている。作品内で女性主人公が我慢を重ねた末に離婚や復讐、自己実現へと踏み出す姿に、読者が共感し、応援しながらスカッとする爽快感を得ているとした。

「社会的制裁をテーマにした青年復讐もの」は現代のスカッと系

「社会的制裁をテーマにした青年復讐もの」では、過去のいじめや職場でのパワハラ、裏切りなどに対して、主人公がSNSの告発や内部告発、巧みな情報操作を用いて加害者に社会的制裁を加えるスマート復讐系の作品が注目を集めている。

かつての復讐ジャンルは暴力や流血といった過激な描写を含むものが多く、主に男性読者の支持を得ていたが、近年は「言葉」や「証拠」で相手を追い詰めるスタイルが台頭。「自分では言えないけれど、こうやって仕返しできたら…」という願望を代弁してくれるような構成は、SNS時代ならではの感情の代償装置として、今後も拡大するとの見通しを共有した。

調査監修を担当した京都国際マンガミュージアム学芸員の倉持佳代子氏は「夫婦問題をテーマにした作品、復讐系は世相を反映していますね。今年も流行しそうな予感です。そして、異世界ものジャンルから派生し、躍進中の『令嬢』ものの勢いも止まりません。定型に倣いつつ、バリエーションを広げるこの題材は、『大人の少女マンガ』として、現代らしい価値観を取り入れながら、30代以降の女性を中心にさらに盛り上がりそうな気がしています」とコメントしている。

次の20年に向けたマンガ界の動きについて、倉持氏は「やはりAIの参入・浸透です。作品作りの現場にすでに変化をもたらしています。また、世界各国のマンガ家・出版社の動きも今後、キーになるかなと」と分析。海外からのマンガ需要の高まりについても言及し、「これまでノーマークだった国から優秀なマンガ家も登場し始めています。翻訳ツールの発展で言語の垣根は徐々になくなっていくでしょうし、多様な表現とそこに描かれる生き方・価値観に触れる機会はますます増えるのではと思います」とし、「この20年を振り返っても、マンガがいかに常に読者の姿と社会を反映しながら柔らかく進化したがよくわかるので、マンガの未来は明るいはずです」と今後の展望を語った。

0719-tkqi073x
・ガラケー時代:2004年8月~2013年12月
0719-spzq2ndg
・スマートフォンの普及:2013年1月~2019年12月
0719-vlc14sw0
・コロナ禍・アフターコロナ:2020年1月~2024年12月
著者 編集部 経済・社会担当
オタクの“今”を届ける新・総合メディアより、アニメ・ゲーム等関連企業の動向やコンテンツ産業の動きを紹介します。エンタメと経済、双方の視点で迅速に、わかりやすく、独自の切り口でお届けいたします。