やはりアニメの“独占配信”は盛り上がりづらいのか 春アニメの分析では話題維持に苦戦した結果も


やはりアニメの“独占配信”は盛り上がりづらいのか 春アニメの分析では話題維持に苦戦した結果も
©佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ/SQUARE ENIX・「片田舎のおっさん、剣聖になる」製作委員会

アニメ作品において、テレビ放送を除き特定のストリーミングサービスだけで観られる「独占配信」のスタイルは毎クール数作品程度存在し、一般的となっている。しかし、アニメファンからは独占配信について「作品が盛り上がりにくい」といった負の側面を指摘する声も多い。

昨日弊誌でも紹介した株式会社ブシロードが公開した「2025年春アニメの話題ランキング」調査報告では、同クールにおける独占配信作品の視聴者行動パターンも分析されていた。

調査報告によると、春クールにPrime Videoにて独占配信された『謎解きはディナーのあとで』『片田舎のおっさん、剣聖になる』の2作品について、放送開始周辺には注目度の確保に一定の成果を示した一方で、SNSでの盛り上がりが検索行動に反映されない傾向が確認されたという。

この調査では2025年春クールのアニメ全62作品を対象に、Googleトレンドによる検索量推定とX投稿量データを用いて10週間の推移を調査。視聴者の感想が多く投稿されるXを軸に、どれほど新規層が検索を通じて興味を持ったかを分析する。

人気原作で話題性は高いが維持には苦戦か

同調査によると、先述の2作品は多くのファンが存在する人気原作のアニメ化なだけあって、いずれも初週の検索量で全作品中3位と4位にランクインしていた。

しかし、『謎解きはディナーのあとで』は8週目にX投稿量維持率が61%まで回復する局面があったものの、検索量維持率は20%に留まり、SNSでの盛り上がりが検索行動に反映されなかった。最終的にX投稿量維持率20%、検索量維持率15%という結果となっている。

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一方、『片田舎のおっさん、剣聖になる』も初週上位の検索量でスタートし、2週目にはX投稿量が117%まで上昇する好調な滑り出しを見せたが、この時点で既に検索量は75%に下降しており、SNSでの盛り上がりと検索行動の乖離が早期から現れたと分析。3週目以降は両指標ともに継続的な下降トレンドを示し、最終的にX投稿量15%、検索量40%となった。

これに対して多くの配信先を持つ他作品のなかには大きく伸ばした例も確認された。YouTubeでも無料で見られた『えぶりでいホスト』は検索量275%、『前橋ウィッチーズ』は検索量103%といった具合に、放送途中から注目を集めたことが示唆されていた。

調査元は、独占配信作品において「SNSで話題性が新規視聴者の関心に転換されにくいという特徴が確認できた」と分析している。この現象が独占配信固有のものかについては更なる検証が必要としているが、少なくとも今季のPrime Video独占作品においては明確な傾向として表れた形となった。

なお、これらの推移や傾向は話題維持に関するものであり、「はじめから話題になっていない」という意味でない点には留意しておきたい。

著者 編集部 経済・社会担当
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