カドカワ、『ELDEN RING』の爆発的ヒットで過去最高の売上高と営業利益に=2023年3月期通期


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株式会社KADOKAWAは12日、自社の2023年3月期における決算および通期連結業績を公表し、売上高と営業利益がともに過去最高を記録したことが明らかとなった。

なかでもゲーム事業が前年比55%増(売上高ベース)の成長が見られ、当該期に特に目立った『ELDEN RING』の大ヒットがグループ全体の業績押上に寄与した。これにより世界市場における日本IP人気も背景もあり、海外売上高比率は13.1%から20.5%に上昇したという。

なお、同社は2024年3月期について、『ELDEN RING』の反動減により減収減益となる見通しを立てており通期連結業績は売上高2,511億50百円、営業利益178億円を見込んでいる。今後は、持続的な成長を実現するために、積極的な投資を行い、グローバル・メディアミックスによるIP価値の最大化を図る、としている。

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※以下発表資料・決算短信より※

2023年3月期通期連結業績 各セグメントの業績

出版セグメント:売上高1,399億90百万円(前年同期比5.3%増)、営業利益131億55百万円(前年同期比24.3%減)

電子書籍・電子雑誌は、市場全体の成長が継続していることに加え、当社が得意とする異世界ジャンルのコミックやメディアミックス作品などを中心に他社ストア向け販売・自社ストア売上ともに好調に推移し、増収となりました。紙書籍・メディア※では、日本IPの人気を背景として、北米・アジアを中心に海外事業の売上成長が継続しました。国内では、新刊点数の増加や継続的な返品率改善を実現したものの、市場全体の縮小影響が大きく、減収となりました。新刊では、『陰の実力者になりたくて!(8)』、『ファイブスター物語(17)』(コミック)、『パンどろぼう おにぎりぼうやのたびだち』(児童書)などの販売が好調に推移しました。権利許諾収入は増収となりました。費用面では、中長期的な成長を見据えた人材への投資、インフレによる紙書籍の資材費などが増加しました。

※紙媒体中心からWeb媒体中心への移行を進めていることに鑑み、2023年3月期より紙雑誌事業の名称をメディア事業に変更

映像セグメント:売上高432億89百万円(前年同期比30.7%増)、営業利益21億69百万円(前年同期比61.8%増)

アニメは新作本数の増加に加え、メディアミックス作品である『オーバーロードⅣ』や『陰の実力者になりたくて!』などの国内向け配信売上や海外向け売上が伸長し、引き続き力強く成長しました。実写映像では、劇場新作『わたしの幸せな結婚』や制作受託の貢献により増収となりましたが、第2四半期に一部の作品において一過性の評価減が発生しました。

 

ゲームセグメント:売上高303億51百万円(前年同期比55.7%増)、営業利益142億18百万円(前年同期比173.4%増)

世界的大ヒットとなったゲーム作品である『ELDEN RING』が増収増益に大きく貢献しました。(株)フロム・ソフトウェアが手掛けた同作は海外ゲームアワード「The Game Awards 2022」において「Game of the Year」を受賞しました。『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』や『メイドインアビス 闇を目指した連星』などの新作を発表した(株)スパイク・チュンソフトも増収増益に寄与しました。また、自社IPのモバイルゲーム化作品である『陰の実力者になりたくて!マスターオブガーデン』は想定を超える好評を博しました。

 

Webサービスセグメント:売上高220億63百万円(前年同期比3.4%増)、営業利益16億41百万円(前年同期比18.5%減)

動画コミュニティサービスでは、動画配信サービス「ニコニコ」の月額有料会員(プレミアム会員)が2023年3月末には131万人となり、2022年3月末からは減少しましたが、動画にアイテムを贈る「ギフト」や広告などの伸長により増収となりました。第4四半期にはログインMAUや新規視聴者数が増加に転じました。各種イベントの企画・運営では、今後のクリエイター投稿とユーザー視聴のさらなる増加を企図した『ニコニコ超会議2022』をリアル会場でも開催し、チケット・物販売上が増収に貢献しましたが、費用増加により、全体では減益となりました。

 

教育セグメント:売上高124億75百万円(前年同期比15.5%増)、営業利益17億68百万円(前年同期比138.2%増)

クリエイティブ分野の人材育成スクールを運営する(株)バンタンでは、新コース設立や展開地域拡大、およびゲームクリエイターを多く輩出する「バンタンゲームアカデミー」などの生徒数が引き続き増加したことにより、増収増益に貢献しました。また、(株)ドワンゴでは、新キャンパス開設などで生徒数が増加しているN高等学校・S高等学校に対して、教育コンテンツ・システムの提供を行うことで引き続き収益を伸ばしています。

 

その他セグメント:売上高171億99百万円(前年同期比49.7%増)、営業損失45億35百万円(前年同期営業損失49億26百万円)

IP体験施設の運営では、集客に苦戦する中、ところざわサクラタウンにおける施設横断的なイベント展開などの取り組みもあり、売上高は増収となりました。MD事業においても増収となりましたが、材料費高騰などにより微減益となりました。また、その他新規事業では一部サービスの開始などにより売上高・営業利益ともに改善しました。

■今後について

2024年3月期通期連結業績は売上高2,511億50百円、営業利益178億円を見込んでおります。『ELDEN RING』の反動減により減収減益となる見通しですが、ゲーム以外の事業の合算では、増収増益を見込んでいます。

また、今後の持続的な成長を実現するために、積極的な投資を行っていきます。出版事業で創出したIPをベースに、海外事業やアニメ事業を拡大し、グローバル・メディアミックスによるIP価値の最大化を図ります。ゲーム事業では、人気IPのロングライフ化やモバイルゲームへの展開拡大などにより、ゲームIPの強化を図り、業績の安定化と中長期視点での成長を目指します。さらには、Webサービス事業のプラットフォームおよびWeb技術を基盤として、ファンコミュニティ事業や教育事業を発展させていきます。不採算事業については、成長性と収益性に鑑みた最適な事業ポートフォリオの構築に向けて、採算改善計画を実行し、リソースを成長分野に再配分してまいります。

財務基本方針については、財務健全性の確保のために自己資本比率50%以上を維持するとともに、さらなる資本効率の改善を追求し、中長期的にはROE10%以上を目指します。株主還元施策は株主配当に加え、投資余力、株価水準、市場環境および財務状況の見通しなどを勘案の上、自己株式の取得を行うこととし、本日5月11日(木)開催の取締役会において、発行済株式総数(自己株式を除く)に対する割合の5.64%相当の8百万株(金額200億円)を上限とする自己株式の取得を決議しております。