バンダイナムコ、次代のアニメ産業を支える“作り手育成”の取り組み 「企業としての責任」意志示す


バンダイナムコ、次代のアニメ産業を支える“作り手育成”の取り組み 「企業としての責任」意志示す

株式会社バンダイナムコフィルムワークスは17日、アニメ産業における人材育成の取り組みについて公表。「日本のアニメ産業を支える次世代クリエイターを育て続けるために」と題し、ニュースレターを通じて具体的な活動内容を紹介した。

同社は2025年から2027年度の中期計画において「人材戦略」を重点戦略の一つに掲げており、業界全体の慢性的な人材不足に対応するため、複数の育成プログラムを展開している。

アニメ産業を広範に見ると、市場規模は2023年に3兆円を突破し、国内外で拡大を続けている一方で、市場の成長に伴い制作現場では人材不足が深刻化している。同社は「”いいもの”をつくり続ける」という理念のもと、しっかりと技術を身に着けたクリエイター人材の育成が急務であるとし、長年アニメ製作・制作を生業としてきた企業としての責任を担うとの意思を示した。

作画塾は2017年から奨励金を「17万円」に増額

具体的な取り組みとして、同社は2018年から「サンライズ作画塾」、2021年から「サンライズ美術塾」を運営している。

1118-4sfm6l9x

テレビアニメの制作本数はこの20年で約3倍の年間300作品に増加しており、現場での人材育成が追いつかない状況を受けて開設されたといい、いずれも現役で活躍するアニメーターや美術監督が指導し、基礎から実践までの技術習得が可能となっている。

同社は奨励金の支給や昼食の無料提供など生活面もサポートしており、今年からは奨励金を10万円から「17万円」に増額した。卒業試験に合格すれば同社の専属スタッフとして活躍する道も開かれている。これまでに作画塾は累計70名が入塾し55名が、美術塾は26名が入塾し20名が合格してクリエイターとして活躍している。

また、社員を対象とした育成プログラムの充実も図る。シナリオライターや演出スタッフを志す社員に向けて「シナリオ塾」と「演出塾」を開催しており、業界で活躍する講師陣の協力のもとでシナリオの書き方や絵コンテ、演出を学ぶことができる。

1118-qkjyil79

これまでに「シナリオ塾」では118名が受講し文芸担当やフリーランスのシナリオライターとして、「演出塾」では50名が受講し半数がアニメ演出家として独り立ちして活躍していると説明した。

また技術面では、同社の制作スタジオSUNRISE Studiosにおいて3DCGや撮影処理の専門部署を設置し、人材の確保と育成、技術の蓄積を行っている。

ガンダムSEED FREEDOMでは培った社内連携も発揮

興行収入50億円を超える大ヒットとなった『機動戦士ガンダム SEED FREEDOM』の戦闘シーンは同社の「制作クリエイション課」の3DCGチームが手掛けており「蓄積された技術力と社内だからこその連携の良さで多数の3DCG モデルを用意し見ごたえある戦闘シーンを作り上げました」と手応えを実感。

同時に、複雑化している撮影処理を行う撮影チームも社内に置き、スタジオの撮影クオリティラインを引き上げているとのこと。

さらに同社は、制作と製作の両方の機能を活かすため「WBスタジオ」を設置し、中長期視点での知的財産創出・獲得と人材育成を推進する。同スタジオが主催する「オリジナルIP企画応募プロジェクト」では新企画を社員に公募し、若手からベテランまで広くチャレンジの場を提供する。

採用された企画は映像事業部署が事業計画のサポートを行い、実践を通じた人材発掘と育成の機会となっているという。

同社はアニメーション業界の人材育成について、企業の立場から今後も新たな挑戦をし続け、世界で活躍できるクリエイターが育つ環境をつくり続けることで、日本が世界に誇る文化の一つでもあるアニメーション産業の発展に寄与していくと意気込んだ。

Yoshioka

著者 Yoshioka
媒体統括 兼 株式会社オタクリエイト代表取締役。領域はアニメ、テクノロジー、コンテンツビジネス、Webシステム開発など。PRプランニングやIP調達も担当。好物は新作アニメ(きらら、百合なら特に)、海外スマホ、アジア旅など。