【特集】シャープ×VTuber「さくらみこ」コラボ家電の“愛が凄すぎる”舞台裏――担当者に聞くこだわりと“喋る家電”の未来


【特集】シャープ×VTuber「さくらみこ」コラボ家電の“愛が凄すぎる”舞台裏――担当者に聞くこだわりと“喋る家電”の未来

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Xでのセリフ公募は3日間で数千件――空気清浄機能があるのに「おなら」も言う

コラボモデルの特長でもある、さくらみこさんのボイス。児玉氏は35Pとしての知識はありつつも、これまでの歴史や語録を先人の35Pたちがまとめたサイトを参考にして検討を進めたという。(児玉氏)

なお、加湿空気清浄機のみとなるが、効果音もさくらみこさんのボイスを搭載。児玉氏によれば、これまでのコラボモデルでは差し替えをおこなっていなかったが、さくらみこさんも効果音のモノマネをするという配信も実施しており、それがきっかけとなったとしている。

また、コラボ加湿空気清浄機向けのキャンペーンとして、本機に搭載されるセリフの一般公募を実施。X上でわずか3日間という期間ではあったが、対象の投稿は数千件におよび、児玉氏は全てチェック。気づきとなったものや、感心するような切り口のセリフもあったこと、なにより熱量を持って投稿してくれたことに感謝しているという。

「35Pたちの思いをしっかりと入れる事ができて、だいぶ純度濃いめのセリフになっています。35Pみんなで作ったものであることを、全35Pにお伝えしたいし、僕もイチ35Pとしても嬉しいです」(児玉氏)

ちなみに募集のあったセリフのなかで、スタッフ間で印象的だったものに「おなら」を挙げる。しかも、これは製品に搭載されたものになっている。

「空気清浄機は空気をきれいにする家電というなかで、こうしたセリフの要望が出てくるというのは面白いですし、シャープ内では絶対に考えつかない、できないであろうセリフでもあります」(山口氏)

「いくらなんでも『お部屋がくさいです』とは言われたくないわけで。通常、入れるボイスに関してはだいぶフォローを入れてますし、遠回しにしたりぼかした表現にするなど、極力臭いと言わないようなセリフにしてきたんです。でも今回、例えばハウスダストが舞っていても、『おなら』とか『くせえのら』などと言います。これはみこさんだから、そして購入される方が明確に35Pだから許されるラインと思います」(児玉氏)

シャープしか作らないであろう加湿空気清浄機型ぬいぐるみ

今回のコラボでは、加湿空気清浄機型ぬいぐるみも販売する。これについては、シャープならではのものを作りたいという安田氏の要望、また徳永氏から出されたいろいろなアイデアがあったなかのひとつに、ぬいぐるみがあったことが起因しているという。もっとも、ただ単にさくらみこさんのぬいぐるみを作るだけでは意味がないと考えていた児玉氏は、加湿空気清浄機型のぬいぐるみであれば、シャープしか作らないであろうというコンセプトにも合致するとし、制作に至ったと振り返る。

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「実物は難しいが、12cmサイズのキーホルダータイプにすれば可能になると。一方で発表時の反応やみこさんからのコメントで、加湿空気清浄機やホットクックの価格が価格なので、手の届かない人にも受け取ってくれたのなら、ありがたいです」(児玉氏)

ちなみに「35PモチーフVer.」のデザインについて、児玉氏は当初、加湿空気清浄機のもうひとつのデザインとして検討していたものだったことを話す。もっともおるだん先生が描いたイラストが素晴らしいということもあり、それ一本で勝負することに決め、世に出さないつもりだったが、35PモチーフVer.のデザインをさくらみこさんも気に入っていただいていたこともあり、ぬいぐるみのほうで使用することになったと明かした。

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大反響だったX上の“謝罪”の裏側――注文殺到も35Pの温かさ感じる

さくらみこさんとのコラボ商品発表については、シャープ公式Xアカウントの“中の人”がカバー社を訪問し、「水のいらない加湿器」発言を謝罪して「水のいる加湿空気清浄機」として販売するという、いわゆる“茶番”が行われた。謝罪の対応に、カバー代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏が登場したことも、大きな話題となった。これは、カバーとの打ち合わせで塚越氏が突如提案したことから実現したという。

「シャープさん(公式Xアカウント担当者)から”謝罪”というキーワードをもらっていて、どうせやるならお祭り騒ぎにしたいと思って企画にしました。大きな反響をいただけてとても嬉しいです。ただ、この反響は僕の力では全然なくて、当初は「みこだにぇーさん(※さくらみこさんの分身)」に登場いただく方向でカバーさんとMTGしていたのですが、塚越がアイデアを提案してくれました」(児玉氏)

「私自身もホロライブが好きなんです。それで、谷郷社長はホロライブのメンバーやファンの方々から“YAGOO”の愛称で親しまれていることをよく知っていました。話題作りの一環というなかで、より大きな反響が得られるであろうというのもありますし、何よりみなさんに楽しんでもらえるかな、と感じたので提案しました」(塚越氏)

特に、谷郷社長が直立不動で真剣な表情で、シャープ公式Xの中の人を出迎える投稿は反響も大きく、1万4000リポストに10万いいねも付くほどのものになったとしている。

「撮影は短い時間だったのですけど、谷郷社長にも協力していただけてありがたかったです。普段はにこやかな表情をされていると伺っていて、撮影中もそうだったのですが、シャープ公式Xの中の人を出迎えるときは真剣な表情をしていることに、立ち会っていたカバーの方も少し驚いていたようです。おそらく谷郷社長のなかでこのほうがいいと思われていたのかもしれません」(山口氏)

こうして注目を集め続けたコラボモデルは、2月21日に受注受付を開始すると、注文が殺到。3月15日時点では加湿空気清浄機は注文から5〜6カ月以上、ホットクックは2〜4カ月以上という、出荷に時間がかかる状態となり、“想像をはるかに超えるレベル”と、関係者が口をそろえるほどのものだった。

「我々としてもある程度は想定して、できるだけ多くの方に早く届けられるよう準備はしていたのですが……。お待たせしている状況ではありますが、少しでも早く発送できるように調整を行っています」(安田氏)

想像以上の注文で出荷する期間が長くなってしまう出来事は、ネガティブにとらえられるところだが、購入者の反応が温かい、ということも口をそろえた。

「『もっと早くしてほしい』という意見もあって当然ですし、そうしたことも想定していたのですが、『わかっていることなので大丈夫です』『全然待ちます。楽しみです』という声ばかりで。35Pのみなさん、しいてはVTuberのファンの温かさを知った機会で、とても救われました」(山口氏)

「これまでも、さくらみこさんとシャープ公式Xとの、心温まる3年間のやりとりの積み重ねがあって、みなさんが商品化してほしいと願っていたところがあります。3年間待っていたので、数カ月程度は全然気にしない、と思ってくださっていると推察しますし、それは本当にありがたいことです。もちろんその言葉に甘えず、ご注文いただいたみなさまに、一日でも早くお届けできるよう調整や手配は続けていきます」(塚越氏)

10年以上にわたる“喋る家電”の取り組みにおけるこだわり、そして未来像

今回制作の中心となった児玉氏は、前職において大手ゲームメーカーに従事し、キャラクターの設計やゲームのディレクションを行っていた経歴を持つ。そのため、ゲーム業界出身でエンタメコンテンツの制作を手がけてきたからこそのこだわりや、勘所も盛り込んだ製品になったという。もっとも児玉氏はシャープ入社時に、このようなことができるとは思っていなかったと振り返る。

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さとうかずや

著者 さとうかずや
本業はお堅い会社の会社員。かつてはテクノロジー&ビジネス情報メディアの硬派(自称)なIT系編集記者であったにもかかわらず、ゲームエンタメ担当としてこれまで特定のキャラにスポットをあてたゲーム記事や、キャラコンテンツのライブイベント記事を書き続け、特に「アイドルマスター」と「ラブライブ!」シリーズは、10年以上にわたってあわせて100本以上を執筆。その経験をいかして、副業ゲームエンタメライターとして寄稿も行うことに。 アイマス歴は、アーケード版ロケテスト1回目からのプレーヤー。 X(旧Twitter):https://x.com/310kazuya