元「アイマス」の“ガミP”こと坂上陽三氏ら著名業界人が語る“裏話”とゲーム業界のこれから【レポート】


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一方の馬場氏は、ゲーム制作に取り組むもチームメンバーは少なく内製はできない状態。関係各社に回ったり探したりして立ち上げるという形であったため、ひとりで企画書や仕様書作成のみならず、開発会社探しや打ち合わせなどの立ち会い、権利元への営業、ゲーム筐体の生産工場にいたるまで足を運ぶという“プレイングプロデューサー”“ゆりかごから墓場まで全部やる”と表現するような具合で、ゲーム制作を進めていったという。

それゆえ、合併して内製でチームを組成したとき、同じ社屋にこれだけのスタッフがそろっていることに感動したことを振り返る。あわせて外部との協力による制作と、内部制作の両方を経験したのは学びになっていると語っていた。

ゲーム市場のグローバル展開は必然、“地球相手にコンテンツを提供”

今度は、働きはじめての苦労や仕事のやりがいをテーマにトークが展開。馬場氏は、現状のゲーム制作は、いかにプロジェクトやチームのメンバーとコミュニケーションを取りながら、ワンチームになって作るかが問われるとの見解を示した。

そして、たとえチーム全員が4番バッターでも、全員がエースストライカーでもダメだとして「個々の役割やポジションがあって初めてチームとして成立するもので、たとえ個人の力量があっても、チーム力で勝たなければいけない」と語る。馬場氏自身としても団体スポーツを経験しているゆえに、チーム力を重要視しているとともに、それがやりがいと説いていた。

そして話題は、ゲーム市場のグローバル展開へ。瀬川氏は、世界のゲーム市場において30億人がプレイしているとされるが、日本の人口そのものは1億人強というのが現実だと共有した。

馬場氏は、現行のゲーム機におけるスペックやPCがメインとなっている現状では、開発費もスタッフィングも膨大であること、社会としても多様化していることを踏まえると、「日本国内で閉じておくことはできない」とキッパリ。考え方としても、日本で作ったものを海外に持って行くのではなく、“地球を相手にどれだけいいコンテンツを作り、提供するか”になっているという。

さらに会社によっても違うという前置きをしつつも、国内の売り上げは20%以下程度となっており、8割以上は北米欧州を中心としたワールドワイドというのも実情で、今後新興国の盛り上がりも想定すると、世界中のプレーヤーをターゲットとして勝負できないコンテンツは厳しくなっていくとも語る。

馬場氏は続けて、“世界一を目指す”ということに関して「フィジカルなスポーツでは、自身が持つ身体的なポテンシャルや体力的な限界もあり極めて難しいものの、ゲームであれば歳を重ねても狙える」ものと私見を述べた。実際、国際的な表彰式典である「The Game Awards」で日本のタイトルが受賞していることもあり、世界一を目指せるワクワク感があるのがゲーム業界だそう。

坂上氏は、2023年におけるゲーム市場の売上はおよそ29兆円とされており、映画市場は15兆円と、倍近い市場規模があることに触れ、日本では少子化など人口減少が課題となっているなか、世界で見れば人口が増えている状況を考えると、ワールドワイドの展開は必須と語った。

「ユーザー視点」「コミュニケーション」「チャレンジ」、ゲーム制作で大切なもの

ゲームを開発するうえで大切なことについてもトークが行われた。まず坂上氏は「いかにユーザー視点に立つか」を挙げる。坂上氏によれば結構難しいとのことで、開発側ではアイデアが優先しがちで、それに対してターゲットとなるユーザーを後付けにして進めてしまうことも多いと指摘。

そして、ユーザーが望んだり求める体験や体感となるポイントをどこにもってくるのか、そのうえでのアイデアが大事だとも説く。開発側のアイデアを優先してしまうと、どんなに面白いゲームでも、ユーザーにとっては、よくわからないゲームになってしまう危険があり、特に今の時代は少しでもわからないとすぐやめてしまう傾向が強いため、ここは大事にしてほしいと語った。

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さとうかずや

著者 さとうかずや
本業はお堅い会社の会社員。かつてはテクノロジー&ビジネス情報メディアの硬派(自称)なIT系編集記者であったにもかかわらず、ゲームエンタメ担当としてこれまで特定のキャラにスポットをあてたゲーム記事や、キャラコンテンツのライブイベント記事を書き続け、特に「アイドルマスター」と「ラブライブ!」シリーズは、10年以上にわたってあわせて100本以上を執筆。その経験をいかして、副業ゲームエンタメライターとして寄稿も行うことに。 アイマス歴は、アーケード版ロケテスト1回目からのプレーヤー。 X(旧Twitter):https://x.com/310kazuya