ゲーム開発の受託大手トーセ、通期業績は大幅赤字に 来期は“新ハード”など市場好転で黒字転換見通し


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ゲーム開発大手のトーセ(4728)は10日、2024年8月期の連結決算を発表し、通期での赤字決算となったことを明らかにした。来期は経営体制の見直しやコンシューマ市場の好転などを見越して、黒字回復となる見通し。

トーセは国内最大級の独立系受託開発専門企業として、これまで任天堂、ソニー、カプコン、バンダイナムコ、MIXIなど多数のゲーム関連企業と取引し、累計2,300本近い開発経歴を持つ。44期連続の黒字決算という健康経営を続けていた。

外部影響で開発中止や遅延が打撃

しかし、直近の通期売上高は前年同期比20.2%減の46億15百万円、営業損失は5億22百万円(前期は4億88百万円の黒字)、純損失は2億60百万円(前期は4億99百万円の黒字)となった。業績悪化の主な要因は、ゲーム開発の受託事業における2件の不採算案件と、複数案件の中止・失注による影響を挙げている。

決算資料より
決算資料より

特に、ゲームソフト開発において、開発要件の大幅な増加による作業量増大や開発期間の延長が発生したほか、顧客企業におけるゲーム開発方針の転換により、複数の開発案件が中止・失注となり、開発人員の稼働率低下や売上の逸失を招いたとしている。

ゲーム開発市場の現状について、同社は「複数の企業では、開発中または開発したタイトルの評価替えがされるなど、ゲーム開発の方針や考え方の転換が見られました」と説明。本年春季にはスクウェア・エニックスが大幅な特別損失や開発中断に踏み込んでおり、大きな注目を集めることとなった。

そうした背景から、同社は業績回復に向けた経営資源の集中を図っており、先日にはフィリピン子会社と札幌開発センターの閉鎖を決定。これに伴う特別損失として約1億72百万円を計上していた。

来期は市場好転や構造改革で黒字換目指す

業績説明に合わせて、同社の2025年8月期については黒字転換を目指す業績見通しを明らかにした。市場環境の好転と構造改革により、56億円の売上高(前期比21.3%増)、営業利益2億80百万円を見込んでいる。

特に追い風となるのが、任天堂による次世代ゲーム機の発表予定だという。発売時期が明確になることで市場の期待が高まり、新たなソフト開発需要が見込まれるほか、すでに市場に浸透したプレイステーション5向けや、成長を続けるPC向けゲームの開発需要も堅調に推移すると予想している。

一方で、スマートフォンゲーム市場については、国内市場の成熟化と競争激化により、新規コンテンツの開発や市場投入には慎重な姿勢が続くとみられる。ただし、グローバルゲーム市場全体では、コロナ禍の特需は収束したものの、パンデミック前を上回る水準で推移しており、今後の成長を期待していた。

業績回復に向けた取り組みとして、同社は9月にプロジェクトマネジメント支援室を新設。開発プロジェクトとは別の視点からモニタリングし、開発進行とトラブルの早期発見・対策を強化する。また、すでに複数の大型開発案件が進行中で、2025年8月期前半にリリースが予定されているタイトルもあるという。

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著者 編集部 経済・社会担当
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