アップル、EU新法への対応を発表「代替アプリストアでも手数料徴収」「“Apple税”減額」「WebKit強制の撤廃」など盛り込む


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Appleは日本時間の26日深夜、EUが3月より施行を予定している「デジタル市場法 (DMA)」への準拠を目的とした、iOS、Safari、App Store の変更内容を発表した。以下の変更はEU圏内で提供されているiOSに3月以降より適用される見通し。

“代替アプリストア”提供の枠組み発表

まずiOSにおける変更として「代替アプリマーケットプレイス(alternative app marketplaces)」と呼ばれる新たなアプリ提供の枠組みが大きな注目を集めている。現在、iOSで利用可能なアプリケーションはすべてApp Storeを通じてのみインストールが可能になっているが、EUはDMAに「サイドローディング義務化」の規定を盛り込んだことにより、Appleは本規定への対応が迫られていた。

3月以降に提供を予定している「iOS17.4」からは新たな「代替アプリマーケットプレイス(代替アプリストア)」に関する仕組みが搭載され、同時にセキュリティの問題への対策として新たな公証システムも実装する予定であることを発表した。

続いてApp Storeへの変更としては、アプリ内課金への手数料減額が挙げられる。EU内で提供されるiOSアプリを対象に従来の30%から17%(+3%)へと大幅な手数料減額が行われ、特に中小規模のデベロッパーについても15%→10%(+3%)への引き下げが予定されている。

また、第三者アプリストアの許容に伴い、新たにCTF(Core Technology Fee)とよばれる手数料制度が登場。App Storeや代替アプリストアで配布されるiOS アプリを対象に「100万インストール以降、1インストールごとに0.5ユーロの支払い義務」が発生することに。Appleによると「100万インストールの基準を満たすデベロッパーは1%未満で影響は限定的」とコメントしている。

新たな手数料制度「CTF」の影響について(Apple公式提供)

開発者は朗報?WebKit強制の撤廃

そして代替アプリストアの導入に加えて、もう一つ大きな変更点として「WebKit強制の撤廃」が話題に。WebKitはiOSで標準実装されているレンダリングエンジン(ウェブページを表示するためのシステム)であり、AppleはChromium系「Blink」やFirefoxの「Gecko」といったサードパーティ製エンジンの搭載を許可していなかった。

これによりデベロッパーの間では“Safariとそれ以外”という格好でブラウザ標準化への遅れが指摘されていたもののの、今回のDMAへの規定対応に伴い、WebKit強制が撤廃されることが明らかに。今後はブラウザ提供元が独自で開発したレンダリングエンジンの搭載が可能になる。

こうした一連の変更に対し、Appleは「デジタル市場法の要件に準拠すると同時に、この規制によってもたらされるプライバシーとセキュリティの脅威の増加からEU ユーザーを保護する必要がある」と公表しており、必ずしもAppleとEU、双方の利害一致が伴っていないことが見受けられる。今後はApple Developerなどの開発者サービスにて情報を提供するとしている。

Apple announces changes to iOS, Safari, and the App Store in the European Union