【冬の贅沢】まるで4DX?暖房消して『遊星からの物体X』を観るという選択


【冬の贅沢】まるで4DX?暖房消して『遊星からの物体X』を観るという選択

1938年、アメリカの小説家ジョン・W・キャンベルがとんでもない短編SF小説を完成させた。タイトルは『影が行く』。大昔に南極に飛来していた正体不明の怪物と同地前哨基地に滞在する人々の対決を描く閉鎖環境ホラー作品である。

好評を受けたこの小説は1951年に『遊星よりの物体X』として映画化。さらに1982年には、リメイク作品として『遊星からの物体X』と改題されて再度制作され、こちらは日本でも大ヒットしている。

この『遊星からの物体X』は、2025年現在においてもSFホラーの金字塔として、多くのマニアの心を魅了して離さない。

今日は、この『遊星からの物体X』にまつわる、楽しみ方の話をしていきたい……。

南極を舞台とした映画を凍てついた環境で観る贅沢!

昨今、劇場では4DXという形式での鑑賞が広く知られるようになった。劇中シーンと連動して、風が吹いたり水しぶきがかかったり、座席が揺れるという、映像体験にプラスアルファの価値を付与したサービス。

これにより、映画は観るだけでなく体感するコンテンツに昇華した。

ただ、大前提として4DX対応のシアターでなければ、この体験は不可能とされている……しかし、実は4DXに迫る環境は構築できなくても、工夫次第で自宅でも同じような特殊効果は楽しめないものか。

日頃から暇なのでそういった無駄なことを考えていた筆者は、今から4年ほど前に、ある楽しみ方を創出することとなる。それが作品と自宅の環境を近似させるという手段だった。

簡単に書くと、季節に応じて観る映画にこだわりを持つことで、その映画への没入感を増加させるというのがその全貌。たとえば映画『プレデター』は現在最新作『バッドランド』も公開中だが、劇中のプレデターが地球に訪れる理由は、初期においてはかなり蒸し暑い地域、もしくは真夏に狩りをするルールによるものとされていた。

そのため、稀に見る猛暑に見舞われたロサンゼルスを舞台とした『プレデター2』を観る場合は、あえて真夏を選ぶのだ。

その上で室内の冷房を停止させ、扇風機も使わない。こうすることで、主人公ハリガンの活躍を、暑さと湿度を伴う形で応援できる。少なくとも筆者はそれができている。(弊誌でも過去に紹介済み)

では『遊星からの物体X』の旬と言える時期はいつか。今の日本では冬にあたる、まさにこれからがシーズン最盛期なのである。

これからの時期、映画を自宅で楽しむなら、これはもう冬。もしくは南極や北極を舞台にした映画を選ぶのが一番!暖房を止めて家の中をキンキンに冷やした状態で、南極を舞台にした『遊星からの物体X』を観るなんてのは、最高の映像体験と言えるのではないだろうか。

劇中のとにかく寒そうな雰囲気と自分の置かれている境遇をしっかりリンクさせるというと、バカバカしいものの、肌感覚から没入できてオススメだ。

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火炎放射器のシーンのみヒーター可 ウイスキーもあるとなお良し!

また、単に寒い環境が描かれる映画を、防寒着を身に着けながら観ているだけでも十分だが、そこにアクセントを入れる余地があると俄然楽しめる。

たとえば『遊星からの物体X』では、火炎瓶を作ったり、火炎放射器を使用するなど、寒い環境で観るには目の保養となる暖かいシーン(物理的な意味で)も登場する。

こういうとき「ああ、火の温もりが恋しい」と思うものだが、だったら劇中動揺、温もりを体感すればいいのだ。あらかじめ手近な場所にヒーターを置いておき、火炎放射器で化け物を焼くシーンが出るたびに、炎とリンクさせる形でヒーターの電源を入れる。

するとどうでしょう。まさに自分が劇中に紛れ込んだような気がしないでもない感覚を得られる。もちろん、つけっぱなしは厳禁。火炎放射器の出番が終わればまたヒーターには沈黙してもらい、再び極寒の映画鑑賞を続けることが大切だ。

また、本作では寒さ対策として前哨基地にウイスキーがボトルでいくつも常備されており、ラストでこのウイスキーを主人公が生き残った唯一の仲間と思しき人物に手渡すシーンは色んな意味で有名。そのため、あらかじめウイスキーボトルを用意しておき、ここでグビッと飲むのもまた一興。

体も温まるし、そういう体験もまた映画の印象をより強くしてくれるに違いない。

没入度も高まるのでオススメ!ただし元気がないときは控えて…

今回は冬だからこそ自宅で体感できる疑似4DX体験についての提案をしてみた。

流石に座席が動いたりといった本格的な機能は再現も難しいので、自分で座椅子ごと揺れるなどして努力するしかないが、寒さ、暑さは自分で環境を設定できる。

もちろんこんなバカなことをして風邪を引いても意味がないので、体が弱い方には推奨できないほか、ご家族、ペットのいる世帯でもオススメできないが…。

ちなみに筆者は以前豪雪地帯に住んでいたことがあるが、真冬に『シャイニング』を観賞した際に、終盤で窓を開けて劇中の雪のシーンと現実がリンクするように調整したことがある。家の中に雪が入って後始末が大変なので、みなさんは真似をしない方がいい。

著者 松本ミゾレ