【徹底考察】宇宙最強の猫はコイツだ!1979映画・完全生物『エイリアン』の惨禍から生き延びたジョーンズ

1979年。あるSFホラー映画が封切りとなった。その映画のタイトルは『エイリアン』。今でこそエイリアンという単語自体が宇宙人を指すポピュラーな表現になったが、元は異国人という意味合いを持つ言葉である。
宇宙船の中という閉鎖的な環境の中で、人類がまだ遭遇したことのない生物によって乗組員が次々に襲撃される上、その乗組員の中に実はアンドロイドまで紛れ込んでいるという二重の恐怖。これをしっかりと描いたことで本作は世界的大ヒットを果たし、主人公役のシガニー・ウィーバーと監督のリドリー・スコットは、本作を機に注目を浴びることとなった。
劇中のエイリアンはあらゆる攻撃手段が通用しない強靭さと苛烈な攻撃性を有した完全生物で、手に負えない。
このため、ろくな武装もなかった宇宙船ノモストロ号の乗員たちはほとんどまともな抵抗もできないまま、次々に惨死してしまう……。
そんなノモストロ号には人間とアンドロイド、そしてさらに1匹の猫も乗船していた。
その猫の名はジョーンズ。今回は絶望的な状況に巻き込まれたジョーンズの、劇中の動静から、彼こそが宇宙最強の猫ではないか?という点についてご紹介したい。
最強の理由その1!エイリアンと遭遇して無傷で帰還
本作においてジョーンズの出番は多い。猫なので犬と違ってしつけが出来ないため、乗組員に余計な仕事を定期的に課すという猫本来の役割も行う。主人公のリプリーからは「悪い子」呼ばわりされている。
ところでエイリアンはまずエッグチェンバーと呼ばれる卵の状態下で獲物を待ち、標的となる生物が接近した際にフェイハガーと呼ばれる形態が飛び出して顔面に貼り付く形で寄生する。
その際にエイリアンの幼体を標的の体内に送り込む。直後にフェイハガーは死ぬが、宿主となった生物の体内で急成長したしばらくのちに覚醒し、その腹を食い破って外界に出る。これを「チェストバスター」と呼ぶ。
チェストバスターが成長した姿が、第1作での最終形態となるゼノモーフ。第1作目の個体はビッグチャップという愛称も与えられている。
劇中ではこのような形で成育していくエイリアンに右往左往しながら犠牲者を増やすばかりの乗組員。時にはジョーンズもエイリアンとかなり肉迫するのだが、ある意味で人間が彼の身代わりのような形で……というか緊迫の状況でジョーンズの姿を見て「なんだ猫か」と油断したところを襲われるため、彼自身に危害が及ぶことはなかった。
そのため結論を書いてしまうと、本作では実に多くの登場人物が死んでしまうが、リプリーと彼だけは存命する。しかも満身創痍のリプリーと違い、ジョーンズは最後まで怪我の一つも負うわけでなく、再び冷凍睡眠措置を受けて長い眠りにつくのである。
エイリアンと遭遇したのに終始無傷。結果論ではあるが、これはとんでもないことであり、この一点だけをとってジョーンズは最強と言うことも、それほどおかしくはないのではなかろうか。
最強の理由その2!エッグチェンバーより小さいから寄生できない!
エイリアンは前述のように、最終形態を形成するまでに複数の形態がそれぞれの役目を全うし、次代に繋ぐというサイクルで生きている。
とりわけ人間のようなサイズの生き物はフェイスハガーも寄生しやすく、チェストバスターが体内に育つまで十分な依り代になる格好の標的だった。
逆に言えば、寄生するにしても標的のサイズが十分でなければ難しいということになる。自分より小さい生き物に寄生するのは、効率が悪すぎる。
猫はその体がそもそも小さく、フェイスハガーが寄生しようにもなかなか難しい。無理に寄生したとしても、体が小さければ内部でチェストバスターがどこまで成育できるか分からない。
劇中終盤では、キャリーに入った状態のジョーンズがビッグチャップと遭遇し、ゼロ距離でお互いを“観察”するシーンがある。
ここで観客はとうとうジョーンズの命運が尽きたと覚悟するのだが、ビッグチャップは意外にもジョーンズに一切興味を持たず、リプリー追跡に移行している。
サイズが小さい猫のような生き物では、流石にビッグチャップからしてもどうでもいい存在かつ、襲撃の対象ですらなかったということかもしれない。
ただ、動物だから安全というわけでは決してない。
『エイリアン3』では犬を宿主にした四足歩行型エイリアンが登場している。最低でも中型犬程度のサイズであれば、寄生の対象になるようだ。第1作目のジョーンズが猫ではなく犬だったら、事態はもっと悲惨なものになっていたということになる。
でもジョーンズは猫だったのでなんだかんだ無事。極限状態で完全生物であるビッグチャップからの襲撃対象外という、まさに奇跡である。
襲われなければ死なないので、ジョーンズはこれまた最高に強運の持ち主だったということが言える。
最強の理由その3!コールドスリープ帰還も含めると超長生きで安心フェードアウト
猫の平均的な寿命は、現在では15年から20年。
『エイリアン』公開当時はまだ猫の適切な飼育方法が確立されておらず、10年も生きればかなり長生きとされる時代であった。
日本でも平成初期頃って、飼い猫を外に出すのも一般的だし、味噌汁の残りを与えることもまた一般的だった。
諸々長生きしにくい環境で育てていたので、なかなか10歳を超えることは難しかった。ではジョーンズはどうか。実はこのジョーンズ、分かっている範囲で最低でも57年は存命している。
『エイリアン』のラストでリプリーと共に冷凍睡眠状態に移行したわけだが、その後2人を乗せたノモストロ号からの脱出艇は、57年も宇宙を漂流し続けていた。
冷凍睡眠下なので生命活動は停止していたが、やがて脱出艇が地球周回軌道に至ったことでようやく回収され、宇宙ステーションに回収され、ここでリプリーと共に目を覚ます。
第1作時点でジョーンズが何歳だったのかは不明だが、そもそも第1作冒頭で冷凍睡眠から目覚めている描写があるため、その見た目が成猫であることや冷凍睡眠期間を足すとジョーンズは60歳を超えていたとしても不思議ではない。
実際の活動期間はせいぜい数年程度かもしれないが、ともかく彼が生存していた期間を純粋に見る限りは、ジョーンズはこの世の猫の中でも最長の存命期間を有していたことは間違いないだろう。
しかも『エイリアン2』において冷凍睡眠から目覚めたジョーンズは特に体にダメージもなかったように見受けられるし、リプリーと短い期間だが同棲している。
何の検査もしないままこういった生活に至ることは考えられないため、精密検査の結果異常なしと見なされたのだろう。そしてここでフェードアウト。つまり続く惨劇に巻き込まれずに済んでいる。
恐らくジョーンズはこのまま宇宙ステーション勤務になったか、地球暮らしになったかの二択だろう。
もし彼が『エイリアン2』でリプリーと行動を共にする形となった場合、たとえ今回もまた惨禍を逃れたとしても、今度は脱出艇が破損するという結果が待ち受けているので結果としては死んでいたかもしれない。
その事態を回避することができたのもまた強運。作品を跨いでも、ジョーンズは際立ったラッキーキャットだったのだ。
そもそもエイリアンのような化け物と遭遇して殺されたり寄生されずに済んだりした者は、既に体内にチェストバスターが巣食っている哀れな犠牲者かジョーンズしかいない。
ビッグチャップからの攻撃ターゲット外認定され、そのままとんでもなく長生きすることになったジョーンズこそ、宇宙最強の猫と呼んで差し支えないだろう。