アニメ産業、韓国台湾へ制作発注の動き進む―調査機関は早急な環境改善を指摘「排除される可能性」

帝国データバンクが取りまとめたアニメ制作市場の動向調査によると、2024年のアニメ制作市場は3621億4200万円となり、前年を4.0%上回って過去最高を更新。元請制作のライセンス事業が好調だったほか、大型アニメ作品が市場全体を押し上げた。
業態別では元請・グロス請において収入が増加する一方、制作コスト高で収益力が悪化するなど、人材不足とコスト増が課題となっている現状が浮き彫りになった。(詳細は関連記事参照)
また、同調査からは海外企業との取引動向の変化も報告されており、注目ポイントとしてチェックしておきたい。
中国以外に東南アジアも取引増
2021年以降の取引データがある177社を分析した結果、外注や制作請負、作品提供などで海外企業との取引が判明した企業の割合は45.2%に達し、2023年時点の40.8%から4.4ポイント増加した。
取引先の本社所在地別では米国が23.7%で最も多く、NetflixやAmazonなど国際系動画プラットフォーマーへの作品提供や独占配信契約が挙げられるが、その割合は低下傾向にあるという。中国も14.7%と主要な発注先として現地制作会社への外注が多かったもののが、同様に割合が減少した。
一方で韓国が10.2%、台湾が2.8%と、主に発注先として取引を行う制作会社が増加しているほか、ベトナムやフィリピンなど東南アジア向け取引も目立った。日本アニメにおいては、国外への一部制作工程の発注を行う例は多く見られており、中国に加えて韓国、台湾などアジア各国に広げる動きが強まっている。
同調査と海外との繋がりとして、2024年の日本アニメ制作産業について、依然として低賃金で従事するアニメーターが多く、過度な長期労働や不公正な請負関係、クリエーターの知的財産権侵害など、長年にわたる業界全体の課題が国内のみならず海外からも指摘されるケースが目立ったと指摘。
環境改善が急務との指摘も
近年は「労働搾取」によって成り立つ財・サービスを市場やサプライチェーンから除外する動きが、特に欧米諸国を中心に広がっている。調査員は「今後こうした課題に改善がみられない場合、グローバルコンテンツから日本アニメが排除される可能性もある」と、抜本的な改善策が急がれることに警鐘を鳴らした。
2020年代後半のアニメ制作業界は、日本アニメがインターネット配信などを通じてグローバルコンテンツ化が進むなか、労働環境の適正化、クオリティ維持や将来世代への技術継承といった課題にどう対応するかが焦点となる。