「独占配信決定→盛り上がらず」アニメ化の“あるある”に共感多数 制作側やファンにとってメリットなのか?


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先日、X上でアニメ作品の「独占配信」をめぐる「あるある」が投稿され、10万いいねを超える反響と共感を集め注目された。ここでは独占配信の現状やメリットをおさらいする。

話題になった投稿ではアニメの盛り上がりが「急降下する」流れとして「アニメ化決定発表→独占配信決定」を挙げており、特にディズニープラスでの事例が多いからか、ロゴを付しつつ「結果話題にならない」点を指摘していた。

独占配信とは特定の配信プラットフォームが作品の配信権を単独で獲得し、他サービスでは原則視聴できない形態を指す。投稿には当初ディズニープラス独占だった『サマータイムレンダ』の事例が指摘されており後に多くのプラットフォームに解禁され、視聴機会の拡大と共に再び注目を集めていた。

なお、現在放送されている2025年冬アニメの独占配信の例としてNetflixの『キン肉マン 完璧超人始祖編 Season 2』『ババンババンバンバンパイア』や、ディズニープラスの『異修羅』第2期、Prime Videoの『Übel Blatt~ユーベルブラット~』などが挙げられる。

制作クオリティの向上はメリットか

一般に指摘されているところによれば、独占配信の最大の利点はプラットフォームが制作費を多く負担することで、作品のクオリティが向上しやすい点がある。この点ではしばしばNetflixやディズニープラスが取り上げられ、グローバル市場を視野に高い制作費を捻出すると言われている。

Netflix側は文化庁文化審議会が開く小委員会にで提出した資料にて「制作の待遇改善に寄与している」とプラットフォームとしての役割をアピール。こちらは独占配信に限った内容ではないものの、制作現場には良い影響をもたらしていると認識しているようだ。

また、昨年夏にNetflixで配信を開始したアニメ『君に届け 3rd SEASON』に関しては、アニメ制作を担当したProduction I.Gが同作品を100%出資していたため、親会社であるIGポートの版権事業の半期売上高は345.6%増の20億5467万円を記録。「配信に係るライセンス料金の収入が一括計上したことが大きく寄与した」と紹介していた。

やはり「盛り上がりづらい」点は大きな欠点になり得る

一方で独占配信は「触れる機会が限られる」というデメリットもある。視聴者が特定プラットフォームの利用者に偏るため、ソーシャルメディアでの話題性や認知度が低下しやすい。また、独占配信はアニメに限らず映画、ドラマにも言えることだが特にアニメになると「原作ファン」が多く存在するため、期待に応えられない盛り上がりになった際のファンの落胆は大きいようにもうかがえる。

さらに、視聴者の数、とりわけファンの数はグッズ化の売れ行きに大きく左右され、これに伴うライセンス収入も盛り上がりに比例する場合が多い。多くのアニメ作品では製作委員会が組成され、グッズ製作などを強みとするホビーメーカーやマーチャンダイザーの出資事例も多いなかで、あえて間口を狭くする戦略には疑問も生まれることが見込まれる。

こうした課題からか現状、純粋な「単独かつサブスク加入」を要件とする独占配信は多くない一方、両者のメリデメを折衷した展開として「地上波先行」「地上波同時」「単独最速」「無料単独」などの限定的に優遇する配信形態が一般化している。

ABEMAでは特に顕著であり、『没落予定の貴族だけど、暇だったから魔法を極めてみた』では第1話を地上波と同時配信し、第2話以降を1週間先行する「ハイブリッド型」を採用。U-NEXTやdアニメストアも、一部作品を先行配信した後に他プラットフォームへ解禁する戦略を取っている。

豊富な制作リソースがあるとなると視聴者やファンにとっても「これは作画崩壊しない」といった安心感がもたらされるが、独占配信に伴う「作品を紹介しづらい」点はコンテンツを長く見てもらう、果ては「2期」など長く愛されてもらうにはやや厳しい環境なのかもしれない。

著者 山本晃平