アニメ制作市場、初の3,000億円の大台突破 半数が黒字経営も“IP持たぬ下請け”との格差拡大


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帝国データバンク(TDB)が取りまとめた最新の調査レポートによると、2023年のアニメ制作市場の規模は前年比22.9%増の3390億2000万円に達し、初めて3000億円の大台を突破したことが明らかになった。この数字は過去最高を大幅に更新するものであり、業界の急速な成長を示している。

市場拡大の主な要因として、TDBは劇場版アニメの相次ぐヒットを挙げた。特に『すずめの戸締まり』の場合は興行収入140億円を超える大ヒットとなったほか、動画配信サービス向けの大型制作案件の増加も市場拡大に貢献している。

テレビアニメも引き続きでの活況を見せ、ライトノベル発では中世ヨーロッパ風世界を舞台とした作品が多いなかで珍しい「中世中華風世界」を舞台とした『薬屋のひとりごと』が人気を博したほか、マンガ・コミック発では『葬送のフリーレン』『【推しの子】』が注目を集め、グッズ市場の拡大にも貢献した。

こうした流れを受けてかアニメ制作会社の業績も好調といい、元請・グロス請企業の「黒字」割合は18年ぶりに50%を超えた。これは、版権収入や興行収入が業績を下支えした結果と分析されている。一方で、下請となる専門スタジオでは「赤字」割合が4年ぶりに40%台に達し、元請との収益格差が拡大している点が課題として浮き彫りになったという。

業界の構造変化も顕著になっている。従来のテレビ放映中心のビジネスモデルから、劇場版や配信向けコンテンツ制作へと収益源が多様化している。また、版権(IP)保有の有無が収益力の格差を生む要因となっており、IPを持つ企業とそうでない企業の二極化が進んでいる。

調査を実施した帝国データバンクによれば、「アニメ産業の収益拡大を制作現場にどう還元するかが今後の課題となる」と指摘しているほか、生成AIの台頭による著作権侵害の問題にも言及していた。

また、2024年のアニメ制作市場は、引き続き好調が予想され、3400億円前後での着地が見込まれている一方、アニメーター不足や制作コストの上昇など、業界が抱える構造的な問題の解決が今後の持続的成長のカギを握ると見られている。

【レポートのポイント】
・人気作・話題作が多く放映 1980~2000年代放映の継続作・リメイクなども活発
・アニメ制作会社の8割が「フリーランス」と取引 インボイス制度による影響を注視
・アニメ制作市場、2023年は過去最高の3000億円超 劇場版のヒットが寄与
・元請・グロス請:「黒字」割合、18年ぶりに5割超え 版権・興行収入が業績を支えた
・専門スタジオ(下請):「赤字」割合、4年ぶり4割台 元請との収益格差が拡大
・従来型のビジネスモデルに変化 主な収益源、テレビ放映→「劇場版」「配信」に 版権保有がカギ

市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。
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