地上波民放、春夏のアニメ事情と今後の展開は?日テレは配分好調で「らんま」控える、テレ朝は23時台の新枠発表


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7月より夏アニメの放送もはじまり中盤へと差し掛かるなか、春クールに相当する4月〜6月期の決算を民放各局が報告している。ここでは既出発表の在京3局を中心に、各局のアニメ事業の現況や、深夜帯アニメの情報を掻い摘んで紹介する。

日テレは『フリーレン』『薬屋』配分収入で好調、秋には「らんま」完全新作的アニメ化も

日本テレビは前クール、2023年に新設したアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT」にて初の作品バトンタッチを実施。4月から現在にかけて、大人気シリーズとなる『転生したらスライムだった件』の第3期を放送している。また、同じく毎週土曜日の24時55分枠も『薬屋のひとりごと』から『ザ・ファブル』にバトンタッチするなど、粒ぞろいだ。

7月31日に発表した第1四半期の決算ではアニメ事業の収入が前年同期比1.2%増、収支が同1.9%増の6億5,600円と狭い幅での増収増益を記録。半年間放送してきた『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』の出資配分や関連収益が計上されたという。

今後はジャンプ系人気作品から『株式会社マジルミエ』のアニメ化や、先日7月に主要キャストの続投とMAPPA制作が明かされ、ある意味「日テレ放送」がサプライズにもなった『らんま1/2』が次クールに控えている。また、前者の『マジルミエ』は資料内でも「F1層(20~34歳の女性)に大人気のコンテンツを獲得しオンエア!」とアピールしていた。

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テレ朝は新アニメ枠を今秋運用「土曜だけど始まるの遅い」解消にも期待

続いてテレビ朝日は前クール、毎週土曜日25時30分より展開中の「NUMAnimation」枠にて一迅社マンガ原作の『ささやくように恋を唄う』を放送。2度の放送延期などを挟んだことで最終2話が未だ放送できておらず消化不良も見られたものの、今クールでは『氷菓』で知られる米澤穂信氏の小説原作の『小市民シリーズ』へバトンタッチした。

テレビ朝日系列としては、在阪の朝日放送(ABCアニメーション等)のほうがアニメ領域の存在感が強いが、2日に発表した第1四半期決算内ではスライドを一枚設けて過去の放送作品の実績をアピールしていた。そして、同社は6月末に新たなアニメ枠「IMAnimation」の設立と秋クールからの運用開始を発表した。

毎週土曜日23時30分からの放送を予定しており、放送開始が遅い既存枠を補完しながら、より多くの視聴者取り込みを狙っている。秋クールからは人気作品『ブルーロック』の第2期を、翌年冬クールでは『ババンババンバンバンパイア』を放送する予定で、後者は製作委員会の幹事社を務めるなど、放送局の強みを活かした展開に期待される。

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数が多く幅も広いテレ東、業績はNARUTOやアニポケで伸長

テレ東(旧テレビ東京)は前クールにゲーム原作のアニメ化として『ブルーアーカイブ』『アイドルマスターシャイニーカラーズ』を、異世界系では第2期も決定した『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』や原作人気の高さから話題に事欠かなかった『怪獣8号』を放送した。

テレ東系列の6局ネットで全国放送しつつTBS等他局と比べると費用が抑えられることもあり、アニメファンだけでなく、製作側からの支持も厚いようだ。今クールは深夜帯に『狼と香辛料(新版)』第2クールをはじめ、農林水産省コラボなど話題の『天穂のサクナヒメ』や、群馬が舞台のオリジナル作品『菜なれ花なれ』、第2期の『SHY』、なろう系からは『新米オッサン冒険者』など、幅広いジャンルを放送する。

業績面では、1日に発表した第1四半期決算の中で、アニメ・配信事業は増収減益となった一方、内訳によればアニメ作品のライツ関連が前年同期比9.1%増を記録した。要因としては、主にの「NARUTO」「BORUTO」「ポケットモンスター」の海外配信や商品化が引き続き好調なことによるロイヤリティ収入増や、昨年末に上映された「劇場版SPY×FAMILY CODE:White」の配給収入などが貢献した。

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どちらかというと『キン肉マン』のCBCがアツいTBS、MXは『【推しの子】』放送

その他は現時点でのグループ業績が開示されていないので概略のみを紹介する。フジテレビは前クールに大人気作品『鬼滅の刃』の新作テレビアニメを放送、全8話ながらも民間調査ランキングで全週週を獲得するなど、大本命を体現した。今クールでは中国ビリビリ動画と共同運用する「b8Station」枠にて中国作品『下の階には澪がいる』を、同時間帯にはLINEマンガ原作の『先輩はおとこのこ』を展開しており、国際色も豊か。

TBS系では、前クールより旧金曜深夜の「スーパーアニメイズム」枠を木曜深夜「スーパーアニメイズムTURBO」と改名し『WIND BREAKER』を放送、今クールは少年マガジン原作の『女神のカフェテラス』第2期へとバトンタッチした。夕方帯では『夜桜さんちの大作戦』を連続2クールで放送中のほか、関連して在名局ではCBCテレビが新アニメ枠「アガルアニメ」にて『キン肉マン』32年ぶりとなる新作続編を今クールより放送開始。系列局全体でアニメ事業の強化を図っている。

最後に関東ローカルのTOKYO MXについて。年間を通じて50作品以上のアニメを毎週放送しているが、今クールは最注目作の一つ『【推しの子】』を水曜日に放送。一部からは「鬼滅みたいに放送局の変更が行われるかも」とも言われていたが、実際は各地方局を取り巻きつつ「ABEMAで単独同時配信」するなど、配信重視の展開となった。

人事に関しては、元アニメ事業局長の佐藤真紀氏が同社の新代表取締役社長に就任。その他全国ネット規模の放送局やBS11などと比べると製作出資が少なく、ヒットによる恩恵は得られにくいものの、アニメ事業に精通する同氏を主導に、アニメファンからも支持を集める独自路線との組み合わせに期待される。

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各局ともアニメ事業を重要な収益源と位置付け、新枠の設立や既存枠の強化、IP展開の推進など、様々な施策を打ち出している。今後も激化する競争の中で、各局の戦略がどのように展開されていくか、引き続き注目される。

市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。
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