外資系投資会社、映像大手の東北新社にTOBを提案 検討委員会を設置、アニメ領域にも影響与える具体案も
アニメやドラマ等の映像制作大手の東北新社は今月24日から26日にかけて、シンガポールの投資会社3D Investment Partners(3D社)から株式非公開化を目的とした公開買付け(TOB)の提案を受けたことを明らかにしている。
7月23日に受領した提案によると、3D社は特別目的会社(SPC)を通じて東北新社株式の公開買付けを行い、非公開化を行う内容が含まれていたという。以降、この提案について公開買付価格が600円~650円との旨の報道が経済誌よりなされており、26日に同社は報道内容を認めた。
東北新社は24日の取締役会で本提案を「真摯な買収提案」と初期評価し、慎重な検討を行うため、特別委員会を設置。同社は経産省の発表する「企業買収における行動指針」に沿って検討を進め、最終的な意思決定を行うとしている。
株主企業は「M&Aよるアニメ制作会社の買収」提案に盛り込む
一方、3D社は今回の提案について「流通株式比率は非常に低い(25%以下)」ことなども理由にあるとして、提案した買付額は「既存株主にも十分な利益を提供できる」ものと主張している。この動きは、3D社が2月以降、東北新社の企業価値向上策を提案してきた流れを受けたもので、事業戦略の方向性について見解の相違があったものの、提案を踏み切った形となる。
また、3D社は東北新社に対し、東北新社の企業価値向上を目指すために行うべきことをプレゼンテーション資料にて提示。ことアニメ領域においては「M&Aチーム及び外部折衝チームの設置、M&Aよるアニメ制作会社の買収、ハイクラスな人材の外部登用による実写及びアニメ制作チームの設置・強化等」をアクションプランとして盛り込んでおり、本案件が成立すればこうした行動を行う可能性も見えている。
ただ東北新社側はこれについて「アニメ制作会社のM&A等については、相当程度に厳しい業界環境にある事業会社を対象とするM&Aであることから、リスクが高く、結果としてコストが先行し、収益に対する合理性が低い資本投下となる可能性がある」と捉えているとして、その他提案とあわせて「3D社の提案内容は、投資に見合うリターンが得られない危険性を大きくはらんでいる」との見解を示している。
今回の提案について、非公開化に対しては中長期的な成長戦略を推進しやすくなる可能性がある一方、買付価格の妥当性が焦点になるとも捉えられている。映像コンテンツ業界の再編にも影響を与える可能性のある本案件の行方に、業界内外から注目が集まっている。