ガルクラ総研①:脚本・花田十輝は『ガールズバンドクライ』で何を伝えたかったのか キャラクター像と制作の舞台裏に迫る


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考察の余地ありな“ルパと智”の関係性、5人の掛け合いは「家族のイメージ」

――そこに加わってくるのが、海老塚智とルパの二人ですね。まず、智の設定から伺いたいと思います。

花田 仁菜以上に、若くして一人で生きていかなければならなくなったキャラクターですね。そして、仁菜以上に強固に殻を被って人を寄せ付けないところがあります。仁菜、桃香、すばると三人が出来た後、残り二人をどうしようかと考えていた時に、一人くらい仁菜よりとっつき難い子がいた方が仁菜の別の一面を引き出したり、化学反応が起きやすかったりするだろうと思って作りました。

――設定的にみると、仁菜とは別のところで、大人の嫌な部分に振り回されてしまったキャラクターですよね。

花田 実は、智を掘り下げるエピソードは途中まで書いてたんですが、仁菜が想像以上に尖ってしまい、カットせざるを得ませんでした(笑)

――続いて、ルパの設定についてはいかがでしょうか。

花田 智の性格や設定を考えていく中で、まず、この子に付いて いけるとしたら、どんな子だろうというところですよね。

――ある意味、すばると同じで立ち回りがうまくて、大人な対応ができるイメージがあります。

花田 自分の負っている傷みたいなものを他人と共感したいとか、他人に理解して欲しいとはあんまり思ってないんです。そもそも、自分も他人の傷を理解できるわけでもないし、したいとも思わない。傷の舐めあいをしたくないっていう思いが強いタイプで、それがある意味で、現実の厳しさを知っている大人な部分でもあるんです。

家族を亡くしているという背景はあるんですが、他のメンバーもあんまり聞いていないというか、聞けない状態。ルパの話も書こうとは思ってたんですけど、視聴者も仁菜たちと同じで、断片に知っている状態で、「この子と一緒にいてあげたい」とか、「仲良くなっていこう」という風にした方がいいなと思って、無理に描かないことにしました。

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――この子だけはハーフっていう設定だったり、苗字などがなくルパという名前だけの設定も独特ですよね。

花田 ミステリアスなキャラクター性を強調したかったという部分と、これだけ人数がいると、今時ならハーフが1人ぐらい入っているのは自然だろうなと。

――キャストの方からも、ルパについては詳しくバックグラウンドが書かれていないがゆえに、逆に演じやすかったといった話がありました。(詳しくは次回、第2回キャストインタビューで!)ただ、放送が終わったところで、改めてどういう設定があるのか知りたいというお声も伺っています。

花田 もちろん細かい設定は色々あります。 ただ、情報を完璧に描ききらなかったが故に奥行きが出た部分も間違いなくあって、手島さん(キャラクターデザインを担当した手島nari氏)の絵や、声を担当した朱李さんのお芝居で、非常に際立ったと思っています。特に第11話「世界のまん中」のサウンドチェックのシーンは、「これは絶対に良くなる!」と確信があって、放送された時にお客さんの反応が楽しみでワクワクしていました。

――智については、何度かバンドを組んだけど、うまくいかなかった描写があります。その中でも、ルパだけはずっと一緒にいたわけですが、改めて二人の関係性の部分はどうでしょう。

花田 智は自分の腹の奥底の部分は探られたくないと思っていて、そこはルパも一緒なんです。だから、「腹を割って話そう」っていう考え方を持っている人たちばかりだと、なかなかうまくいかない。でも音楽に関しては真摯 に向き合いたいって思っていて、ルパと智だけはうまく波長が合っているというイメージでしたね。

――全体的なところで、本編では描かれていない裏設定みたいなものはありますか?

花田 僕の中で5人で掛け合いをやっているときは、家族のイメージで描いてるんです。桃香がお父さんで、ルパがお母さん。長女がすばるで、長男が仁菜、次女が智ですね。だから、なんとなくお父さんと長男がいつも喧嘩しているところを、残りの女子3人が見ていて、長女のすばるが仲裁に入るっていう。

――確かに、仁菜と桃香のぶつかりあいは、男同士の喧嘩のような雰囲気もありますよね。

花田 まさに桃香と仁菜に関しては、感情がぶつかる時は、ちょっと男の子っぽくしているところはあります。調和と協調も大切だけれど、信念やプライドがなきゃ意味がないと、ぶつかり合うところを意識しましたね。

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著者 東響希
主にゲーム関連メディアにてイベントやライブなどのレポートの他、新作レビュー記事、インタビュー記事の執筆や編集なども担当。その他、様々なジャンルの書籍について、著者と打ち合わせやインタビューをして編集するブックライターとしても活動している。

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