本当に”折れる”必要はある?新型折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold5」使ってわかった6つの利点・3つの欠点【レビュー】


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サムスン電子のデジタルデバイスブランド・Galaxyより、新型折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip5」「Galaxy Z Fold5」の2製品が日本国内で9月1日にリリースした。

2019年に初登場し、以降毎年新モデルを発売していた折りたたみスマホの「Z Fold」シリーズ。この度そんな本シリーズの第5世代目として投入された「Z Fold5」を先行して体験する機会を得られた。

折りたたみスマホは高価な印象もあり、未だに身近に感じられないが故に「そもそもスマホ、折りたたむ必要あるの?」と疑問視する方も多いだろう。そこで、本稿では「使うことで得られる利点と欠点」というトピックに絞って、簡潔に本製品の魅力と使用感を探り、”改善すべき”と感じたポイントとともに紹介する。

【利点1】見た目はさほど変わらない…けど、実は超スリムに

まずは本製品の外観部分について写真とともに紹介したい。これまでZ Foldシリーズの過去機種を見たり触ったりしたことがある方は「あまり見た目は変わらないね」との印象を持ち、マイナーチェンジ程度と思われるかもしれない。実際、前モデルと比較しても殆ど変わらないのは想像の通りではあるが、実はコンパクトさという観点では見た目以上の進化を見せている。

幾ら「折りたたみ」としているものの、フレキシブルディスプレイである以上紙のように完璧に180°曲げることは不可能であることから、過去モデルではどうしてもヒンジ部が分厚くなってしまうというマイナスポイントが存在した。

Z Fold4の折りたたみ時(公式サイトより)

しかし、Z Fold5ではそのヒンジ部が大幅に改善された。写真で見れば分かるように、ピッタリと折れ曲がり、ほとんど厚さにムラのない完璧に近い折れ曲がりを実現した。(厳密に言うならば、180°完璧に曲げることは現在も不可能であり、精巧なヒンジ機構で格納している)

このほか、ペンの収納についても改善が行われているなど、実査に触ってみないと真に体感できないような細かな改善が使いやすさが多数存在しており、それらが操作性に与える影響は非常に大きいものになっていた。

【利点2】5世代目だからこそ、洗練された高い完成度

続いて実際に使ってみて感じたポイントを紹介する。Z Fold5はその名の通り、Z Foldシリーズの第5世代目という位置づけで、シリーズ初登場から4年以上の月日が経っている。そのため、特にソフトウェア面での完成度は非常に高いことが使っていて印象的だった。

製品にはAndroidをベースとしたサムスン独自OS「OneUI 5.1.1」が搭載されており、折りたたみスマホ向けに最適化されたような”改造”がいくつも伺え、その点ではGoogleのPixel Fold等の競合他社と比較しても、優位であることが想定される。

カスタマイズ性についても画面の開閉時にロック解除をスキップするアプリを選択可能といった、一定の程度は担保なされている印象だった。

 

【利点3】半折れ時に使える新機能が便利

そして、その完成度がより高いものになったのは前モデル「Z Fold4」より引き続き利用出来る、半折れ時の新たな拡張モード「フレックスモードパネル」だ。

本機能は対応したアプリを使用中に画面を一定の角度折りたたむと利用可能になり、画面下半分がコントロール画面、上半分が表示領域にレイアウトの変更が行われる。コントロール画面では動画再生時のメディアプレイヤー操作を行えるほか、まるでパソコンのトラックパッドのようにマウス操作が出来るようになる。

あわせて、テキスト入力時はコントロール画面にキーボードが配置されるようになり、使いやすさの向上に寄与していた。ちなみに、Galaxyシリーズ標準IMEでは開いた状態ではキーボードが左右に寄っているため、遠くて指が届かない…といった問題は起こらなかった。

動画視聴時、手を添える必要がないのでフライト時の機内で大活躍しました

 

【利点4】ゲームや動画視聴で授かる大画面の恩恵

折りたたみスマホを使ってみて感じたのはやはり大画面であることで、Z Fold5の開いた時のディスプレイサイズは7.6インチとなっている。これは8.3インチのiPad miniに迫る大きさになっており、特にゲームや動画視聴といったエンターテインメント分野においては、QXGA+解像度が生み出す映像の美しさとともにより迫力ある体験が叶った。

レイアウトについて、通常時はスマホと同じ表示になるが、横に持ち替えるとタブレット表示になり、対応したアプリでは画面を拡張した2カラムレイアウトになる。例えばYouTubeでは関連動画が右に表示されるほか、Gmailでは二列表示になるなど、通常のタブレットと遜色ない使い勝手が実現していた。

一部は便利になる一方、後述するが開いた時のアスペクト比は「21.6:18」とほぼ正方形となり、一般的なスマホから大きく逸脱することから、X(旧:Twitter)をはじめとした多くのアプリの最適化は不十分かのようにも感じられた。また、音楽ゲームをよくプレイする方はタブレットのような操作を求められるため、いわゆる”親指勢”にとっては少し慣れが必要かもしれない。(閉じた状態でプレイすると、ノーツが小さすぎるため何れにせよ慣れが必要)

Playストアには「折りたたみスマホ向けゲーム特集」ページも組まれていた

【利点5】分割画面モードの恩恵

そして、これらのソフトウェアの完成度をより体感できるのが画面をフル活用した分割モードだ。One UIでは最大4つのアプリを一つの画面に表示することが可能で、アプリの履歴画面や下部に固定されたタスクバーより簡単に分割モードに移行することができる。

さらに、アプリ間でテキストや画像をドラッグ・アンド・ドロップで共有したり、通常のパソコンのようにウィンドウモードで独立して起動できたりといった使い勝手も利便性の高さに繋がっていた。これはオンラインミーティングのシーンで非常に有能さを発揮しており、左にGoogle Meetを、右にPDF等の資料を…といった使い方をしたこともあった。

また、Galaxy純正カメラアプリについても折りたたみスマホに最適化されており、画面を開いた状態でリアカメラを使用すると、過去に撮影した写真を並べて表示することができる。ほかにもリアカメラをフロントカメラとして使い高解像で写真を撮れるといった、折りたたみスマホならではの魅力も伺えた。

こうした大画面ゆえの分割モードの利便性と、折れ曲がることによって生まれるコンパクトさはタブレットにもスマートフォンにもない、唯一無二の魅力であると感じた。

【利点6】電子書籍の読みやすさは一級品

さらに、大画面をフル活用できる用途の一つとして、筆者がおすすめしたいのが電子書籍リーダーとしての可能性だ。コミックシーモアやLINEマンガ、Kindle等の電子コミック配信サービスがスタンダードになり、”紙よりも電子”派も多いこの時代、スマホではやはり画面が小さいという問題がある。特に筆者は弱視を患っており、一般の方に比べてもこのデメリットの影響をより受けやすく、長らく困っていた。

 

しかし、折りたたみスマホならそのような心配は無用。7.6インチをフル活用することでページを文庫本サイズにまで広げられるため、わざわざタップして拡大せずともコマ内の文字もサクサク読むことが想像以上の魅力に感じた。

また、拡張A4サイズの雑誌では画面の隅から隅まで最大限広げて表示されるため、文字が小さい雑誌もサクサク読むことができる。

<おまけの+α>実は動画編集もイケちゃう?

最後にプラスαとして、ニッチな分野の魅力をお伝えして利点のパートを締めたい。 前述の通り、分割画面モードや新機能「フレックスモードパネル」といった魅力的な機能が多数揃ったことで、アプリ側との親和性も高まっており、その一つとして動画編集アプリのCapCutが挙げられた。

CapCutとZ Fold5の組み合わせで使用すると、動画のプレビュー部分と動画加工を行うタイムライン部分が綺麗に二分され、さながらパソコンで編集しているかのようなスタイルに。勿論圧倒的にパソコンのほうが使いやすいが、簡単な編集なら「これでもいいや」とも感じた。偶然の所業かもしれないが。

【欠点1】ブラウザの使い心地は「サイト次第」

使って感じた欠点の一つはやはり、折りたたみスマホに最適化されているアプリやウェブサイトが少ないという点。これはサムスン側が改善できる話ではないため、”欠点”と括るのはナンセンスかもしれないが、特にネットサーフィン時の使い勝手が気になった。

近年、ウェブサイトの制作技術において、ユーザーが使用するデバイスの幅(メディアクエリ)に合わせてWebページを最適に表示する「レスポンシブデザイン」を採用したサイトが増えつつ有り、これに対応したサイトであれば、特段使い勝手に困ることはなかった。


▲レスポンシブ対応サイトでの表示(左:開いた時・右:閉じた時)

しかし、未だに大手ポータルサイトでも「PCとスマホでページをサーバーで切り替える」という仕様を採っている場合が多く、画面開閉時にレイアウトが変更されなかったり、前述の「アスペクト比が一般的ではない」という特徴により無駄にどデカく表示されたりといった事象が発生していた。

これは今後のウェブサイト側の対応次第としか言いようがない。また、アプリでも「閉じた時は丁度よいが、画面を開くとデカすぎて視認性を損なう」といった同様の問題が伺えた。

スマートニュースを見るには大画面すぎる…
「ウマ娘」などを遊ぶ際は開いた時に小さくなるときも

【欠点2】重いと思う人にはネック

折りたたみスマホは単純に通常のスマホの倍の画面サイズがある以上、重量も通常のスマホと比べて重い傾向にあるが、今回のZ Fold5は253gとなっている。同様の製品では最軽量クラスかつ、前モデル比ー10gの軽量化を果たしたものの、やはりそれでも通常のスマホに慣れている方にとっては「重い」と感じるだろう。

ただ、筆者は220gを超えるかなりの重力級スマホを常用している上に、画面を開いた状態では片手操作が事実上不可能であることから、正直そこまで重さが使いたく無くなる要因にはなり得なかった。

【欠点3】側面指紋認証は好き嫌いが分かれる

こちらは折りたたみ云々とはあまり関連しない欠点として、側面指紋認証であることが挙げられる。近年のAndroidスマホは画面内指紋認証が定番となり、背面や側面で有ることが少なくなっただけあって、やはり側面だと指紋判定の曖昧さがネックだと感じた。

これは複雑な折りたたみ機構やフレキシブルディスプレイの兼ね合いもあり、そう簡単に画面内を実現することができない事だと重々承知の上、一日に何十回も使う機能なだけあって、改善点として挙げた。

以上、新発売となる折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold5」を利点と欠点という側面から紹介した。価格はキャリア割引を適用しても20万円~とかなり高価であるため、購入には躊躇されるだろうが、もし本稿をご覧になって少し興味を持った方は試しに触ってみることをおすすめする。

全国の家電量販店ではもちろん、「Galaxy Harajuku」をはじめとしたGalaxyブランドの体験型店舗でも多数本機種が用意されているので、足を運んで見るのも良いかも知れない。