アニメ・声優など業界4団体が”インボイス制度反対”訴え 「泣き寝入りの未来」も懸念


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2023年10月より施行予定の「インボイス制度」に反対する声優業界、アニメ業界、マンガ業界、演劇業界の4団体が合同で11月16日に記者会見を開催。インボイス制度に対する各業界の実情をアンケートを交えて説明し、質疑応答などとともに反対を訴えた。

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”クールジャパン戦略と逆行する”

マンガ業界からは「インボイス制度について考えるフリー編集と漫画家の会」から由高れおんさんが登壇。由高さんはまず、漫画家における収益である「原稿料」は日本経済の停滞や出版不況によりここ数十年上がっておらず、「印税」については格差のある収入形態となっていると業界の現状を説明。

以前漫画家を対象に実施したアンケートでは1275件の回答が得られ、回答者の98%が個人事業主であることがわかり、約20%の回答者が「インボイス制度導入による廃業可能性がある」回答したという。

また、漫画家特有の「アシスタント」という仕組みもインボイス制度による影響は大きいとし、「漫画家側はアシスタントに課税を迫れない・アシスタント側は先生に免税を迫れない」という互いに影響を与え合う”悪”の共依存関係は避けられないのではないかと述べていた。

アニメ業界からは「アニメ業界の未来を考える会」の植田益朗さんと大塚雅彦さんが登壇。はじめに登壇した植田さんは機動戦士ガンダムの製作以降43年にわたりアニメ業界に従事しているといい、今回のインボイス制度導入についてこれまでにない危機感を持っているという。

アンケートでは「4人に1人が廃業危機、6割が影響を懸念」「フリーランスの半数が年収300万円以下」といった、かねてから課題とされるアニメーターの低賃金問題なども浮き彫りとなり、事業所側の対応もいまだ不十分であると説明。

アニメ業界がいわゆる「ブラックの側面もある」と認識しつつ、今まさに業界全体での労働環境の改善、アニメーターの教育を行っていこうとした最中にインボイス制度の施行が舞い込んできたという。

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今や海外での日本アニメの市場規模は1兆2394億円にまで成長してカルチャービジネスの中核となりつつある。国も「クールジャパン戦略」と銘打っている一方で、業界全体に負の影響を及ぼすインボイス制度の導入は「矛盾している」と由高さんなどが強く訴えた。

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声優業界の危惧する「泣き寝入り」とは

声優業界からは「VOICTION」共同代表の岡本麻弥さんが「声優のほとんどは事務所に所属していても個人事業主であることが多く、他の業界に比べても大きい影響を与える」と予測しつつ、「泣き寝入り」が発生することも危惧していた。

こちらも同じく、実施されたアンケートをもとに説明しており、アンケートで回答した600名超えの声優の76%が年収300万円以下、96%が年収1,000万円以下の免税事業者となる。今後27%がインボイス制度の導入が影響で「廃業する可能性がある」と回答しており、他の業界に比べとりわけ多いのが現状だとしている。

アンケートの回答にて「インボイス制度の話が事務所からあった」と回答した20%の声優は『登録しないと今後の契約は約束できない』『課税業者にならないとその分値引き』といった独占禁止法違反さながらの旨の言葉をかけられたという人も。

しかし、これらの問題は公正取引委員会で対処できない可能性があると岡本さんは追って説明。実際に上記のように直接言われることなく、『ご縁がなかった』『また頑張ってね』といった体で言われることが多く、違反を立証する証拠を必要とする公取委の事後対応では解決できず、「泣き寝入り状態」になるのではと懸念している。

そんな中、会見前日の11月15日、日本俳優連合(日俳連)が「インボイス制度の施行ストップを要望します」という声明を発表し、ほんの少し希望が見えたのだと岡本さんは述べていた。

本会見などで積極的に発信をしている一部のクリエーターには「年収1000万円以下に当たる免税事業者は“益税”をネコババせずに納税せよ」といった誤解が蔓延っているのも問題であると1990年の東京地裁の判決を例に上げ述べていた。

議連発足にマスコミも注目

1時間に渡る記者会見のあと、衆議院第二議員会館にて「インボイス問題検討・超党派議員連盟」による設立総会が開催され、野党国会議員を中心とした呼びかけ人の挨拶及びヒアリングがが行われた。ヒアリングでは先程の記者会見にも参加した声優の甲斐田裕子さんが業界の現状を臨席する議員や国税庁・財務省の担当者へ直接訴え、質疑応答を行った。

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また、ここ数ヶ月でインボイス制度への注目度が上がったと同じくヒアリングに出席したフリージャーナリストの犬飼淳さんはTwitterにて言及しており、8月に開かれていた同様の場では4~5名ほどしかメディア関係者はいなかったという。

昨日行われた記者会見にはウェブメディア以外にもTV局や新聞社といった”大手マスコミ”が複数見られ、テレビ東京などではニュース映像としての配信も行われていた。犬飼さんはこの変化に「注目度が急上昇したことは間違いない」と述べており、議連の発足は今後の「インボイス制度反対」に対する世論形成などにもつながることが期待される。

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市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。
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