インボイス制度で声優の2割が廃業を検討…声優の収入実態調査で明らかに


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声優有志グループのVOICTIONが、インボイス制度に対する反対運動の一環として声優業界の実態を把握すべく260人の声優を対象に実施した「声優の収入実態調査」がSNSなどでも多くの反響を呼んでいる。

声優の7割以上が年収300万

今現在日本で「声優」と呼ばれる人は1万人以上存在していると言われている。今回の「声優の収入実施調査」アンケートによると72%が「声優としての年収が300万円以下である」と回答した。内訳によると20歳代・30歳代といった若年層において年収が低い傾向にあり、さらには約半数が100万円以下だという。

VOICTIONは本調査に関し、「Twitter及びVOICTION公式サイトでの呼びかけのもと回答者を募っていたため、比較的年齢層の低い声優が回答したと考えられる」と述べている。これらの調査結果が業界全体の数値を表すものではないため参考程度に捉えておくべきではあるが 、それでも全体の90%以上が現在消費税の納税を免除されている免税事業者に該当すると言える。

一方で年収1000万円を超える人は5%という数値が出ており、国税庁の調査による日本全国での年収1000万円を超える人の割合とほぼ同じ結果になった。

インボイス制度で2割が廃業可能性

また、インボイス制度についての設問の結果も公開。「2023年10月にインボイス制度が導入された場合、ご自身の声優としての仕事は増減すると思いますか?」という問いに対し、23%が「廃業するかもしれない」と回答しており、声優の5人に1人が影響を受けて業界を去る可能性がある。

そのほかにも、76%の回答者が「収入が減るのでは」と考えていることがわかった。さらに、「廃業するかもしれない」と答えた人たちの年収の内訳も公表しており、母集団の58%が年収100万円以下である一方、6%は年収400万円以上あるという結果が出ている。必ずしも低収入者や若年層だけが精度に対する危機感を持っているわけではないと考えられる。

97%が制度に反対

声優以外にも漫画家・イラストレーター・アニメーターや文筆業、建設業など多様な業界の個人事業主からの回答により、97%がインボイス制度に対して「反対」であると回答したと公表。

さらには「所属している事務所や取引先などから制度についての何らかの説明があったか」という問いに対して78%が「まだ話はない」と回答。個人事業主と商取引のある企業側への周知が足りていない実情が浮き彫りに。一方で「話があった」と回答した22%の中には「登録してもらえないと今後の契約は約束できないと言われた」なども。

以上、SNS などでも話題になっていた「声優の収入実態調査」を簡単に解説した。調査を行ったVOICTIONでは政党議員に対し陳情などの活動を行い続け、制度の概要や問題点について啓蒙する活動を続けていくと説明している。

今回取り上げたアンケート調査は現在も受付中。対象となる方は是非今後の制度是正に向け意見を出てみることをお勧めする。

調査名称:声優の収入実態調査/インボイスに関するアンケート
【収入実態調査】https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeIrdeMVqWLPrOtFWJLIabF90GTbSqxDZ3SlDUmEg5dsfU7Yw/viewform
【インボイスに関するアンケート】https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfLx80RjCidGngSGiT_m4Q1To3ODJ9nsL15t-5lTbK-S8FM0Q/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0
調査対象:声優として仕事をしている者/個人事業主
調査機関:自団体調査
調査方法:Webアンケート(Twitter及び公式サイトで告知)
調査期間:2022年9月13日〜(継続中)

今月9月にも度々話題となっていたインボイス制度、実名公表という部分に焦点が当たりがちだが、より大事な本質的な部分の社会全体への周知が今後の課題となりうるだろう。

市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。