【解説】自由度が格別な元祖ハクスラ!古典的RPG『ウィザードリィ』はなぜ今も面白いのか


【解説】自由度が格別な元祖ハクスラ!古典的RPG『ウィザードリィ』はなぜ今も面白いのか
ウィザードリィの超有名なタイトルロゴ(公式ポータルサイトより)

10年以上は前になるか…ゲーム好きの友人から「ハクスラ」というワードを初めて聞かされた。ハック&スラッシュの略で戦闘を繰り返して経験値や装備を集めて、徐々に強くなる目的を有したゲームを指すのだ、とも教えられた。

筆者は子供の頃からそういうゲームばかりで遊んできた。意識していなかっただけで、ずっとハクスラをやっていた。個人的にはそれもRPGとして一括りにしていたし、多分皆そうだろう。

誰もある時期まではハクスラというワードを使ってはいなかったはずだが、いつしかこれはよく使われるゲーム用語となっている。直近では2023年に『ディアブロⅣ』が発売となった折にかなりハクスラというワードを耳にした記憶があるが、まさにあれはハクスラの代名詞のような存在だ。

しかしもっと踏み込んで考えると、そもそものハクスラの元祖、本流の源泉となると、やはりそれは『ウィザードリィ』であるはずだ。

9月15日は『ウィザードリィ』の日だった!灰と隣り合わせの人気ゲーム

今更説明も野暮だが『ウィザードリィ』とは1981年にリリースされたPC用ダンジョン探索型RPGであり、アメリカのサーテック社が販売を担っていたが、実質的な開発者はロバート・ウッドヘッド氏とアンドリュー・グリーンバーグ氏の2名である。

このうちアンドリュー氏は既に故人だが、ロバート氏は日本に移住し、現在も日本国内で事業に専念している。大学の同期であったこの2人が苦心の末に完成させたのが『ウィザードリィ』の最初のシナリオ。すなわち「狂王の試練場」であった。

発売直後から高い人気を博し、のちにサーテック社の協力でまとまった数が生産されるようになると、一気に当時のパソコンファンに認知されるようになる。

そしてシナリオも一新した続編も登場していくわけだが、当然日本でも話題となるとゲームクリエイターにも衝撃を与えることとなり、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』の開発にも影響を及ぼした、とも。

要は『ウィザードリィ』の存在によって、ゲーム開発欲を刺激されたクリエイターが世界中に林立することとなったのである。
もちろん、その『ウィザードリィ』の開発の引き金としては、テーブルトークRPGの『ダンジョン&ドラゴンズ』の存在も大きかった。

素晴らしいコンテンツは後進にも刺激を与え、その影響は連鎖するというわけだ。日本では1985年にアスキーが主導してローカライズ版をリリースしており、そこから国内のゲームファンを熱狂させることとなる。

さて。日本記念日協会は、さる9月15日を「ウィザードリィの日」と制定している。
詳しい日にちは不明ながら、1981年に第1作が発売され、店頭に並んだとされる時期が9月中旬だったようで、そこからこの記念日が誕生したというわけだそう。

舞台設定はある。途中のドラマは全部プレイヤーに委ねる。この自由度は格別だ!

『ウィザードリィ』といえば、用意された街とダンジョンを行き来して、徐々にパーティを強くするRPGである。世界観の設定に関しては実はかなり詳細に設定されているようだが、プレイヤーが普通に遊ぶ分にはそこまで強く意識することはない。

目的はあくまで、複数の種族を編成してパーティを組み、ダンジョンの最奥を目指すというところにある。

ストーリーをクリアするため、レアアイテムを収集するため、想像力でパーティメンバーの苦難を脳内に映像出力して楽しむため、といった具合にプレイヤーによって遊び方は大きくことなる。

つまり、遊ぶための舞台は用意されているが、そこから先のドラマ作りの一切は自分が任されているというのがこのゲームの本質だ。謎解きに直面した際にはほとんどろくなヒントもないため、本気で頭を悩ませることが多々ある。トラップも多いので一発でパーティが壊滅することも…。敵も理不尽に強いものが突然現れることがあるから気が抜けない。

しかしそこには、無限の自由度がある。筆者はウィザードリィの、特に最初の3作目までの洗礼を受けて衝撃を味わった世代だ。

はじめて触れたのが、初代プレイステーション対応ソフトとしてこの3作がひとまとめになった『ウィザードリィ リルガミンサーガ』。あまりに面白いので、たしか当時は中学2年ぐらいだったと思うが、この頃リリースされていた『ファイナルファンタジーⅧ』そっちのけで没頭していた。

2000年にはアスキーが『ウィザードリィ 〜DIMGUIL〜』という外伝を発売され、雰囲気が中南米ライクになっていて初見では面食らったが、相当熱中してしまった。

とにかく謎解きで正解を導き出すのが困難で、当時は攻略本も持ってなかったのでノーヒント。それだけに謎を解くことができた際の脳汁の分泌量は凄まじかった。

本編クリア後に解禁となる隠しダンジョンでは戦闘BGMも一新。その上敵が異常に巨大な一枚絵で登場するのも迫力満点だった。

以降も『ウィザードリィ』を強く意識した『BUSIN』や『エルミナージュ』などの派生も含め色々と遊んでいるが、現在は『Wizardry Variants Daphne』。という便利スマホアプリも存在している。このアプリ自体は2024年の10月にリリースされたもので、もうそろそろ1周年となる。

アプリだからと言って難易度が低いということもなく、普通にキャラも2回蘇生に失敗すれば問答無用でロストする。

そうそうロストはしない仕様になっているが、敵の強さ、ダンジョンの手強さはたかがスマホアプリと侮れないほどに歯ごたえがあるため、往年のファンにこそオススメだ。

ただ、パーティキャラの一からのクリエイトが存在せず、ソシャゲライクに“用意された名ありキャラ”を任意で加入させる形になるのは人によっては抵抗が大きいかもしれない。それぞれのキャラには確固たる個性が最初から味付けされているため「もうちょっと無個性でいてほしい」と思う局面もあるが、これも数ある亜流。外伝の一つとして受け止めることができれば、大いに楽しめるはずだ。

ダンジョンの最奥を目指し、まだ見ぬレアアイテムを掘る。これが廃れることはないのでは…

とにかく『ウィザードリィ』というのは、プレイヤーごとにパーティの傾向も変わるし、種族も職業も異なる。

主目的はゲームシナリオそのもののクリアだが、人にとってはそれよりも、レアアイテム堀りが主体になっているし、そうせざるを得ないほど、レアアイテム収集も楽しい。
職業だって後半になって余裕が生まれれば上級職を解禁して、より探索の自由度を高めることもできる。

逆に基本職だけで縛りプレイをする楽しみもあるし、本当に人それぞれに遊びの個性が出るのが『ウィザードリィ』だ。

現状の最新作はスマホアプリ版だが、こちらもしっかりとハクスラ系のダンジョン探索型RPGになっている。

戦闘オート機能も搭載されているが、普通に攻略している状況でオートで任せっきりにしたらすぐに全滅するだろう。

そもそもアプリ版は主人公が死んだらその時点でゲームオーバーになるため、下手をするとこれまでの据え置き版よりも難易度が高いとも言える。

味方になる冒険者が既にこちらが諸々設定を練って楽しむ余地がないほど最初からキャラ付けされている点だけはちょっと面食らうが、それを差し引いてもこれがなかなか面白い。ゲーマーなら誰しもがハクスラを好むはず……とまでは言わないが、『ウィザードリィ』の面白さは今後も不変なのは間違いない。

みんな、どんどん『ウィザードリィ』で遊ぼうではないか!

Yoshioka

著者 Yoshioka
オタク総研媒体統括 兼 株式会社オタクリエイト代表取締役。アニメ、テクノロジー(ガジェット)、コンテンツビジネス、システム開発などを取り扱っています。PRプランニングやIP調達、制作事業の統括も兼任。好きなものは新作アニメ、海外スマホ、東南アジア。