グッズのランダム商法、消費者の本音は?ホロライブの“全66種類”騒動で改めて是非問われる

国内大手VTuberグループ「ホロライブプロダクション」による夏の大型企画をテーマにした物販イベント「ホロナツパラダイス POP UP SHOP(8月1日~)」をめぐり、グッズの販売形式が大きな議論を呼んだ。
同イベントでは新規イラストを用いた新商品が多数販売される予定だが、そのうち「浮き輪キーホルダー(税込1,540円)」「アクリルコースター(税込1,320円)」「アクリルチャーム(税込660円)」の3商品が「所属タレント66名ランダム」という形式だったことがソーシャルメディアで広く拡散され話題に。
66種類という膨大な数と1点あたりの価格の高さから、ほしいタレントのグッズを手に入る確率が極めて低いとして、プロダクションのファンからも批判が殺到した。
騒動はファンだけでなく、所属タレントにも波及。戌神ころねさんは自身のXサブアカウントで、「66種のランダムてなんやねん…なんやねん…」「笑顔で買ってね!とは言えない」と率直な意見を投稿する事態となった。
66種のランダムてなんやねん…なんやねん…😭
— ころねの裏垢 (@k5r6n3) July 16, 2025
一連の件を受け、SHIBUYA TSUTAYA IP書店は同日、公式Xで謝罪文を掲載。「多くのお客様よりご意見・ご指摘を頂戴いたしました」とし、66種類全てをランダム販売する形式から商品を12~14種類ずつの5グループに分割する方式に変更すると発表した。
「ホロナツパラダイス」POP UP SHOPに関するご案内とお詫び
8月1日(金)より開催予定の「ホロナツパラダイス POP UP SHOP」に関しまして、一部商品の「66種類ランダム」という販売形式について、多くのお客様よりご意見・ご指摘を頂戴いたしました。…
— SHIBUYA TSUTAYA IP書店 (@shibuya_t_comic) July 17, 2025
この方針について「ファンやタレントの意見を反映してすぐに対応した」点を評価する声がある反面、変更後の形式でも当該商品はランダム要素が残ることから、「根本的な解決になっていない」との意見もある。
VTuberに限らず、アニメやアイドルといったエンタメ業界のグッズ販売ではこうした「ランダム販売(トレーディング仕様)」は主流の販売方式となっており、缶ッジやアクリルスタンド、カード類などの小物グッズで多く採用されている。
今回の問題では「66種類」という明らに法外な設定が批判を浴びる原因となっていたが、これを機に改めてランダム販売への消費者の本音として、否定的な意見も多数伺えた。
この傾向は今年3月にEC物流代行サービス「ウルロジ」が公表した「推し活」におけるグッズの購買行動の調査結果からも示されている。
販売側にはメリットも…「買っている」と「買いたい」には差
「買ってみたい・買いたいと思うグッズの販売形式」について、「通常販売」が73.2%で最多、「受注生産」(51.0%)、「数量限定生産」(34.6%)が続き、「ランダム販売」は31.6%にとどまった。一方、「実際に買っている」販売形式ではランダム販売が45.4%と、「買いたい」意向(31.6%)に比べて13.8ポイント高い結果に。
この差は、ファンがランダム販売に対して消極的な意向を持ちつつも、欲しいグッズを手に入れるためには購入せざるを得ない実態があると推察されている。
販売者側に立ってみると、ランダム販売は非・受注生産が求められる状況において在庫を抱えるリスクを大きく低減させるメリットがあるほか、一部では全種類がそろった「コンプリートBOX」を用意することで利益を確保する動きもある。
しかし、消費者側には「欲しいものが手に入らない可能性」や追加出費のリスクが伴う。販売方式がゆえに、ファン同士での「譲・求」交流が盛んなコンテンツも存在するが、ランダム販売が全てのファンに受け入れられているわけではないと指摘されている。
レポートの講評では「グッズ販売においては、ファンの確実な入手ニーズに応える通常販売や受注生産を重視し、限定販売で特別感を演出しつつ、ランダム販売は一部の企画として取り入れるバランスが有効」と提言されていた。