【解説】つい集めたくなる!精巧すぎる生き物たちの食玩、カプセルトイの歴史 写真で振り返り

本物そっくりの精巧な【生き物フィギュア】はクオリティに相応して高額になりがち。時には「もうその生き物を買ったほうが安いのでは」みたいに思うこともあるが、生き物を育てるには責任が生じるうえ、手間とお金もかかる。トータルで考えればフィギュアを買って手元に置く方が安上がりとなる。
なぜいきなりこんな話をするのかと言えば、今日、私たちの身の回りには、本物そっくりな生き物のフィギュアが食玩やカプセルトイなどで気軽に入手できる環境にあること。これについて紹介したいためだ。
昨今、主に昆虫やトカゲなどをモチーフにした精密造形フィギュアは人気で、特にカプセルトイでは結構な数のメーカーが精力的にリリースしている。
その出来は昔のようなチープなものではなくなり、ちゃんと著名な原型師が担当していたり、実際の標本のデータから立体を完成させるケースもある。今回は、こういったアイテムが食玩やカプセルトイとして人気になっていった経緯について、筆者の手持ちのコレクションの紹介も踏まえて振り返ってみたい。
昔から、生き物のフィギュアは子供から人気だった!
筆者は1984年生まれ、今年で41歳。子供の頃から玩具が好きで、特に小学生の頃は食玩に目がなかった。
小学1年生か2年生の頃。近所のデパートのお菓子売り場で衝撃的な出会いを果たすことになる。メーカー名も商品名も忘れてしまったが、アメリカザリガニ、アカテガニ、ヤドカリなどの組み立てモデルがおまけになった食玩に遭遇したのだ。
これらは出来が良く、塗装こそなされていなかったが本物に近い造形だったため、かなり気に入ってしまった。そしてこの出会い以降、生き物系の食玩やカプセルトイにも興味が向くことになる。
特に記憶に残っているのがカプセルトイの『こむしちゃんのかんづめ』。1990年にタカラトミーアーツが発売したカプセルトイで、缶詰の中にアリやクモなどのミニモデルが複数詰まっているというもの。
缶詰の造形は今見直すとチープだし、虫の造形も可愛いんだけど、当時はこの商品にかなりときめいてしまった!母親には「何よこれ、気持ちの悪い」と嫌味を言われたが、とにかくこの玩具はお気に入りになった。
実際、同級生の間でもヒットしており、恐らく普遍的に男児には需要があるアイテムではなかろうか。その証拠に『こむしちゃんのかんづめ』は今もシリーズが継続している。
また、本商品は発売から数年を経てアップグレードされており、こむし入りの缶詰だけでなく、大虫と呼ばれる昆虫モデルも封入されるようになっている。

価格は昔も今も100円。いつだって子供の味方だ。
海洋堂が仕掛けた『チョコエッグ』ブームが生き物系フィギュアの需要を決定づけた!
1999年。これまでチープトイと呼ばれがちだった食玩界に革命が生じる。そう。『チョコエッグ動物シリーズ』の登場だ。
フルタ製菓株式会社が発売したこの商品、卵型のチョコ菓子の中に小さな動物フィギュアが入っているという仕組みも面白いが、肝心なのはそのフィギュアの出来の良さ。
模型販売会社の海洋堂で主に動物や恐竜モデルの原型を担当していた松村しのぶ氏が造形を手掛けており、当時人件費も安かった中国工場で精緻な塗装も施されていた。
非常に小さなサイズの動物たちが封入されたチョコエッグは、当時1つ150円で、これが大ヒットすることでシリーズ化された。中学生になっていた筆者はなかなか買い揃えることはできなかったものの、さいわい高校生になりバイトが解禁された頃にもシリーズは存続している。
さらにこのシリーズ。やがては日本だけでなく、世界中の生き物やペットなども登場し、かなりバリエーションも豊かになっていた。特に猫は人気もあったのか、色んな品種がラインナップされていた。
本物と比較しても良く出来ている。
高額だけど、高品質。バンダイのいきもの大図鑑
時代は下っていき、中国での安価でクオリティの高い大量生産品の供給がなかなか難しくなったのがこの10年ほどの流れである。かつてのチョコエッグのおまけみたいなものは、もう当時の価格では発売されることはなくなった。
しかし価格帯を上げることで、当時と同じ水準かそれ以上の商品を作ることはできるようで、バンダイが凄いものを販売するようになっている。それが高価格帯ガシャポンの『いきもの大図鑑』シリーズだ。
従来、ガシャポンは1回100円、あるいは200円が通例だったが、時代の流れによって価格も上昇。併せて商品の品質を高い水準で保つために、より高額商品がカプセルトイとして誕生することとなる。

1回500~1,500円という、思わず後ずさってしまうような価格帯だが、そのぶんクオリティは非常に高い。関節は実物そっくりに可動し、ハチなど翅のある昆虫を立体にする場合、その翅はクリアー素材で再現されており「これならこの価格でもしょうがない」と納得してしまう出来なのである。
そもそも造形は実物の標本を3Dスキャンしているのも大きな魅力で、筆者の手元には複数アイテムがあるが、いずれも業界最高峰水準のアイテムだと感じる。
また、『いきもの大図鑑』はサイズを抑え、塗装クオリティは高く維持した『いきもの大図鑑ミニコレクション』という派生も。こちらも出来が良く、甲殻類シリーズは思わずコンプしてしまった。『ミニコレクション』の価格は500円。
根強い人気のザリガニだけをラインナップするメーカーも!
ターリンというメーカーが、これまでに『ザリガニ』というシンプル過ぎる商品名で、文字通りザリガニだけを封入したカプセルトイをリリースしたことがある。筆者のような生き物系フィギュアオタクってアメリカザリガニが大好きなはず。ならばアメリカザリガニしかラインナップされていない商品を見つけたら、それはまあ、飛びつくしかない。

こちらの価格は400円だがサイズも実際のザリガニぐらいあり、パーツも可動する上、尻尾を畳むことも可能。
自切後に復活した状態を再現する小さなハサミも付属するなど、生態を参考にしたボーナスパーツも嬉しいし、同一造形で色味だけが異なる商品ラインナップは財布にも優しい!
バンダイに並ぶサイズと造形!1/1サイズのクワガタムシ
最後にもう一つ紹介したい。
スタジオソータというメーカーが年に一度のペースでリリースしているカプセルトイ、1/1昆虫シリーズ。
昨年2024年に発売されていたのが『1/1オオヒラタクワガタ』で、世界各地のオオヒラタクワガタが4種ラインナップされていた。
サイズが実物と同寸かつ造形も精密。価格は500円と、クオリティと比較しても安い印象を受けるナイスな生き物フィギュアである。こちらもターリンの『ザリガニ』と同じく、どれが出ても概ね自分が欲しかったものが手に入るという満足感があり好印象。
ただし組み立てがなかなか難しく、このため同梱されたミニブックを参考にすることが必須。もっともそのミニブックがサイズも大きく、生態についての簡単な説明などの読み物も豊富で、本体共々保管している。
生き物たちのフィギュアは、餌いらずで不老不死!ゲットしてみては?
ということで、今回は90年代から今に至るまでの食玩・カプセルトイの昆虫フィギュアについて紹介した。2000年代初頭には食玩バブルもはじけてクオリティが一時低下したものの、価格を高めることでその完成度は現在も維持されている。
今現在はいつカプセルトイのベンダーを覗いても、大抵は生き物系の商品を発見できる。夏になると通例で昆虫系の食玩がお菓子売り場にも並ぶものだ。
上記のようなアイテムが気になる方は、ぜひ近所のスーパーやデパートを血眼になって探し回っていただきたい!(文/松本ミゾレ)