『ガメラ』新作がNHKで放送開始!でも納得できない“バルゴンがハブられた”展開とは【考察】


『ガメラ』新作がNHKで放送開始!でも納得できない“バルゴンがハブられた”展開とは【考察】

NHK総合にて4月5日(土)より『GAMERA -Rebirth-』の放送が始まった。本作は元々2023年にNetflixで配信されたアニメ作品として、歴代昭和ガメラ怪獣がリファインされた姿で続々登場する。往年のガメラファンを歓喜させたが、ただ一つ解せない点があった。(※以下、Netflix配信版におけるエピソードに関する内容が含まれます。)

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大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン

それはギャオスやジャイガー、ジグラなど、昭和ガメラ怪獣が復活する作品でありながら、史上初めてガメラと戦ったバルゴンという怪獣だけが登場しなかったという点。

バルゴンは1966年に公開された『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』に登場する、恐怖の冷凍怪獣。四足歩行をするワニのような姿をして、伸びる舌や長い鼻先の角、爛々と光る目玉が特徴的。まだ怪獣自体の数がそんなに多くなかった66年当時にあって、かなり個性的でカッコいい怪獣だったとも言える。

その名の通り冷凍液を放射することが可能で、火炎を吐くガメラとは対になっている。そして最大の特徴は背部から放つ虹色殺人光線。カラー映画の強みを色彩で存分に表現する能力で、非常に銀幕映えのする特技でもあった。

2023年当時でも虹色の光線はさぞネトフリ映えするに違いない…そう思って筆者も楽しみにしていたが、結局最後までバルゴンが登場することはなかった。

ではなぜバルゴンは『GAMERA -Rebirth-』本編に登場できなかったのか。いたずらに嘆くだけではやりきれなくなるばかりなので、今回はその理由について、ポジティブかつ真面目に考察していきたい。

ジャイガーと被ってるから?

ガメラシリーズには、四足歩行の怪獣が複数登場してきた。バルゴンがその元祖であるが、そもそも主役のガメラも四足歩行で移動する場面は多い。ギロンやジャイガーなどがそうだろう。

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ジャイガー

このうちジャイガーは、シルエットや色合いがバルゴンに似ており、怪獣にあまり詳しくない人が混同するということがよくある。

ガメラシリーズは20年以上前からパチスロ遊技機の題材にもなっているコンテンツだが、パチスロファンからは「ジャイガーとバルゴンの区別がつかない」という声を聞いたこともある。筆者のような怪獣オタクなら両者の違いは歴然なのだが、どうも世間一般的にはそうではないらしい…。

もしかすると、バルゴンがオミットされたのは、あまり怪獣に明るくない人を混乱させないための「優しい配慮」だったのかもしれない。

本編開始以前にちゃんと存在していた説

続いてバルゴンが登場しなかった理由として、劇中にこそ出現しなかったものの、ちゃんと存在はしていたという説を提唱したい。

本作は舞台を転々としながらガメラが大怪獣たちと流血必至の激闘を繰り広げる。
しかし主役であるガメラを常にカメラが追っているわけでもないため、映らない場所でちゃんとバルゴンは出現し、ガメラに退治されたのだ……と思い込むことで、無理やり納得させることはできる。

もっともこの『GAMERA -Rebirth-』に登場する怪獣たちは、全頭が先行文明の技術で生み出した人口調節用の生物兵器(ガメラは除く)という設定を持つという。本編開始時点よりもかなり前の物語を描く漫画『GAMERA -Rebirth- コードテルソス』では、彼らの出自についてももう一段踏み込んだ解説がなされている。

あるいはバルゴンは、アニメ本編の時間軸よりもかなり前の時点で、“生産ライン”ごとガメラに討滅されていたのではないだろうか。

さすがに水が弱点では描きにくかった?

見た目はオーソドックスな四足怪獣バルゴンだが、冷凍液や虹色殺人光線を発射する性質から分かるように彼はれっきとした大怪獣である。だからなおのことリファインされた姿を『GAMERA -Rebirth-』で拝めなかったのは残念なのだが、これも冷静に考えると仕方がないのかもしれない。

往年のファンがご存じのとおり、バルゴンの弱点は、なんと淡水。海水にはある程度耐性があるものの、それでも体組織には若干ダメージがあるようで、まして淡水は彼にとっては致命的。本来、生物なら絶対に不可欠な淡水こそ、バルゴンの体を崩壊させてしまう劇薬なのだ。

さすがにこの特徴的すぎる特徴設定を捨てることは難しいはず。これこそがバルゴン最大のアイデンティティみたいなものなので。

そうなるとバルゴンの立ち回りにも注意しなければならない。
ガメラは水中も空中も地底も地上も自在に移動する怪獣。そのため多彩な怪獣とさまざまなフィールドで戦っている。

本作でも水辺ではギロン、水中ではジグラと戦うこととなり、終盤に登場するとんでもない突然変異を来たした怪獣とも海岸で接敵する。

そもそも日本は島国ということもあるが、水場での戦いが当たり前に描かれる作品でもあるため、言わば初見でのみ驚きを与えられるギミック(弱点)を持つバルゴンは、出演が難しい側面もあったのでは?

続編で大暴れさせるために温存しているからでは!?

そしてバルゴンの復活が見送られた理由について最後の可能性として提示したいのが“続編に出すため”説。『GAMERA -Rebirth-』、筆者は配信直後に寝食を忘れて全話完走したが、一つの作品としてもかなりまとまりのある傑作になっている。

だが、最後まで観た方なら「この先が知りたい」と思える展開が用意されている。…これはもしかして、これって続編も作れるのではないか? そう感じられるオチになっているのだ。

続編が仮に作られるとなった場合、登場する敵怪獣はイリスやガラシャープなんかが候補に挙がりそうだが、ここで満を持して登場させるべきは、やっぱりバルゴンではなかろうか。初めてガメラと戦い、初めてガメラを絶体絶命の危機に追い込んだ存在なのだから。

などと、今回はやや不遇に感じられるここ数年のバルゴンについてかなり肩入れした考察を行った。しかし、やっぱりウルトラマンが最初に戦ったベムラーや、仮面ライダーと初めて戦った蜘蛛男が折に触れてリファインされているように、いつかバルゴンも…と期待してしまうのは、オタクの嵯峨だ。

(……え? 「過去にバルゴンがメインの敵を張った外伝漫画作品『大怪獣激闘ガメラ対バルゴン-COMIC VERSION-』があるから、それで満足しろ」だって?アレも良かったんですけれども…そ、それで満足できないのが怪獣オタクでして……。)

©2023 KADOKAWA/ GAMERA Rebirth Production committee

著者 松本ミゾレ