最強の兵器じゃない!SF映画で未知の存在に“核”が通用しない理由は 「ゴジラ」ではどう描かれた

最近、宇宙が騒がしい!
少し前には地球に衝突する可能性のある小惑星の存在が全世界に向けて報じられたばかり。この小惑星は2032年12月22日に、地球に2.2%の確率で衝突するという試算もあったが、現在ではNASAがその確率が著しく下がって0%台になったと発表している。
さらに3月も下旬に差し掛かった17日には、北斗七星方向から正体不明の電波が届いていたことが広く報じられた。オランダ電波天文学研究所など複数の研究チームは、質量が極めて小さい赤色矮星(わいせい)と、白色矮星からおよそ2時間周期で電波が地球に向けて発信されていたと発表していた。
なんだか宇宙に壮大なロマンを感じるニュースだが、ことSFの世界では、この類は電波の発信源が地球外生命体だった…というようなパターンも少なくない。そしてしばしばそういった地球外生命体が地球に侵略を仕掛ける展開を見せる作品もまた、いくつか思い当たるところだ。
この手の作品で描かれる人類側の最大規模の抵抗こそ、核攻撃である。
核は抑止力にして最強の兵器。核保有国は世界に覇を唱える力を有するが…
言うまでもなく、核というのは絶大な殺傷能力を有するため、保有しているだけでも周辺国にとっては脅威となる。
ご存じの通り、日本は世界でも唯一の被爆国。第二次世界大戦中に広島と長崎に投下された2つの原子爆弾によって、のべ21万人以上が犠牲となった。また、戦後も放射線が引き起こした後遺症に苦しむ人々を多く出した。
現在の世界情勢も、核保有国がそうでない国に対して圧力をかけたり、時には侵攻を行ったりと、核という兵器が抑止力としてではなく、強大な軍事的背景として機能している現実がある。
ところが、侵略モノSF作品における核による武力行使は、大抵相手方に通用しないのがお定まりとなっている。
侵略モノSFと言えば、大抵は遠い外宇宙から地球を征服するためにやってくる宇宙人たちと、それに抵抗する地球人との対立軸が主となる。そして銀河系を移動して大船団で攻め入って来る宇宙からの侵略者というのは、ほとんどのケースで人類を遥かに凌駕する軍事力と科学力を有している。
核保有国だからこそ描くことができる、最強の兵器が通用しないという絶望…
そういった相手であるため、人類にとっては諸刃の剣とも言える核が武力行使の選択肢に上がることも多いが、アメリカ合衆国で制作される映画ではこれが全く通用しないというのがお定まり。
1996年公開の『インデペンデンス・デイ』は屈指の知名度を誇る侵略モノSF映画である。
独立記念日を間近に控えたアメリカをはじめ各国の主要都市に、直系20km以上もの宇宙船が到来。宇宙船は次々に都市を破壊し、異星人からの侵略が開始されるというのが主なストーリー。
劇中では中盤、既に異星人の攻撃で廃墟と化したヒューストンにおいて核攻撃が決断される。
ところがこの攻撃も、宇宙船全体を覆うバリアによって無力化されてしまい、物語はこのバリアをどう攻略するかという部分に主軸を移すこととなった。
その『インデペンデンス・デイ』にも大きな影響をあたえたのが、SFの巨人と称され、世界中にファンを有するH.G.ウェルズ原作の『宇宙戦争』という小説。日本語にも訳されているため、読んだことがあるSFファンも多いはず。『宇宙戦争』はこれまでにも1953年、2005年の二度に渡って小説版を基にした実写作品として公開されている。
このうち1953年版は、異星人の侵略兵器の前にかなり尺を割いて核攻撃を行うフェーズが描かれている。
現在の目で見ると「登場人物が爆風もろ被りしてるし、被ばくするのでは」と心配するような描写ではあるが、この攻撃が異星人に通用することはなく、相当な絶望感を観客にもたらすこととなる。
そうして「核は宇宙からの侵略者には通用しない」これがいつしか侵略モノSF映画のお決まりパターンとなってしまった。『インデペンデンス・デイ』と同じ年に公開された『マーズ・アタック!』では火星人が地球に攻めてくるが、この映画でもやはり核攻撃は全く効果をあげることはなかった。