最強の兵器じゃない!SF映画で未知の存在に“核”が通用しない理由は 「ゴジラ」ではどう描かれた


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ではどうやって人類は侵略者に打ち勝ったのかと言えば、『宇宙戦争』では異星人が地球の細菌に耐性がなかったことで自滅。『インデペンデンス・デイ』ではコンピュータ・ウイルスを敵の母船に感染させ、地球侵攻部隊のバリアを解除。そこから各国の残存航空戦力が一斉に宇宙船へのミサイル攻撃を行う流れに。

『マーズ・アタック!』ではかつて発売されていたウェスタンソングのレコードの周波数が火星人の頭を破裂させるというめちゃくちゃな効果を偶然発見したことで活路を開いている。

人類が持ちうる中でも、もっとも強力な兵器である核。
その核がSFの世界では咬ませ犬のような存在であり、もう一ひねりして本当の攻略法を見出すことに、カタルシスがあるのだ。核はあくまでも抑止力。他国を強引に侵略したり従属しようとする現実の列強各国の動きを、皮肉にも核保有国の映画が否定するものでもある。

日本における“核兵器無力観”は、被爆国という立場だから生み出された受け手の論理が作用している

ちなみに、被爆国である日本でもまた、核が通用しない未知の存在が描かれることはしばしばある。
もっとも有名なのが、やはりゴジラだろう。

1954年に公開された特撮映画『ゴジラ』では、この怪獣は人類の度重なる水爆実験に怒り、復讐のために日本に上陸するという筋書きとなっている。口からは放射能を含んだ熱線(白熱光とも)を吐き、自衛隊の攻撃もほとんど通用することがない。

最大の特徴は、ゴジラもまた、核実験の被害者であるという点。そもそも本作は明確な反核メッセージも込められていた。日本は唯一の被爆国という立場だからこそ、ゴジラを創出できたとも言える。

核を是とする描き方は徹底して避けていたゴジラシリーズは以降も数多く上映されることになるが、折に触れてゴジラは核実験や核廃棄物の不法投棄のせいで生まれてしまった悲劇の存在というスタンスは強調され続けている。
2023年公開の『ゴジラ-1.0』でも、そういったシーンは描かれていた。

被爆国ならではの目線で、核が通用しない存在を生み出すというのは日本特有のスタンスだろう。
アメリカとは核に対しての認識も少し違うが、今回ここで挙げた映画に共通するのはいずれも、核は人類同士の戦争でのみ最大の効果を発揮するから抑止力として機能しているだけの存在であるという点。

より強大な何かに遭遇したとき、核はただただ人類の無力感を際立たせるためだけの演出でしかないのである。

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著者 松本ミゾレ