秋葉原のグラボ騒動、中国系業者多数との報告…背景に米中輸出規制も関係?春節重なり“商機”だったか
NVIDIAの最新グラフィックボードGeForce RTX 5090/5080の販売をめぐり、1月30日に東京・秋葉原のパソコンショップで混乱が発生した。当初、15時から行われた抽選販売は、予想を大きく上回る購入希望者が殺到し、異常な事態に発展したことで大きい取り沙汰された。
問題の現場となった「パソコン工房秋葉原パーツ館」は、発売解禁時間である同日22時〜23時の直後に販売を開始する「深夜販売」を行うほぼ唯一の店舗だった。この日、15時から深夜販売の購入者を店舗前で抽選する予定であったが、想定されていた「先着100名」を大きく上回る購入希望者が相次ぎ、数百名以上が押し寄せる事態となった。
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— パソコン工房秋葉原パーツ館 (@PK_akibahonten) January 30, 2025
本来は15時以前の並びは禁止されていたものの、規則を守らない一部の違反者にも抽選券が配布されたとの報告が寄せられ、転売目的と見られる購入希望者同士のトラブルも発生した。さらには隣地の幼稚園に不法侵入するものが現れるなど、一時騒然とした状況となった。
この騒動を受け、当日すぐにショップ公式が抽選をオンライン方式に切り替え、近隣の他店も店舗抽選を取りやめるケースが見られた。翌日以降、テレビや全国紙で報じられるまでに発展した中で、特に中国系の転売業者と推定される参加者が多かったことが報告されていた。実際、その現場を確認してみると、店舗側が掲示したとみられる、中国語で書かれた注意文もあった。
また、その後の報告によると、抽選対象となった10枚のRTX 5090のうち、少なくとも2枚が転売業者に渡っていることが指摘されており、実際に中国のソーシャルメディアには抽選番号が記載されたレシートの写真も出回り、価格交渉の様子が表示されていた。
今回の騒動をめぐり、販売元であるパソコン工房の対応が厳しく批判されているなかで、これらの購入希望者が詰め寄ることとなった背景には複数の要因があったのではないかとして話題になっている。
ご心配頂いています昌平幼稚園のことでご報告します。昨夕、パーツ販売の抽選参加希望の方が集まり、一部の方が園庭フェンスに登り降りられなくなり、また園の看板が壊れるという事態がありました。前者の方は園庭側に降りましたが、不審者侵入時の訓練通り、園の職員複数名で事にあたり、出口まで誘導…
— 樋口高顕(千代田区長) (@higuchi_takaaki) January 31, 2025
中国国内では「大陸版ではないフルスペック版」に一定の需要
まず指摘されている点として、中国内外での製品のスペック差が挙げられる。昨今、米中間で半導体輸出規制が行われ、AI活用やゲームプレイに必須となるグラフィックボードめその例外ではない。実際、中国本土で販売されるのは「RTX 5090『D』」と呼ばれる別モデルであり、これは禁輸措置の規制に準拠したことで、通常のRTX 5090に制限が加えられた性能になっている。
すでに輸出規制に則って展開されていた前モデル「RTX 4090D」の事例では他国て購入したフルスペックのRTX 4090が転売市場で高騰しており、一時発売価格の倍以上で取引されることも確認されていた。(※RTX 5090の場合は基本性能に差はないが、AI処理のTensorコアが減少。描画関連ではやや性能の低下が見込まれる)
これに加えて、発売日である1月30日は中国の旧正月・春節の真っ只中。ただでさえ高い需要が春節商戦と合わさることで加速する、絶好の商機だったようで、結果として日中現地で活動する転売業者や海外渡航が可能な消費者が多く足を運ぶことになっていた。
もちろん購入希望者には純粋にパソコンパーツを手に入れたい国内の一般客も多かったことが想定されるが、そもそも販売数量が各店舗で15台(RTX 5090)を下回っており、慢性的な供給不足が予想されていた。実際のところ、購入したフルスペックの製品を中国国内へ販売目的で持ち込めるのかは不明ではあるが、もし可能となれば単なる転売騒動に収まらない、より重大な問題になり得るとの指摘も挙がっている。