“OpenAIを脅かす”中国発の新AIモデル「DeepSeek R1」無料で使える魅力と要注意ポイントとは
中国のAI企業DeepSeekが公開した新たなAIモデル「DeepSeek-R1」がその性能の高さから“OpenAIを脅かす”存在だとして一躍注目の的に。ウェブサイトを通じて無料で利用することができる一方で、中国企業ならではの規約内容には注意を払う必要があるとの啓発も話題になっている。
有料級の出力品質を無料で提供、ローカル環境でも動作
DeepSeek R1は、中国発のAI開発企業であるDeepSeek社が今月より提供を開始した大規模言語モデル。米・OpenAIの最新モデル「o1」に匹敵する性能を持ちながら、オープンソースとしてモデルを無料で公開していることで話題になった。MITライセンスを採用していることや、モデルの重みや出力を自由に利用可能としたことがAIツールユーザや開発コミュニティから評価を得ている。
また、このR1モデルを活用したチャットツールがウェブサイト「chat.deepseek.com」やアプリ上で公開されており、無料の会員登録を行えばすぐに利用できる。OpenAIのo1は月額20ドルの「ChatGPT Plus」プランに加入しないと使えないため、その点でも大きな違いがあり、アメリカ国内のApp Storeランキングでは「DeepSeek」が首位に躍り出た。
同サービスではR1を用いた生成を「DeepThink」機能として提供しており、一般的なAIが苦手とする論理的な推論問題でもかなり正確な回答を導き出せることが確認されている。また、出力が高速で必要リソースが少量で済む小型モデル「32B」「70B」も公開されており、実用性の高さも魅力だ。
利用規約は要チェック、情報取り扱いにはご注意を
有料級の品質を簡単に現状無料で利用できることから、既存のAIツールを多様するユーザーの間で脚光を浴びる一方、中国企業であるが故に「情報管理には注意する必要がある」との啓発もソーシャルメディア上で行われている。
同社が1月20日に更新した利用規約においても、中国企業ならではの内容が確認できる。(以下、英文規約から抜粋・抄訳)
- 「法律およびコンプライアンスの要件を満たすために、入力と出力の確認(中略)、違法コンテンツ機能のデータベースの作成など、サービスを使用するユーザーの行動と情報を確認するための技術的手段を使用する権利を有する(3条3項)」
- 「ユーザーがアカウントを削除した後でも「法律や規制の要求に応じてユーザーの特定のデータを保持」する権利を有する(2条5項)」
- 「本規約に違反した場合、法令違反または違法行為の疑いのある行為については、関連する記録を保持し、法律に従って管轄当局に報告し、その捜査に協力する(7条)」
- 「本規約に基づく紛争の成立、履行、解釈および解決は、中華人民共和国本土の法律に準拠する(9条)」
また、実際の利用では「台湾」「香港」「社会主義」など特定の政治的トピックに関する質問で「回答できません」とのエラーが発生するなど、中国当局の方針に沿った制御が確認されている。
一部はChatGPTやClaude、Perplexityなど他サービスにも含まれる内容ではあるが、中国には国家情報法などが存在することからも、このモデルをウェブサービスで利用する場合は、他のチャットツールと同等かそれ以上に個人情報やプロンプトの入力に注意を払う必要があるとされている。
なお、このモデルはローカル環境で動作させることも可能であるため、最大限に対策を行いたい際は(かなりの性能が求められるが)ネット接続を絶って動かすことが挙げられる。