規制目前のTikTok、ユーザーの移住先は別の中華系SNS?米国内で事業停止見越した動き


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アメリカ国内でのTikTok規制に関する法律の発効が現地で目前に控えるなか、TikTok側も18日、最悪の場合「サービスを停止せざるを得ない」状況だと明かすなど、緊迫感が強まっている。そうした中、直近よりTikTokユーザーの間ではサービス停止を見越して、移行する動き、特に他の中国製アプリへと移る意外な動きが広がっている。

事業停止か存続か…迫る19日を前に「移行」動きが活発

TikTokはショート動画ブームの先駆け的存在として、米国内でも1億7,000万人のユーザーを抱える一大プラットフォームでありながらも、運営元が中国企業であるなどの観点で、長年にわたりプライバシーリスクと絡んだ国家安全保障上の脅威として、米国側は懸念していた。昨年、新たに成立した連邦法により、TikTokは1月19日までに米国企業への売却を行わない場合、事業停止を迫られていた。

TikTok側の弁護団は、この問題を表現の自由に関わる案件として、最後の抵抗として直近まで争っていたが、米最高裁判所は先日にこれらの訴えを退け、合憲との判断を示していた。トランプ次期大統領は本件について発効延期に対する可能性も含ませているが、TikTok側は18日夜、20日の政権交代を待たずして、米国市場からの撤退を余儀なくされる可能性も示唆していた。

Xデーが近づき事態が緊迫感を増すなか、先週より各種ソーシャルメディアでTikTokからの移行先を求める動きが話題になっている。米国内のアプリストアで「Rednote」「Lemon8」と呼ばれる二つのアプリが急激にダウンロード数を伸ばし、ランキングのツートップを維持し続けている。

特に前者の「Rednote」は最近日本でも聴くことが増えている、ライフスタイルの投稿プラットフォーム。女性を中心に親和性が高く、しばしばPinterestとInstagramを融合させたものと称されており、「Lemon8」も同様のライフスタイル系だが、こちらはより動画色が強いのが特徴。しかし、このアプリはTikTokと同じ中国企業が運営しており、前者は現地で「小红书」として知られているほか、後者に至ってはTikTokと同じ運営元だ。

アプリ内ではこうしたアプリの移行をすすめる投稿が、多数のフォロワー数を抱えるインフルエンサーが「#TikTokrefugee(難民)」とのワードで拡散。NYタイムズ紙やロイター、CNNなどの米紙から英・Guardianまでもがこの動きを捉えている。

この動きは他の指標からも顕著のようで、語学学習アプリのDuolingoは先日、中国語の学習者が前年比で216%増加していることを報告。両サービスにおいて英語投稿の少なさが故に、現地コンテンツを理解したい需要があると指摘されている。

米国内では好機と捉えるプラットフォーマーも

ただ、TikTokのサービス停止を見越した他社プラットフォームの動きは米国内企業でも多く見受けられる。特に現地の短編動画アプリ「Flip」と「Clapper」はApple App Storeのダウンロードランキングで上位5位以内に入り、TikTokの代替サービスとして注目を集めている。また、Meta社が運営するInstagramではこれを好機と捉えたのか、ショート動画サービス「Reels」に置いて複数の新機能を発表するなど、TikTokからのユーザー流入を見込んだ施策を展開している。

規制が実施された場合、RednoteやLemon8といった他の中国企業製アプリへの影響は不明だが、TikTokの有名インフルエンサーは、この動きについて皮肉を込めた私見も述べていた。インフルエンサーのなかには数百万のフォロワー数を擁するアカウントも少なくなく、サービスが停止されることとなれば、拡散力が失われ、案件や収益において打撃を受ける可能性もあり、より一層深刻に捉えているようだ。

著者 編集部 経済・社会担当
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