買収ではなく“提携”へ。ソニー、カドカワの筆頭株主に取締役「双方にとって一番良い結果」株式は希薄化懸念で大幅安
KADOKAWAとソニーグループは昨日19日、戦略的な資本業務提携契約の締結を発表。翌年2025年1月7日に実施する第三者割当増資によりソニーは約500億円でKADOKAWAの新株式1205万4100株を取得し、ソニーは同社株式の約10%を保有する筆頭株主となる。
両社をめぐっては先月19日、ロイターやブルームバーグなど主要経済紙が買収協議を進めていると報じたことで注目を集めた。報道では数週間以内の契約締結の可能性に言及していたことで、直後のKADOKAWA株には買い注文が殺到し連日ストップ高の高騰を記録した。
今回の発表では資本業務提携による増資という形に帰着。続いていた買収に対する期待感が剥落したことや、8.5%の希薄化がネガティブ材料となりKADOKAWA株は売り優勢となり、20日前場はストップ安気配に。一方のソニーは反発した。
同発表では、保有するIP(知的財産)価値のグローバルでの最大化に向けた連携を強化すると説明しており、具体的な協業分野として「コンテンツ領域での共同出資」「クリエイターの共同発掘」「両社IPのメディアミックス展開」の推進を挙げた。また、ソニーグループによるアニメの世界流通拡大や人材育成などについても盛り込んだ。
増資という形で一旦の決着がついた本件について、19日にKADOKAWA取締役の川上量生氏は自身のXで「結果的に双方にとって一番良い結果になったと思います。」と言及。500億円規模の追加出資にとどめつつ、双方の強みを生かすことを念頭に置いた提携に前向きな反応を示した。
なお、第三者割当後は9.68%を保有するソニーグループが筆頭株主となるが、主要株主に定義されない信託口2社(KOREA SECURITIES DEPOSITORY-SAMSUNGと日本マスタートラスト信託銀行)は引き続き持ち株比率でソニーを上回る1位、2位となる。
ソニーはG&NS分野で「PlayStation」などのコンソール機展開や、ゲームタイトルの自社開発を行うほか、音楽分野では「鬼滅の刃」を筆頭に多数の作品を手がけるアニメ製作企業「アニプレックス」を擁する。一方のKADOKAWAは出版事業を核に「Re:ゼロから始める異世界生活」などの有力な知的財産(IP)を保有し、アニメ、ゲームなどメディアミックスでの横展開を得意とする。10年代からはゲーム開発もすすめており「エルデンリング」を生んだフロム・ソフトウェアやスパイク・チュンソフトを子会社に持つ。