成長危ういYouTuber事務所「UUUM」がVTuberに本格参入?競合多くも急成長業界で一転攻勢なるか


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YouTuberマネジメント業界最大手で知られるUUUMが新たにVTuberプロジェクトの始動を発表した。「イリクス学園」と題したこのプロジェクトは、3D・XR技術に強みを持つAKA Virtual社との協業により展開を行うという。

本プロジェクトではすでにオーディション第一弾として男性VTuberを募集(11月4日まで)。プロジェクトの情報発信拠点として、X(旧Twitter)やYouTube、noteなどの公式SNSアカウントも同時に開設し、本格的な展開に向けて準備を進めている。

組織改革で黒字転換も苦境続く

UUUMといえば、HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんら国内トップYouTuberを数多く抱えるマネージメント企業として知られているものの、直近数か年の業績落ち込みが投資家や業界内外から指摘されている。近年にもこれを主な理由に、フリークアウトによるTOBで同社子会社化に踏み切るなど、大きな注目を集めている。

今年7月に発表した通期業績では、売上高は52億1,000万円と前年同期比88%水準に着地した。同社は減収の主要因として、近年急速に普及した「YouTubeショート動画」の影響があふとしており、広告収入が著しく低く、クリエイターによる広告挿入のコントロールも困難とな問題を共有。収益性には未だ乏しいとして、同社は「マネタイズ施策を拡大中」と説明していた。

なお、売上では減収となったものの、営業利益は6億9,000万円の赤字を計上していた前年から黒字転換を果たした。同社は人件費、販管費の削減を柱とする組織改革、2.5次元アイドル「いれいす」運営会社の株式譲渡で得た売却益で損失を相殺した格好となった。(補足:10月15日発表の予想修正では連結経常を上方修正、最終経常を下方修正した)

VTuber市場は急成長も2極化目立つ

そうした状況下での此度のVTuberプロジェクトの始動なだけあって、近年急成長を続けるVTuber事業への参入意向は社としての成長を加速するアクションになりうる。

一方で業界には非常に多くの企業が参入しているのも現実だ。専門調査会社uyetが公開した「VTuber/Vライバー事務所カオスマップ」によれば、「にじさんじ」「ホロライブ」「ぶいすぽっ!」「あおぎり高校」など最大手級が並ぶ傍ら、エイベックスやスターダスト、サンリオ、日本テレビ系まで多業種から参入が絶えない。

VTuber事務所の現状がひと目で分かる「カオスマップ」完全版を見る(高画質)
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なかでも「歌」「ゲーム」「アイドル」「クリエイター」といった専門性の高い分野で活躍するVTuberが台頭するほか、各業種の強みを前面に押し出すケースも。大手事業者による市場の寡占化が進む一方で、特定のニッチ分野に特化した小規模事務所の誕生も相次いでおり、二極化の様相を呈している。

今回の「イリクス学園」プロジェクトは始動したばかりにつき、どのようなジャンルで展開するのかは不明なものの、「UUUMが10年以上かけて築いたタレントマネジメントのノウハウと、AKA Virtualが持つモーションキャプチャーなどの最先端3D技術を融合」させる取り組みと説明。従来のYouTuberマネジメントとは異なるノウハウや技術力を協業でカバーする姿勢が見て取れる。

さらに、今回は「男性VTuber」に特化した「個人」「四人一組」でのオーディションを募っており、ANYCOLORの「にじさんじ」も注力しているユニット展開も範疇にあるようだ。 VTuber業界の後発組としてどのようなプロジェクトになるのか、業績含めて今後に注目したい。

著者 編集部 経済・社会担当
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