声優有志が許諾なき“無断生成AI”にNO 山寺宏一、梶裕貴ら声優26人が啓発動画に出演「声が勝手に売られていた」


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権利者の許可なく生成されるAI音声や映像に対する啓発活動の一環として、声優業有志による『NOMORE無断生成AI』キャンペーンが15日から始動。早速、動画コンテンツの公開が行われ、XやYouTubeで配信された短い「予告編」が8,000いいねを超える注目を集めている。

「勝手に売られていたんです」声優有志が訴え

同日21時より公開された動画では、予告編には中尾隆聖氏を筆頭に、梶裕貴氏、福山潤氏、山寺宏一氏など、日本を代表する声優26名が出演。今後は個々の考えを語る動画もSNSで順次公開される予定だという。

「私の声が勝手に売られていたんです。驚きました。私達の声は商売道具で、人生そのものです。無断で使われている声を聞いて下さい。」とのメッセージとともに、各声優が「NOMORE無断生成AI」と唱和する様子が収められた。

この取り組みは無断で追加学習、生成、公開されたAI生成物に対する問題提起を目的としており、声優たちの声や表現が本人の許可なくインターネット上で公開され、時には販売されている現状に警鐘を鳴らすものと、主催者は説明する。

声優有志の会は新技術がもたらす恩恵を認めつつも、「お互いの気持ちや、未来の文化のあり方まで視野を広げて、議論を重ね、みんなで技術の使い方を考えていきたい」と述べ、建設的な議論の必要性を訴えた。

活用進む音声分野の生成AI

生成AIの音声分野での活用は「TTS(Text to Speech)」といった音声合成を中心に、人間に限りなく模倣できるクオリティの実現が可能になっている。直近ではモデルの性能向上などにより、学習に必要なデータも減少傾向になり利活用の幅が広がる傍ら、著名声優の声を無断で活用し公開、時には販売する事態にも発展している。

一方で、先日には音声ベンチャー・CoeFont社と声優事務所・青二プロダクションとの提携が大きな注目を集めた。同提携では、野沢雅子氏などタレントの声を元に、多言語対応のボイスモデルを公開するもので、各業種での活用を促しつつも「演技領域には提供しない」と、棲み分けの姿勢を表明していた。

同会はこの活動を通じて、声優有志の会は文化的なルール作りの重要性を強調、「10年後20年後もずっと、良い作品を生み出す土壌を枯れさせないため」の取り組みとして位置付けている。

出演声優…池水通洋、上田燿司、甲斐田裕子、梶裕貴、片岡富枝、かないみか、くじら、阪口周平、坂本千夏、咲野俊介、佐々木優子、島田敏、嶋村侑、新垣樽助、関俊彦、竹内良太、東地宏樹、中尾隆聖、中田譲治、浪川大輔、朴璐美、深見梨加、福山潤、宝亀克寿、宮本充、山寺宏一(※五十音順、敬称略)

主催者による定義や指導にあたってのコメント

■私たちの定義する「無断生成AI」とは
実演家、著作権者の許諾なく、無断で追加学習、生成、公開されたAI生成物のこと。2024年10月現在の法律では「情報解析のための学習」「非享受目的の学習」は著作権法の範囲外とされていますが、追加学習は議論が分かれます。誰の声か、誰の表現かということがわかるAI生成物は、著作権だけでなく人格権にも抵触する可能性があります。

■私たちの想い
私たちがやった覚えのない朗読や歌、そして声そのものが、ネット上に公開され、時に販売されています。私たちの声は商売道具であり、人生そのものであり、共に成長してきた大切な自分自身の一部です。「この声をもっと聞きたい」と思ったファンがやってくれたことだとしても、無断で使われるのは、気持ちの良いものではありません。
新しい技術は、これから私たち人間に大きな恩恵を与えてくれるでしょう。
でも同時に、お互いの気持ちや、未来の文化のあり方まで視野を広げて、議論を重ね、みんなで技術の使い方を考えていきたい。そのきっかけとなるように、この動画を作りました。
傷つけ合う言動の応酬ではなく、平和的な認識のすり合わせのための議論を有識者も交えて行い、文化的なルール作りをしていきましょう。10年後20年後もずっと、良い作品を生み出す土壌を枯れさせないために。

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