【悠木碧×平川大輔】今注目の家族再生物語『妻、小学生になる。』キャストが感じた作品の真髄とは?見どころを訊きました
悠木:平川さんがおっしゃる通りですね。他の人のお芝居を聞いてやっていくと、ちゃんと正解に導かれる感じがありました。私自身、とかく自分一人で何とかしようとしがちで、自分の役を自分の芝居だけで表現しきらなければという責任感が勝手に働いてしまうのですが、本来きっとそうではないんだと思います。キャラクターはただ生まれ落ちるだけではキャラクターで、その後だれかと関わり、感情のエコーが返ってくることで人としての輪郭が作られるんですよね。
それをちゃんとやらせてもらえる、勉強させてもらえる現場だったなと思います。相手の芝居をよく聞く、自分だけで作らない、相手にも作ってもらう、そして相手のことも作る、というのを一つ一つやらせてもらえて、すごく勉強になりましたし充実した楽しいアフレコ現場でした。
――勉強にもなる現場だったと。では、お二人のアフレコを互いに聞いて、特に印象に残った点はありますか?
悠木:初めて現場でご一緒させていただいた作品からずっと、平川さんのお声の、優しさと哀愁が大好きで…。ずっと、他の人では出せない優しすぎて傷つきやすいあたたかさのある音色のファンでした。
なので、圭介役と聞いた時にぴったりだと感動しました!。何かを失った時に誰かに怒りが向いてしまったりするけど、そうできず自分に向けたから10年悩んでしまった人じゃないですか。その、人に怒れない優しさと痛みがどのセリフにも詰まっていて。
私の好きな平川さんの声がいーっぱい聞けるので、早く皆さんに聞いてほしいです…!(食い気味に)
平川:悠木さんの演技は、小学生の姿のまま母として、妻として、大人としていろいろな言葉を紡いでくれます。いろんな場面があるのですが、話しかける相手によって対応を少しずつ変えていかなければいけないところでのセリフの発し方の塩梅が絶妙すぎて…。すごいを通り越して、どうしてこの表現が出せるんだろうと思うような、演者としては嫉妬するぐらいの表現力です。
――互いに良さを実感し合う現場だったんですね。
平川:もちろんいろんなことを考えて、芝居を作って、セリフのことも考えて、とあらゆる準備をした上で現場に臨んでいらっしゃることは重々承知しているんですが、それがアウトプットされたときに全部生のものとして出てくるすごさ。それを隣で浴びられる楽しさを、毎回感じながらやらせていただいていました。
――アフレコ中に印象に残ったディレクションはありましたか?
平川:お芝居に関してはディスカッションを大切にしてくださる現場でした。特に前半では、コミカルなシーンの振り幅について「もうちょっと行っちゃって」といったディレクションをいただきました。自分で考えていたよりも大きく表現してもいいんだ!と気づかされました。そのご指示も今後の展開のフックのために必要だったんだな、と後になって感じることが度々ありました。
妻+小学生、同時に演じることへの難しさはあった?
悠木:私自身がエンパスな(共感性が高い)こともあって、貴恵の役に入り込みすぎてしまう時がありました。本来の貴恵はもっと陽キャでカラッとした人なのに、私の演技がややウェットになりがちで、それを「カラッと戻して」と言われることが一番多かったですね。でも、そう演じてみると貴恵のキャラクターをより理解できて、より好きになったなって思います。