〈レポート〉流通総額12億円!マンガとアニメのすべてが集結する台湾の一大イベント「台北國際動漫節」盛り上がりを現地取材でお届け


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2月1日から2月5日までの5日間、台湾・台北市で「台北国際漫画・アニメーションフェスティバル2024(台北國際動漫節・TiCA)」が開催された。ここでは会場の模様を現地取材でお届けする。

TiCAとはアニメ・マンガ・ラノベ作品からVTuberまで一堂に集結する国際イベント。台湾の中華動漫出版同業協進會が主催し、関連企業や政府文化部、台北市の協力の下、毎年旧正月(1月末〜2月中旬)頃に台北にて開催されている。

過去最高益達成、政府も後援する一大イベント

会場では台湾現地の出版社やゲームメーカー、教育機関といったACG(Anime+Comic+Game)にまつわるあらゆる企業が出展ブースを展開しており、KADOKWAやブシロードといった日本でもお馴染みの企業も多数参加。台北のACGイベントと言えばちょうど同じ時期に開催される「台北ゲームショウ(TGS)」を思い浮かべる方もいらっしゃるかと思うが、実はTiCAもTGSと同じくらい、現地のファンにとって一大イベントになっている。

そんなTiCAは今年で12回目。2月1日から2月5日までの全5日間の会期で開催され、期間中の来場者は合計48万人、会場内での物販やキャンペーンによる流通総額は2億5,000万台湾ドル(約11.8億円)にのぼり、過去最大規模のイベントになったことが公式や報道により明らかになっていた。

日本のAnimeJapanやコミケのようなイベントに比べ会場のキャパシティは小さいものの、会期前後は旧正月休みであること、そして何よりACGコンテンツの人気上昇が相乗効果で影響し、若年層中心に台北だけでなく台中・台南といった台湾全体から多くのアニメ・マンガファンが集結することとなった。

その熱気は前回の第11回も訪れていた弊誌の想像を上回るほど。今年は会場が「南港博覧館」から「世貿1館(有名な「台北101」の隣)」へとパワーアップし、より多くの来場者を受け入れられるようになっていた。しかし、これでもキャパが足りていないように感じ、場内のピークタイムは通路をギリギリ歩くことができる人の入りと、日本を凌駕する盛り上がりを見せていた。

海外イベントならではの光景が多数

イベントとしては「アニメーションフェスティバル」との名前にはなっているが、全体としてAnimeJapanのような展示中心のイベントではなく、出展者による物販がメインで、コミケの企業ブースが感覚としてかなり近い。

台湾において、日本で人気のアニメやマンガは日本国内の出版社が直接翻訳を行うのではなく、台湾現地の出版社経由で繁体字版として流通している背景が存在する。イベントではこれら大手「青文出版」「東販出版」「尖端出版」をはじめとする複数の出版社が大規模なブースを構えており、それぞれのブースでは“本屋”を彷彿とさせる設計に。

価格は日本販売価格の1.2〜5倍程度であるものの、直近に発売したばかりのマンガやラノベの最新刊が用意されていたことから、来場者の中には手で抱えきれないほどの新刊を手にする人も。そして、最大手とも言える青文出版社のブースは会場外に長い待機列を形成されており、この光景はなかなか国内イベントでは見ることのできないものになっていた。

「青文出版社」ブース

出版社以外で最も注目を集めていたのは「メディアリンク」と呼ばれる現地企業。『SPY FAMILY』や『【推しの子】』といった、日本でも大人気のコンテンツに関連するライセンシングやグッズの越境販売を手掛けており、ブースではイラストや版権の展示を中心に実施。会場の余剰スペースで待機を促すほど、多くの人々で溢れかえったていた。

日本企業が多数出展、好評を博す

もちろん人気なのは現地企業だけでない。日本企業の出展ブースも大いに賑わっており、会場中心に設営された「JUMP:Assemble(ジャンプ:アセンブル)」エリア(※)では展示に加え、限定コラボカフェや特設ステージまでもが用意。ステージイベントが開催されている時間帯はその場から動けないほどの注目を集めていた。

※DeNAが2024年に繁体字版をリリースする「少年ジャンプ」シリーズのスマートフォンゲーム

そして、日本のアニメイベントと大きく異なる点として「アニメスタジオ」の出展が積極的であることが挙げられ、今回のTiCAではブース出展に「旭プロダクション」と「Production I.G.」が、ステージ出展ではIGポート傘下の「WIT STUDIO」が参加。

特に、現在放送中のTVアニメ『魔法少女にあこがれて』を制作する旭プロダクションは担当者が「初出展ながらも現在放送中の作品も展示することで、より興味を持ってもらえるようにした」と話していた。

ブースはアニメ作品の設定資料や模擬原画の展示が中心に行われており、一方のステージでは人気漫画家の来台による「サイン会」や声優による「握手会」といった来場者参加型のステージも多いほか、『転生したらスライムだった件』等のアニメ作品より制作陣が登壇する「」タッフトークショー」が展開。声優がメインの日本のアニメイベントとは一線を画すキャスティングは遠方地という点に加え、新鮮味のある情報を伝えることに重きをおいている意向がうかがえる。

なお、アニメスタジオのような現地法人を持たない日本企業は「日本館(Japan Pavilion)」と呼ばれるエリアに集結しており、現地の出版社による人員や資材の手配協力が得られ、海外誘致を促進する狙いも見受けられた。

日本同様、VTuber熱も凄い!

さらに、今年はマンガやアニメの人気に加え、現地VTuberの勢いも一層増しているように感じた。国内外VTuberプロダクションからライブ配信サービス、クリエイター関連の専門学校、コラボを行うゲームタイトルまで多数の出展が見受けられ、日本国内と同様に若年層からの強い支持が伺えた。ちなみに、前年には「ホロライブ」も出展しており、グッズの展示や「旧正月」をお祝いする壁面パネルやどが好評を博していた。

イベントを現地から俯瞰してみると、前述したとおり昨年に増す盛り上がりが見られた。そして「若年層の支持が凄い」という点も印象的で、統計的ではなく感覚での話になるが、イベントの来場者のメイン層は10〜20代の若年層だった。逆に壮年期後半の世代は割合として多くはない印象で、既存ファン層の購買力の向上に伴い、今後もより盛り上がりを見せることに期待される。

TiCAは先週末に閉幕したが、本年4月には同様のイベント「台中國際動漫節(TCCA)」が台中市にて開催されるほか、7月にはマンガとゲームのイベント「漫畫博覽會」も控えている。

基本的に物販がメインとなる都合上、アニプレックスや東宝アニメーションといったアニメ作品を取り扱う企業の出展は少ないため、日本ではあまり話題にはならないものの、現地ではこうした日本アニメ、漫画に触れる機会は非常に好評であることは知っておいても良いかもしれない。

おまけ:現地で撮った写真たち

ファンアートボードにすごい絵を描く人
「エ口本」は日台共通?
観光名所「台北101」の前で謎の会合をするコスプレイヤーさんたち
壁面にそびえ立つフリーレン(台灣角川)
MyGO!!!!!の衣装展示(ブシロード)

市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。