『ダンジョン飯』はなぜリアル? 冒険者の生活を疑似体験できる理由を考える【第4話先行カット】

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2024年冬アニメ、中でも特に前評判が高く期待されていた作品の一つが久井諒子作の『ダンジョン飯』(KADOKAWA刊)。レッドドラゴンに食べられてしまったファリンを救い出すため、ライオス、マルシル、チルチャック、センシたち冒険者がダンジョンを冒険しつつ魔物をおいしくいただくファンタジーグルメ作品だ。

『ダンジョン飯』を観ていると、フィクションながら本当の世界の話のように錯覚してしまう。作中で出てくる魔物や料理が、実際に見て調理したもののように生き生きと描かれているが、なぜここまでリアルな世界観が実現しているのか。それは“ユニークでとても具体的な設定”が挙げられるのではないか。最新第4話が明日1月25日(木)に放送されるタイミング改めて本作の魅力をおさらいしたい。

※以下、作品のあらすじと一部内容への言及が含まれます。

細やかで丁寧な設定の数々

『ダンジョン飯』のリアルさを形作っている要素は、大きく分けて3つあると考えられる。

1つ目は、ダンジョンを攻略する冒険者の生活事情だ。迷宮探索には費用がかかる。武具や日用品、仲間の雇用費……。食糧を迷宮内の魔物で自給自足するという手段をとったのも、ライオスたちがレッドドラゴンから逃れた際に一文無しになってしまったからだ。ダンジョン攻略を目指す者たちに金銭的な余裕はきっと少ない。冒険者の生活は想像以上に厳しいものなのだろう。

第1話場面カットより

また、最初にライオスたちのパーティーを抜けた仲間が出した辞表は、まるで会社員のようなパーティの仕組みを物語っている。私たちの世界にある“辞表”という概念を『ダンジョン飯』の世界に登場させることで、現実とファンタジーの2つの世界がリンクしているように感じられるのだ。

2つ目は、魔物の生態。第1話でマルシルが天井からスライムに襲われて死にかけたとき、センシがナイフで撃退した。センシはスライムの構造を熟知しており、図解でスライムの内臓の解説がされる。スライムの内臓の種類や位置、獲物の吐く息に反応して飛びかかってくる習性まで、詳細な生態がすらすらとセンシの口から説明される。

RPGにおいてスライムは、序盤のダンジョンで出現する弱い魔物だ。そんなスライムに丁寧で細やかな解説がされることで、魔物が人間と同じように呼吸をして食事をする生き物としてのリアリティを帯びてくる。スライムには足や肺があって、いつも獲物をどのように襲っているのか……。スライムの日常が想像できるほど、設定が具体的なのだ。

3つ目は、『ダンジョン飯』では欠かせない調理シーン。テキパキと進む調理の間にも、魔物のうんちくが聞ける。こういった魔物の豆知識は、迷宮で10年以上魔物食の研究をしているセンシが話すからこそ説得力がある。気持ちいいテンポの調理シーンは、まるで3分クッキングか料理のショート動画を見ているかのようだ。できあがった料理はとてもおいしそうで、作画にも特に力が入っているように思える。

エンディング映像 場面カットより

ちなみに原作では、料理が完成したときに使った材料と分量、ビタミンやカルシウムといった栄養素のグラフまで表記されている。魔物だけはどうしても手に入らないが、マネしたら私たちも同じ料理が作れそうと思わせるリアルさがここにも潜んでいるのだ。味だけではなく工程や栄養素まで描写するところが、『ダンジョン飯』のタイトルにふさわしい、飯へのこだわりが垣間見える。

ダンジョンが身近に感じる

『ダンジョン飯』の世界観は、ただのファンタジーとは言わせないほどリアリティが高い。いたるところに散りばめられた具体的な設定が、手に取って触れるような生感を演出しているのだ。このリアルさはグルメ作品と親和性が高く、ホカホカの魔物の料理についお腹が鳴ってしまう。『ダンジョン飯』はその丁寧な設定によって、魔物や料理の一つ一つに吹き込まれた“生命”を感じながら楽しめる作品なのだ。

(文/まわる まがり @kaku_magari)

第4話 先行カット&あらすじ

第4話「キャベツ煮/オーク」
センシがふだん拠点としているキャンプ地へと立ち寄ったライオスたち。一行の目の前に現れたのは、土でできた魔法生物のゴーレムだった。センシが慣れた様子でゴーレムの動きを封じると、倒れたゴーレムの背中には新鮮な野菜が生い茂っていた。センシはゴーレムの体を畑代わりに、野菜を栽培していたのだ。

【スタッフ】脚本: うえのきみこ/絵コンテ: 藤井辰己/演出: 河野友紀/総作画監督: 竹田直樹 作画監督: 本吉晃子、荒井洋紀

『ダンジョン飯』作品情報

ダンジョン飯。 それは、”食う”か”食われる”か―――
ダンジョン深奥で、レッドドラゴンに妹が喰われた!
命からがら地上へ生還した冒険者のライオス。
再びダンジョンへ挑もうとするも、お金や食糧は迷宮の奥底……。
妹が消化されてしまうかもしれない危機的な状況の中、ライオスは決意する。
「食糧は、迷宮内で自給自足する!」
スライム、バジリスク、ミミック、そしてドラゴン!
襲い来る魔物たちを食べながらダンジョン踏破を目指せ、冒険者よ!

【原作】九井諒子(「ダンジョン飯」/KADOKAWA刊)
【アニメーション制作】TRIGGER

©九井諒子・KADOKAWA 刊/「ダンジョン飯」製作委員会