酷暑と怪談の夏到来!肝を冷やせる“ちゃんと怖い”アニメ&特撮エピソード3選【解説】


酷暑と怪談の夏到来!肝を冷やせる“ちゃんと怖い”アニメ&特撮エピソード3選【解説】
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逆に新鮮。『牙狼』の登場人物なのに純粋な幽霊によって命を奪われた男

最後は2005年からテレビ東京系で特撮ドラマとして放送が開始された『牙狼』。
今ではパチンコのモチーフとしてもお馴染みの作品だが、人知れずホラーと呼ばれる怪物と戦い、封印する黄金騎士の冴島鋼牙の戦いを描くストーリーは抜群に面白く中毒性もある。

『牙狼』シリーズの2作目にあたる2011年放送の『牙狼~MAKAISENKI~』第5話「奈落」というシナリオ。肝を冷やしたいならオススメだ。

この回ではかつて芸術家として成功しつつあったものの落ちぶれてしまい、今は町工場でマンホールを製造している黄島という男(演:なだぎ武)がキーマンとなる。

取引先からマンホールの受注を受けても、なまじ芸術センスがあるものだから要求されたデザイン通りに製造せず、独自性を込めた柄を入れてしまうため納品を断られ、ますます窮状に陥っているというのが黄島の近況だった。

そんな黄島のもとに現れるのが、彼の作るマンホールのデザインを称賛する謎の女だが、正体は黄島製マンホールをゲートにするホラーと呼ばれる怪物の犠牲者かつ、その化身。

作中では陰我(いんが)と呼ばれる邪念が籠ったオブジェと化した黄島のマンホールが次々と人々を恐怖に陥れていくのだが、この話の本質は挫折した程度の人間では、そういったオブジェを作るほどの力はないはずなのに、なぜ…といった部分にある。

実は黄島には妻がいたが、画家としての才能があった彼に入れ込んでいた妻は、黄島の実家である経営が傾いた工場を継ぐため夢を諦めた黄島に失望する。

ある時うっかりマンホールが開いていた下水溝に落下する妻。黄島は彼女を見下ろしながら、ゆっくりマンホールの蓋を閉じてしまう。それ以来彼は、斜陽の工場で日夜陰我にまみれたマンホール作成に明け暮れていたのだった。

黄島が作ったオブジェに引き寄せられたホラーは主人公に封印されるが、創造主たる黄島はというと、自分が作ったマンホールをふと覗き込むと、そこから出てきた女性の手に頭を掴まれる。

手の持ち主こそ、黄島によって見殺しにされた妻その人であり、最終的に黄島は壮絶な死に顔をしたまま息を引き取っているところを発見される。

『牙狼』では常々、陰我に引き込まれた人間がホラーに憑依されるなどして自業自得の最期を遂げることが多かったが、この黄島は例外で、ホラーを現世に呼び込むゲートとなるオブジェを作るものの、本人はホラーに憑依されることはない。

シリーズでも例外中の例外として、劇中の怪物として存在するホラーではなく、純粋な亡霊によって死に追いやられてしまう。

ただ、この結末自体はクライマックスで描かれるものだなのだが、実は本話では中盤の工場シーンで黄島によって殺された妻の顔が映り込んでいる。気になる方は、ぜひどこに黄島の妻がいるか確認してみるのもいいかも……。

あまたある特撮やアニメのエピソード群の中には、しばしば異質と言えるほど怖い作品も含まれている。そういった作品はシリーズの中でも浮くので話題になりやすく、検索して調べて見つけ出すという楽しみもあるだろう。

とにかくしばらくの間、日本は地獄のような暑さが続くので、せめてこういう怖い話を観て、暑気払いの一助としたい。

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著者 松本ミゾレ