酷暑と怪談の夏到来!肝を冷やせる“ちゃんと怖い”アニメ&特撮エピソード3選【解説】


酷暑と怪談の夏到来!肝を冷やせる“ちゃんと怖い”アニメ&特撮エピソード3選【解説】
ウルトラマンタロウ Blu-ray BOX

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まもなく7月も折り返しに差しかかり、いよいよ夏本番…と言いたいがすでに猛暑で参っている。こういう時は自宅に引きこもって冷房をガンガンにかけてアイスを水風呂に浸かるしかない。

しかし、それが出来ないなら、肝を冷やす怖い話でも目にするのが一番だ。怪談に関するコンテンツは今や書籍や動画、さまざまあるが、時にはアニメや特撮番組からその恐怖エッセンスを抽出するのもまた楽しい。

今回は、そんな猛暑を乗り切るべく、アニメや特撮における“子供だましじゃない、ちゃんと怖いエピソード”を怖い話や幽霊が大好きなオタクの筆者がご紹介。

純粋に1本の怪奇譚として完成された怖いものをピックアップしたので、「たまには怖いエピソードを観て肝を冷やしたい」という方は、ぜひ参考にしていただきたい。

世の中を憎んでいた?関与する全ての人に吸血花を配った少女

特撮番組には、怪談めいた、妖怪じみた怪獣が出現することは珍しくない。『仮面ライダー』シリーズでも『ウルトラマン』シリーズでも、特に夏場になると積極的に古今の怪談にちなんだエピソードを制作・放送してきた。

しかしこれらの話の大半…いや、ほとんど全てはそこまで怖くない。あくまでメインターゲットの子供向けの怖さのベクトルなので、本当に小学校低学年ぐらいの子が観ても、特に泣き出すようなものではない。

ところが特撮番組の面白いのは、いわゆる積極的に子供を怖がらせようとはしていない話にこそ、恐怖のエッセンスがしとどに沁み込んでいる場合が見受けられることろにある。

円谷プロが1973年に放送した『ウルトラマンタロウ』。その第11話「血を吸う花は少女の精」は特に強烈だ。

連続吸血事件が多発していた折、防衛隊ZATは調査に乗り出す。ZAT隊員の東光太郎は、ひょんなことから1人の少女・かなえと遭遇。迷子ではないかと疑った光太郎は彼女の住所を聞き出そうとするも、かなえはでたらめを言うばかりで一向に家に帰ろうとしない。

そのかなえ。常にどこかで摘んできた正体不明の真っ赤な花を携えており、出会う人々に年齢性別問わず無邪気に譲って回るのだった。やがてかなえは、親に捨てられて里子に出されていたことが判明。里親となった資産家の義母はかなえに対して贅沢な暮らしをさせていたが、そんな彼女の義母が失血死した状態で発見される。

実はかなえの持つ花こそが連続吸血事件の犯人、蔦怪獣バサラの一部だったのだ。義母を死に追いやる様子を凝視し終え、さらに人々に吸血花を譲り歩くかなえに対し、光太郎はウルトラマンタロウに変身してバサラと戦う。

バサラとは捨て子塚(捨て子が葬られている塚の下)で成長した怪獣であり、タロウはなんとかバサラを撃退するが、結果としてかなえの心を救うことはできなかった。

「彼女は再び施設に戻された」というセリフが流れる中、かなえが剪定ばさみを手に、白昼の墓地をうろつく様子を流してこの話は終了する。

70年代前半までは、日本でも子供を捨てる親が多く、社会問題となっていた。そこでこういった話が誕生したとされているが、捨て子となったかなえが救済されることもなく暗転するという終わり方は、下手に妖怪めいた怪獣が登場するよりゾッとする。

『ゲゲゲ』シリーズ随一の不気味な夜叉!

次に紹介したいのは水木しげる原作の『ゲゲゲの鬼太郎』。こちらは様々な媒体作品が存在するが、東映は本作のアニメを1968年から放送し続けており、1期から現在にかけて、6期に分かれてシリーズが作られている。

これだけ長くやっているなかで、登場する妖怪はシーズンを跨いで再登場することも多く、バックベアードや中国妖怪チーなどは何度も鬼太郎を苦しめてきた。そんな中でも人気妖怪の一翼を担っているのが夜叉だ。

夜叉はギターを操って人の魂を抜き取る妖怪で、シリーズを通してやっかいな存在。1996年から放送スタートの4期『ゲゲゲの鬼太郎』では、第3話「ギターの戦慄!夜叉」で早速夜叉が登場している。

だが、この回はまだ番組がスタートしたばかりで怪奇性や不気味な演出を重視していたためか、終始BGMらしいものも流れず、淡々と夜叉の暗躍が描かれる。

ねずみ男が夜叉の犠牲となり、魂を抜かれて死んでしまうという展開もさることながら、同じく魂を抜かれた子供たちの見た目も不気味なら、彼らの魂をうごめく髪の毛で物理的に捕らえる夜叉も気味が悪い。

今回の夜叉は死霊を使役しており、地下鉄線路内に作った隠れ家の穴に飼い殺しにしている。クライマックスでは地下鉄内で鬼太郎や猫娘と夜叉が対決するが、その際の光と闇の演出もほの怖い。

最終的に夜叉自身が死霊の穴に引き込まれてしまうのだが、戦いが終わってもこの穴は蓋をされた程度で存続しており、押し込められた死霊は退治されていない。

また、“おばけは死なない”ので夜叉もまた健在と思われる。

終始高い湿度を感じられる、欝々とした話運びながらカメラワークは絶妙で観ていて引き込まれるのがこの第3話。

とにかく内容がその他の話に比べて突出して怖いのに妙に引き込まれるので、気が付くと夜叉の毛に手足を絡め取られているような錯覚をおぼえる。

1期から全てのエピソードを視聴した、無駄に時間のあるオタク的には、全『ゲゲゲ』アニメの中でも、この1本が怖さでは首位だと感じている。

【NEXT】逆に新鮮。『牙狼』の登場人物なのに純粋な幽霊によって命を奪われた男

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著者 松本ミゾレ