【ウルトラマン】なぜ怪獣が“東京近郊”にばかり出現するのか?真面目に考える3つの説


【ウルトラマン】なぜ怪獣が“東京近郊”にばかり出現するのか?真面目に考える3つの説

今や世界各地に熱烈なファンを有するまでになった、ウルトラシリーズ。数多くの作品に登場する敵怪獣を、ウルトラ怪獣と呼称し、それぞれに身長、体重といったデータが設定されており、古くは足型のデザインも個別に用意されていた。そしてこれら怪獣たちは、出身地も設定されている。

たとえばバルタン星人はバルタン星。ゴモラはジョンスン島。シーボーズは怪獣墓場といった具合に、あまたの怪獣たちはみんな、その出身地を怪獣図鑑などで確認することができる。そしてこのような出身地に目を向けていくと、ウルトラ怪獣ファンなら一度はある疑問にたどり着く。なぜ“ウルトラ怪獣、地球産は出身地が東京近郊に結構偏っている”のか?

これに関しては、ウルトラシリーズの撮影自体がそもそも関東で行われてきたので、関東方面に出る怪獣が多いのは当たり前。
でもそんなメタ的な事情で片づけるのはちょっと勿体ないぐらいに、東京近郊にはウルトラ怪獣のメッカ。特産地なのだ。

せっかくなので今回は、なぜウルトラ怪獣がやたら東京近郊出身なのか。その理由を無理くり考察していきたい。

東京直下に、ちょうど都合よく地底怪獣のコロニーがあった説

東京近郊に出没する怪獣に関しては、初代『ウルトラマン』だけでもガボラが東京近郊。ミイラ人間とドドンゴが奥多摩。さらに東京近郊にガヴァドン。太田金山からはゴルドン。渋谷にザラガスといった塩梅で、そこそこの数となる。

これ以降のシリーズでも出身地が「東京近郊」となっている怪獣は多く、とても書き切れない。なぜこんなにも怪獣が東京近郊を出身地とするのか。

筆者はこれら怪獣たちの多くが、地底から出没することに着目した。もしかすると、東京直下には怪獣たちにとっては潤沢な資源がひしめく理想の環境が存在するのではないか。

2022年放送の『ウルトラマンデッカー』第6話「地底怪獣現わる!現わる!」では、地下にグドンやツインテール、パゴス、テレスドンなどがひしめく地下怪獣王国のような映像が描かれていた。

残念ながら『デッカー』世界は架空の都市を舞台にしていたものの、似たような光景が、東京が存在する他の世界線のシリーズでも展開されているのではないか――そう思った次第である。

あと単純に、地底奥深くに怪獣たちの弱肉強食の世界が広がっていた方が、絶対かっこいい……。

多くの地球産怪獣は走光性を持っていて、明るい都市を目指している説

東宝のゴジラをはじめ、怪獣たちが東京を目指して進撃するというのは脚本でよく見られる習性である。作品によっては、夜間でも煌々と輝く都市の灯りを目印に海から上陸するというシーンも、ゴジラシリーズでは何度も何度も描かれた。

この場合、怪獣たちは厳密には出身地は〇〇海溝とかになるのだが、海から灯りに引き寄せられて関東圏に入り、そこに居着いていくうちに、いわゆる外来種のような形で東京近郊に居着く怪獣もいるのではないだろうか。

『ウルトラマン』では二度登場するレッドキングも、ある個体は海底から日本アルプスまで広く移動していることが示唆されており、元々海も陸もなく移動するがウルトラ怪獣なのだ。

そこへ行くと、たとえば光に反応してそちらに向かう昆虫のような走光性を兼ね備えた怪獣は結構存在し、大都会東京近辺に集合してしまい…だからこそウルトラシリーズではやたら東京が火の海になりがち、ということも考えられる。

さらには東京の環境が子育てに適しているため、わざわざ海を渡って上陸するシーゴラス・シーモンス夫婦や、巣作りのために飛来したテロチルスという夜行性の怪鳥も存在する。

このうちシーモンス、テロチルスはそれぞれ海路と空路という違いはあるが、夜間に確認されている。のちに東京に上陸することから、最初からここを目指していたことは明白だ。彼らが無事に子孫に恵まれていれば、その子孫はまさしく「出身地:東京」となっていたわけで、怪獣にとっても東京は住みよい環境なのかもしれない。

田舎より餌になる人間が多い説

怪獣は身長数十メートルの巨体を有している。その体を維持するには、莫大なエネルギーを賄わなくてはならない。ウルトラシリーズでは基本的に怪獣の食事や排せつといったシーンが描かれることは少ないが、たまに思い出したかのように食欲をむき出しにして暴れ回る怪獣も登場する。

1973年放送の『ウルトラマンタロウ』では、史上初めて、3話にまたがって同じ怪獣が暴れ回るシナリオが展開された。その怪獣こそ、火山怪鳥バードンである。マニアの間では地球産怪獣では最強とも称されるのが、この初代バードンだ。

大熊山(劇中ではゴリゴリの活火山だったため、富山県に実在する同名の山とは異なると思われる)から出現したバードンは人間を積極的に捕食。

さらに好物である怪獣ケムジラまであっという間に仕留めると、タロウの命をも奪ってしまう。そしてタロウの代わりに地球防衛の任に就いたゾフィーすら倒してしまった恐るべき存在だ。

そのバードンは劇中では終始、餌を求めて各地を飛び回る。東京都内と思われるマンモス団地を襲撃するシーンは容赦がなく、多数の犠牲者を出してしまった。

大熊山は田舎にあると考えられるが、そこでは餌が乏しい。だからバードンは人口密集地=東京を目指す。同じような理由で東京に流れ着き、いつしか居着いてしまった怪獣も、きっといるはずだ。

そういった経緯を持つ怪獣が、初めて人類に確認された際に、便宜上出身地を東京近郊とする……そんなケースもあの世界では多いのではないだろうか。

私たち人間だって仕事や刺激、娯楽を求めて東京近郊に移り住む者が多い。インフラも発展して生活におけるQOLの高さも担保されている。

人間とはちょっと違う理由ではあるけれど、怪獣たちにとっても東京近郊は、きっと魅力的な土地なのである。

著者 松本ミゾレ