ウルトラシリーズの味方怪獣が“適度に弱い”理由 勝てなくても良い?【解説】

初代ウルトラマンに代表される、数々の光の戦士たちの活躍を描いてきた「ウルトラシリーズ」は、平和を脅かす怪獣や宇宙人と、それに立ち向かう人類、そして味方をしてくれる光の戦士の対決という構図で物語が主に展開される。
そのため、ウルトラ怪獣の多くは恐ろしい存在だが、一部には人間の味方をする者もいる。代表的なのが『ウルトラマン』第8話「怪獣無法地帯」で初登場する小さな怪獣・ピグモン。怪我人の世話をしたり、凶暴な怪獣の前に進み出て囮になったりするのもいとわない。第37話「小さな英雄」にも再登場し、ここでも怪獣に立ち向かい、命を落とした。
そんな「人類に味方する怪獣」という系譜に属する存在は、近年のシリーズ作品では頻繁に登場している。
最近の味方怪獣・ロボは作風にマッチした活躍を見せている
ウルトラシリーズでは、常に光の戦士が単独で敵を倒す圧倒的存在として描かれるわけではない。防衛隊の通常兵器も怪獣の足止めに役立つし、時に登場する超兵器が勝利の鍵を握ることもある。
2020年放送の『ウルトラマンZ』には、特空機と呼ばれる防衛メカ怪獣が複数登場。怪獣相手に奮闘する姿が話題となった。
2023年の『ウルトラマンブレーザー』では、23式特殊戦術機甲獣アースガロンと呼ばれるメカ怪獣が登場。こちらも善玉怪獣枠として、主人公側で大きな活躍を見せた。
怪獣枠でありながらメカという設定は、「たとえ空想の世界でも、生身の巨大生物を人類が使役するにはかなりのスペースや餌代が必要になるのでは」といった、視聴者の心配へのアンサーとも言える。
『ブレーザー』にはウルトラマンの相棒怪獣として、炎に包まれた鳥のようなファードランも登場するが、こちらは戦闘機程度のサイズで、前述のようなリアリティの問題を回避している。
ここ20年ほどの作品を振り返っても、友好的な宇宙人の技術供与で完成した怪獣型移動基地や、人間がソフビを使って巨大怪獣になるギミック、あるいは特定の手順を踏むことで実体化する味方怪獣など、さまざまな描き方が工夫されてきた。
いずれも、各作品の世界観から逸脱しない範囲で成立している。
カプセル怪獣に見る、敵の強さを把握させるための立ち回り
ウルトラシリーズの善玉怪獣といえば、『ウルトラセブン』に登場したカプセル怪獣がもっとも有名だろう。モロボシ・ダンが携帯するカプセルに封じられたウインダム、ミクラス、アギラといった怪獣たちは、セブンに変身できない非常時に戦う代行者として登場する。
とはいえ、その実力はそれほど高くなく、劇中では敵に敗れることがほとんど。黒星ばかりである。しかし、それでもカプセル怪獣が無意味というわけではない。
非常時に戦う存在であると同時に、視聴者目線では「敵怪獣がどんな戦い方をするのか」「どれほどの強さを持っているのか」を伝えるバロメーターにもなっている。
言葉は悪いが、咬ませ犬的な役割を担っている。ただ、敵の戦力を測る斥候としての役割もあるため、いずれのカプセル怪獣も重要な存在だ。
なお、カプセル怪獣たちは光の国のそばにある天体に生息しているという設定があり、同種の個体が多数存在する。そのため、ダンが使用する怪獣たちも都度入れ替わっていたのではないかという説が古くから語られている。
実際、アギラは本編で2度登場するが、後の登場回では前回とは色がやや異なる。ウインダムに至っては、最後の登場回でガッツ星人に倒され、炎上・消失している。
平成版『ウルトラセブン』ではミクラスとウインダムが再登場するが、体形は初代とは大きく異なっており、しかも両者とも死亡したような描写がある。その後のシリーズでも登場するが、見た目の違いから『セブン』当時の個体ではない可能性もある。
いずれにしても、カプセル怪獣は敵の能力を知る手がかりとなるため、勝てずとも出撃する意義はあるのだろう。
味方怪獣が強すぎると主役の見せ場を奪う!適度に弱いのが大正解
前項ではカプセル怪獣が弱いことに意味があると述べたが、そもそも善玉怪獣が敵を倒してしまえば、それはそれで問題が生じる。光の戦士の立場がなくなり、シリーズの主役としてのウルトラマンの存在意義が薄れてしまう。
カプセル怪獣やピグモンのように、奮闘しつつも敵わない善性の存在は、敵の悪役としての魅力を引き立て、そこに立ち向かうウルトラマンのドラマにカタルシスをもたらす。
では仮にウルトラマンより強い味方怪獣がいたらどうなるか?この問いにも、シリーズはすでに答えを提示している。
1974年放送の『ウルトラマンレオ』第34話「ウルトラ兄弟永遠の誓い」では、凶悪怪獣アシュランに対抗するため、帰ってきたウルトラマンが変身不能となったダンに怪獣ボールを託す。
このボールから登場するのがセブンガー。ロボット怪獣であり、あのアシュランすら圧倒してしまうほどの実力者だった。
しかし、セブンガーの稼働時間はわずか1分。しかも、一度使用すると50時間の再使用制限があるという設定。実用性に乏しいと判断されたのか、それ以降、ダンが怪獣ボールを使うことはなかった。もっとも、ダン自身も第40話で消息不明になるのだが……。
このように、強力な味方を登場させる場合でも、それに見合った制限や弱点が設けられる。そうでもしなければ主役の立場がなくなってしまうからだ。善玉怪獣に求められるのは、一定の戦力を持ちつつも、決定打はあくまでウルトラマンに委ねるという“アシスト力”なのだろう。
ちなみに、7月5日からテレビ東京系で放送される新作『ウルトラマンオメガ』にも、味方となる「メテオカイジュウ」が登場することが発表されている。


公式サイトではすでに2体の写真が公開されており、そのうちの1体は伝統的なロボット怪獣枠。彼らの活躍にも期待したい。
文/松本ミゾレ