リアルで会えるVTuber、その名も「XTuber」新事務所が誕生…経営陣に狙いを聞いた


リアルで会えるVTuber、その名も「XTuber」新事務所が誕生…経営陣に狙いを聞いた

株式会社PANDORAは23日、新たなVTuberプロジェクト「XTuber」を本格始動した。このプロジェクトはバーチャルとリアルを融合した「XTuber」という概念を設け、一般的なVTuberではできない配信やイベントを行う予定としている。

近年急成長を遂げているVTuber市場のなかでどのような展開を仕掛けるのか。今回、プロジェクトの中心人物に、XTuberの概念や今後の展望について話を聞いた。

・和泉義博 代表取締役CEO
コスプレ事務所やコンセプトカフェ32店舗の経営を経験し、大手芸能事務所でCMGのキャリアを持つ。
・川崎哲也 取締役COO
数々のアーティスト/歌い手/Vtuberのプロデューサー。日本のサブカルクリエイティブを支える。

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XTuberとは?新事務所設立の背景

――改めて、XTuberの概念について教えていただけますか?

川崎: XTuberの概念を分かりやすく言うと、「会えるVTuber」です。VTuberは通常、2Dや3Dのアバターを用いて配信活動を行いますが、いわゆる「中の人」の存在は認識されていても、実際に会うことはできません。しばしば「中の人」という言葉自体もタブー視される傾向にあります。
一方、生身の人間で売り出すアイドルは実際に会いに行けたり、歌を歌ったりし人気を博していますが、2次元的なデフォルメされたグッズなどが中心です。

そこでXTuberは「距離が近く親しみやすい」VTuberと「ふれあいやすい」アイドルの良いところを合わせたものを目指します。

――XTuberを発案した経緯は?

和泉: 私自身は、藤本美樹さんのマネジメントなど、長年芸能畑でタレントマネジメントに携わってきました。一方、川崎は「EXIT TUNES」というボーカロイドレーベルで、インターネットアーティストのマネジメントを長年手掛けてきました。この2人がタッグを組めば、最強のものが作れるのではないか、というのが最初のきっかけです。

――なるほど。3次元×2次元というアプローチはこれまでの経験から来ているのですね。

川崎:私は歌い手界隈・ボーカロイド界隈で活動する中で、両界隈で最初にできたライブイベント「EXIT TUNES ACADEMY」の立ち上げに関わりました。完全にバーチャルな存在であるボーカロイドと、今のVTuberと同じスタイルである歌い手、それぞれが全くの無名だった頃から紅白歌合戦に出場するまでの一部始終を全て見てきたからこそ、今回のXTuberもまだ認知度は低いかもしれませんが、絶対に未来があると信じています。

――XTuberのメインターゲット層はどのあたりを想定していますか?

川崎:XTuberはリアルとバーチャルの両側面を持っているため、幅広いターゲット層を想定しています。VTuberのファン層は年齢層や男女比が若干異なりますが、一般的にはアイドルファンよりも少し若い層が多い傾向にあります。一方、地下アイドルやAKB48といったリアルアイドルはより上の世代が中心となっているためです。

また、XTuberは色々な愛し方、推し方ができると思っています。2次元と3次元の両方を愛してくれるのがベストですが、2次元だけを愛したいはもちろん、3次元で握手したい人でも応援していただけるコンテンツになっていると思います。

――いろんな方に見てみてほしいとのことですので、やはり知名度の向上やメディア露出は重視しているのでしょうか。

和泉:そうですね。VTuberという存在はコアファンの中では熱狂的な人気を得ていますが、次のフェーズとして、より社会的な認知度を高めていくことが重要だと捉えており、マスメディアやテレビへの露出が不可欠と考えています。

他方、テレビ業界も変化しており、インターネットで話題の人がキャスティングされることが増えていますが、テレビマンのなかにはVTuberをどう起用すればいいか分からない人が多い状況です。そこで、我々は「タレントとしてリアルで出られるので、テレビ露出も可能です!」と提案することにより、より幅広い層への訴求ができると考えています。

XTuberは何をしてる?リアルな姿でチラシも配っている

――具体的な活動の話を伺いたいと思います。XTuberという概念は理解できましたが、どのような配信内容を行っているのでしょうか?

川崎:直近では4月11日に夏乃音ユキ、続いて4月25日に夷振えの、そして5月11日に音零くじらの3名がデビューしました。これまでは全員シルエットでの公開で、音声のみの配信をメインに行っていましたが、この度5月23日にキービジュアルを解禁し、3人での初めての合同配信を行うことなりました。

配信活動については、まずは「箱推し(所属タレント全体を推すこと)」のファンを増やしていきたいと考えています。男性グループがわちゃわちゃしているのを女性ファンが好むように、またその逆も然りです。キャラクター同士の連動性や親和性を楽しんでもらいたいです。

―配信では3次元での素のタレントさんとはまた異なる内容が見られるのでしょうか。

和泉: タレント3人に話を聞いてみたところ「生身の自分ではできなかったことがVTuberの姿ならできる」という共通点があることがわかりました。タレント個人が抱える課題やコンプレックスを、VTuberというもう一人の自分だからこそ表現できる。アバターのように、もう一つの人生を歩めるような感覚で、配信内容も、本人たちのやりたいことや個性を伸ばしていけるものを考えています。

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――ジャンルはやはりゲームや雑談などが主でしょうか。

川崎:もちろん一般的な配信がメインではありますが、XTuberだからこそできるスタイルも追求したいです。例えば、つい先日にも音零くじらが秋葉原や池袋に行って、生身の姿でチラシ配りをする様子をショート動画にして投稿しました。

―えっ!実写ですか。たしかにそれはVTuberにはできないことですね。

和泉:リアルなタレントにはできないこと、VTuberにはできないこと、その両方のできないことを一つにしていくことで、他との差別化を図りつつ、コンテンツとしての厚みを出していきたいと考えています。

――一風変わった活動も行うとのことですが、ライブやイベントといった分野での展開は見込まれますか?

まだ明かせないのですが温めているイベントもあり、XTuberだからこそできる面白い仕掛けをしていきます。期待していて欲しいです。

XTuberは「卒業ラッシュ」の現状に応える概念?展望は

――VTuberのイベントといえば、3Dモーションを使ったライブが主流ですが、XTuberもそうしたな展開も行うという認識でよろしいでしょうか?

川崎: 3Dライブは施設や機材、インフラの問題でコストがかさむうえ、中小規模の会場では採算が取れないこともあります。しかし、生身の人間のライブはそこまでコストがかかりません。XTuberであれば、この優位性を活かすことで「コスト70%カット」も実現可能と見ており、より頻度の高い興行もできると考えています。例えば、LEDにLive2Dを映し出し、ステージ上には本人もいる、といった演出も考えています。

――プロフェッショナルが集まっているのですね。「XTuber」を始めるにあたり、VTuber市場の今後の成長について、どのように考えていますか?

川崎:金額的な規模で言うと、これからどんどん広がっていくと考えています。VTuber市場自体は急速に拡大しているなかで、大手事務所さんの中には「ライフスタイルが変わって卒業する」というケースも出てきています。これがまさに、XTuberへ移行していく過渡期だと考えています。

VTuberとして人気を博した人には2種類いて、一つは2次元のままでいたい人、もう一つは、より積極的に「バーチャルではない自分自身を見てほしい」と思うようになる人です。後者の場合、実写を出したり、自分が今ここにいることをアピールしたくなる傾向があります。しかし、VTuberという枠組みの中では、活動の範囲に制限がかかります。

――武道館に立っても、自分がやっているとは言えない点はありますね。

川崎:そこでXTuberという概念を噛ませることで、「中の人」も「アバター」もそれぞれ独立した存在として活動できるため、演者も事務所も気持ちよく活動できます。VTuber市場に加えて、芸能分野も加わるため、この概念は今後ますます拡大していくと考えています。

和泉:また、我々はXTuberを「VTuberマーケットを再定義する機会」だと捉えています。芸能界もVTuber業界も飽和状態にあるなか、XTuberという概念を定義していくことで、結果としてVTuber市場を拡大することにつながると考えています。

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Yoshioka

著者 Yoshioka
オタク総研媒体統括 兼 株式会社オタクリエイト代表取締役。アニメ、テクノロジー(ガジェット)、コンテンツビジネス、システム開発などを取り扱っています。PRプランニングやIP調達、制作事業の統括も兼任。好きなものは新作アニメ、海外スマホ、東南アジア。