キャリアの「お試し割」いつから?提案した楽天すら動きなく…消費者は「利用したくない」が最多占める
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昨年12月26日に総務省の改正ガイドラインの運用が始まり、携帯キャリアの乗り換え促進を目的とした新制度「お試し割」が設けられた。今後、キャリア各社はこの制度を利用した施策が打てるようになったが、制度開始から約1カ月が経過した今でも事業者から具体的な施策が発表されていない。(更新注記あり)
制度開始から1カ月、各社の動きは鈍い
「お試し割」とは端末購入を伴わない回線単体の新規契約やMNP(乗り換え)を対象に、最大6カ月間、月額料金の一部または全額(税抜2万円上限)を割り引く制度。移行意思のある顧客に対し、通信品質を「試す」ことで乗り換えのハードルを下げる狙いなどが込められている。
総務省内のワーキンググループなどの資料によると、この制度設立の背景には新規参入事業者である楽天モバイルが関係していると言われ、強く働きかけたことで実現している。実際、この制度の価格設定は同社の「最強プラン」(月額2,980円)をフル活用することができており、「半年無料」という訴求が可能になっている。
こうした背景から、楽天モバイルは制度設立後すぐに新施策を発表するのかと思われていたが、1月下旬時点でも特段の発表が行われていない。(一部の悪質なアフィリエイトサイトが「始まっている」と誤認させる事例があるのでご注意を)
消費者の反応は「利用しない」過半数。満足派、慎重派多く
ではこの「お試し割」、消費者はどう捉えているのか。市場調査会社のMM総研が今月発表した最新のキャリア調査によると「新しい番号を追加で契約したい」2.1%、「利用して別会社のサービスに変更(MNP)したい」7.2%となり、合わせて9.3%が「お試し割」となった一方、最多の「利用したくない」は56.9%と過半数を占める結果となった。
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利用したくないとの回答者の理由内訳は「現在のサービスに満足」が最大となっており、「契約手続きをするのが面倒」、「お試し割の仕組みがわからない」、「半年経過後は料金がかかる」、「家族割が適用されなくなる」が続き、手続きの煩雑さや半年後の料金変動への懸念も根強かった。
ソーシャルメディアでは「複数社を渡り歩けば最長2年間無料?」といった戦略が話題になるなど、一部で関心は高まっているが、一般消費者への浸透はいまいちのようだ。
3月の新生活シーズンに照準?制約多く消極的な可能性も
現時点では目立った動きはないが「各社は年始商戦の終盤を見計らい、3~4月の新生活シーズンに向けて施策を保留しているのでは」と推測する意見もある。しかし、この制度には前述したとおり、重要なポイントとして「端末購入を条件としない(セットなどは対象外)」が存在する。
新生活商戦であっても、端末のセット販売が基本である大手キャリアにとっては消極的なのかもしれない。
ただ、先のMM総研の担当者は「昨今では1台のスマートフォンで2枚のSIMカード(eSIMを含む)が挿入できる端末も増加しており、2回線目として契約する場合でも1台のスマートフォンで完結する場合もある」として、「今後は対象ブランドやプランを限定しながら、徐々に適用が進んでいくものと予測する」と指摘。
加えて、直近で800万契約を突破するなど、契約数が急増する楽天モバイルは回線品質に心配感を抱くユーザーも多く、物価高騰による節約志向に加えて、「実質無料で基地局拡充を体感できる」という独自のメッセージが組み込むことで、有用な施策になる可能性も有りうる。
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