普通のダムに計1万人来訪…佐賀県×ゴジラの異色コラボ、キッカケは「形が似てるだけ」県職員に反響と狙いを聞いた


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佐賀県が展開する情報発信プロジェクト「サガプライズ!」の一環として、今年70周年を迎える「ゴジラ」とのコラボレーションが、予想を超える反響を呼んでいる。中でも特に注目を集めているのが、ごく普通のダムに出現した巨大ゴジラのダムアートで、20日間で約1万人が訪れた(公式発表)。これらの取り組みについて、県担当者に狙いと経緯を聞いた。

取材に応じた広報広聴課の担当職員
取材に応じた広報広聴課の担当職員

ナゼ佐賀でゴジラ?コラボの経緯は

佐賀県では観光誘致や地方創生を念頭に置いた情報発信プロジェクト「サガプライズ!」を展開しており、過去にも多数のアニメやゲーム、企業とコラボしてきた。そんな同企画の第40弾として展開されたのが、今年70周年を迎えたゴジラとのコラボ。来年1月まで県内でデジタルスタンプラリーなどの多数の施策を行っている。

ただ、ここで気になるのが「なぜゴジラ?」という点。実際、これまで制作されてきたゴジラシリーズの作品において、佐賀県が舞台になったり描かれたりしたことはない。近年多く見られる「聖地巡礼」という形でのコラボも厳しいなかで、佐賀県が取ったアプローチは「県の形とゴジラの形がほぼ同じ」というなんとも変わったものだった。

今回のコラボではゴジラを「佐賀県かたち観光大使」に任命。始動初日に行われたプロジェクト発表記者会見では山口祥義県知事がゴジラに対し「任命状」を贈呈しながら、両者が「ほぼ同じかたちであることを発見した」ことを強調していた。

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都内で開催されたゴジラ「佐賀県かたち観光大使」就任発表会

このアプローチを採った理由について、県広報広聴課の企画担当者は「ゴジラの聖地として知られる場所は全国に多数ありますが、形が似ているというのは佐賀県だけが持つ唯一無二の特徴です」「プロジェクトの終了後も人々の記憶の中に(同じ形であることが)残り続けることを狙っています」と説明。やや奇をてらったような、イレギュラーなコラボ理由を契機に、観光誘致に繋がることに期待していたと明かした。

ちなみに、今回の提案はゴジラの権利元である東宝からも「面白い」とのリアクションが得られたといい、11月3日の「ゴジラの日」にあわせたコラボ開催も叶ったという。

ダムに突如出現した「ゴジラアート」一目見ようと観光客多数

今回のゴジラコラボは佐賀市を中心に県内各地で行われているが、なかでも特に注目されているのが、嬉野市の岩屋川内ダムで行われた「ダムアートプロジェクト」だ。高圧洗浄機メーカー・ケルヒャーとの協力で、経年による汚れを「柄」に見立て、洗浄部と未洗浄部でゴジラを描くというものだ。

アートが完成すると、完成後わずか20日間で1万人以上が訪れるなど大きな話題に。この反響について、企画担当者や関係者も予想していなかったようで、本来観光地ではなかったことから、一時は車両の交通整理も行われるほどの客足が見られたという。

上級からの様子(写真提供:佐賀県)
上級からの様子(写真提供:佐賀県)

特段の観光地でない、ごく一般的なダムをコラボの舞台に選んだ背景について、前同の担当者は「岩屋川内ダムが50周年を迎えるにあたり記念イベントを行う予定があったことや、制作する上での大きさなどの条件があてはまったこと」を挙げ、「半世紀に渡って地元住民を水害から守ってきたわけで、それを知っていただきたいという想い」があったと言及した。

「ゴジラとのコラボという貴重な機会を活かすために、私たち広報部署に留まらず他の部署も巻き込んでいくことでコラボ効果を最大化させようと決めました。その中で県土整備部がダムの周年に合わせてインパクトのあるものを実施したいと考えており、清掃機器メーカーのケルヒャーさんがダムアートを作った実績を見つけ、ゴジラのダムアートが出来ないかという案が出ました」(前同)

ケルヒャーが制作を担当
ケルヒャーが制作を担当

同ダムは人気観光地である嬉野温泉から車で10分とは比較的近いことから、「ダムを目的に訪れた方が嬉野温泉に立ち寄ってもらうことも観光誘客の施策として狙っています」と明かした。実際、SNSではダムアートの写真が国内外で拡散され、新たな観光スポットとして注目されており、地域振興としての一定の成果は見られたようだ。

県内一大イベント「バルーンフェスタ」の中止で感じた「ゴジラ人気の底力」

さらに、県の中心にある佐賀県庁では、新館展望ホール「SAGA360」に巨大なゴジラビジュアルも設置。こちらも開始1ヶ月で1万人以上が訪れる人気スポットになっているといい、子どもから高齢者まで幅広い層が楽しんでいる様子も見受けられた。

窓の外から建物の中をのぞくゴジラの巨大ビジュアル。1月26日まで県庁で公開中。
窓の外から建物の中をのぞくゴジラの巨大ビジュアル。1月26日まで県庁で公開中。

また、担当者は本コラボを通じて「ゴジラ人気の高さ」を再認識したと振り返った。コラボ期間の開始直後に当たる11月初旬、県内有数の大型イベント「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」ではゴジラのグリーティングイベントが行われる予定であったが、台風の影響によりバルーンフェスタの日程の大部分が中止になる事態に発展。佐賀県出身である筆者の周囲にまでも影響が及んだ。

もちろんコラボイベントも中止をせざるを得ない状況にあるなかで、「このイベントを目的に佐賀に訪れる予定だった」とのSNSの反応を受けて、関係者の尽力でなんとか県内の別施設での開催を実現。直前の会場変更だったにも関わらず、結果として約680人もの参加者が集まった。

この出来事についても「バルーンフェスタ目当てで佐賀に訪れていた県外の方はもちろん、ゴジラ目当てで遠方に住んでいる海外の方がわざわざお越しいただいたこともゴジラのパワーを実感しました」と振り返った。

今回の「ゴジラ対サガ」プロジェクトはまだ途中段階ながら多くのメディア露出が行われ、宣伝効果があったとする一方で、一部からは「ゴジラのプロモーションに過ぎないのでは」との意見も寄せられている。しかし、本来観光地ではない場所も含め、県内外から多くの観光客が足を運んでいる状況を鑑みると、観光誘致や地方創生に一定の成果をもたらしていたようだ。

担当者は「このコラボレーションによって全国的に佐賀県への関心が高まり、多くの方々に足を運んでもらえるようになれば」と語り「(コラボは)1月下旬まで続きますので、これから更にこのコラボで佐賀県が盛り上がっていくことを期待しています」と伝えた。

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市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。
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