何となく見始めたら開幕6分でハマった。新作アニメ『負けヒロインが多すぎる!』惹き込まれる真新しさとキャラの魅力
「今期で一番面白いかも知れない……」これは筆者がアニメ『負けヒロインが多すぎる!』第1話を観た後に感じた率直な感想である。
正直な話をすると、本作は前々から注目していたわけではなく、なんとなく「観てみるか〜」くらいの気持ちであった。しかしタイトルオープンまでの“約6分間”でその気持ちに大きな変化が訪れ、本編終了後には冒頭の意見を述べていたのだ。本記事では“6分”という短い時間の中で、視聴者を虜にする本作の魅力について考えていく。
作品に笑いを生み出す“容赦ないツッコミ”
アニメ『負けヒロインが多すぎる!』は雨森たきび著、イラストいみぎむるにより、小学館にて2021年より刊行されているライトノベル作品。ラブコメ作品において主人公の恋人の座を勝ち取れなかった女性キャラクター、すなわち「負けヒロイン」が複数登場、主人公との関わりが繰り広げられ、今夏のTVアニメ化が決定していた。
※以下、第一話に関する言及を含みます
そんな本作だが、魅力を語る上で欠かせないのが主人公・温水和彦の存在ではなかろうか。温水は「水道水の味の違いを楽しむこと」が趣味という少し変わった一面をもつが、どこにでもいる普通の男子高校生である。見た目も温厚そうに見えるが冒頭からかなり鋭いツッコミを放ち、これこそが本作を面白くさせているといっても過言ではない。
ファミレスでクラスメイトの姫宮がイギリスへ行ってしまうという話を聞いた時や、ポテトを頬張る杏菜に対し耳を傾けるシーンでは容赦なくツッコミを入れており、2024年4月〜7月に放送されていたアニメ『忘却バッテリー』に登場する山田太郎を彷彿とさせた。
杏菜が幼馴染・草介に振られてしまうという切ない場面に温水のツッコミが加わることで、思わずクスッと笑えてしまう面白さや、本作がただのラブコメ作品ではないことが視聴者にも伝わったのではないだろうか。第1話では序盤だけでなく、その後のシーンにも彼のツッコミが多く確認できた。2話以降の彼の発言にも、積極的に目を向けていきたい。
“負けヒロイン”らしさを全面的に押し出した演出
“冒頭の6分間”を彩ったのは温水だけではない。第1話でクローズアップされた八奈見杏菜のキャラクター性も非常に目を惹きつけた。幼馴染の袴田草介に思いを寄せながらも、彼の本当の気持ちに気づき背中を押すところや、長く気持ちを伝えられずにいたことを後悔するシーンはまさに彼女の“負けヒロイン”という立ち位置が明確に描写されていた。
また彼女が作中で見せるコミカルな表情も、本作をより魅力的に演出していると考える。草介が去った後、彼が飲んでいたストローに口を付けていたことがバレるシーンでは虚無顔、コーヒーを勢いよく吹き出す顔……といったようにくるくると表情が変化する様子も見られた。短いながらも強烈なカットは視聴者の心に強い印象を残したに違いない。