『推しの子』気になる第2期の“意味深”オープニングを考察―アクアを見守るアイは「ファタール」のアンサー?


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7月3日(水)から第2期がスタートしたテレビアニメ『【推しの子】』。アニメならではの演出をまじえた本編もさることながら、クオリティの高いオープニングが話題沸騰中だ。

ダークな雰囲気と登場人物たちの憂いを帯びた表情が印象的なOP映像は、作品の世界観を忠実に表現している。また、中島健人さんとキタニタツヤさんからなるユニット・GEMNが歌う「ファタール」は、YouTubeにアップされたミュージックビデオが早くも1000万回再生に迫ろうとしている。

本記事では、意味深な描写が数多く見受けられるOP映像について考察していく。1分半にこれでもかと詰め込まれた演出からは、たくさんの意味を読み取ることができる。『【推しの子】』第2期をさらに楽しむヒントになれば幸いだ。

※以下、アニメ本編に関する内容が含まれます。ご注意ください。初稿時に一部不備があったため再掲となります。

アイの幻を追い続けるアクア

OP映像は暗めのトーンで描かれており、アクアたちの頭上に広がる決して明るいとはいえない空模様が物語を表しているかのようだ。『【推しの子】』のタイトルが出た後、中央からスクリーンが開いていく様子はまさに舞台の幕開け。メタ的な演出は本編に通ずるところがある。

ステージの階段上には、アクアとルビーの姿が。その後ろに映し出されるのは、アイにまつわる場所だ。その中のひとつにドームのグラウンドがあるのは、アイが出演するはずだったB小町のドーム公演を意味しているのだろう。しかし、アイはコンサートの直前に殺されてしまった。セットや観客もなくただグラウンドが広がっているのは、アイがドーム公演に出ることなく死んでしまったからではないだろうか。

場面が変わり、劇場のステージにふんわりと現れるアイ。その体はよく見ると透けており、亡霊であることが分かる。アイの幻に対して全力で応援するアクアとルビーからは、亡きアイへの変わらない愛を感じてやるせない。亡霊だとしても、2人はアイのイメージカラーである赤色のペンライトで彼女を推し続けるのだ。

そして、アイの幻影を追ってビルの屋上ら飛び降りるアクアとルビー。アイや父親の真実を追い求めて闇の底へ落ちる姿を表しているかのようで、胸が苦しい。落ちていく最中にアクアが「東京ブレイド」で役を務める刀鬼に変身して舞台のステージへと入るのは、ビルから“飛び降りる”と舞台の世界に“飛び込む”という意味がかかっているように見える。

アクアを観客席から見守るアイが泣ける

「東京ブレイド」に出演するキャラクターや迫力のある舞台シーンが次々に映し出され、OPの最後に舞台の観客席で微笑んでいるのはアイ。キャップを被りこっそり観にきたかのようなその姿は、もしアイが生きていたら……と思わずにはいられない。

「ファタール」のラストでも、「僕を見ていてね、最愛のファタール!」という歌詞が。楽曲の歌詞とリンクしていると同時に、アイはちゃんと見ているよというOPを用いたアンサーのように受け取れる。「ファタール」はアクアが抱くアイへの深すぎる愛を歌った楽曲。アクアの気持ちがアイに届いたような、ニクい演出だ。

OP映像だけでもこれだけ読み解ける『【推しの子】』は、込められたさまざまな意味合いを想像して楽しめる作品だ。それは、実は“転生もの”を表していた『【推しの子】』というタイトルがなにより物語っている。第2期の本編でも、考察のしがいがある展開を期待したい。(文:まわる まがり)

まわる まがり

著者 まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。