「にじさんじ」運営会社、“3年間で2倍成長”目指す3つの方針 キーワードは「ユニット展開」「育成」「設備投資」
VTuberプロダクション「にじさんじ」などを展開するANYCOLOR株式会社は12日、2024年4月期の通期決算を公表。前期比で26%〜31%での増収増益を記録したことが分かったほか、決算公表に合わせ、中長期的な成長に向けた経営方針も発表した。
前事業年度は売上高が前年期比26.3%増の319.9億円、営業利益が同31.4%増の123.7億円、純利益が同30%増の87.3億円をそれぞれ記録。グッズ販売などの「コマース」領域が売上構成の59%を占め、ついで配信サイトによる「ライブストリーミング」領域、「プロモーション」領域、「イベント」領域と続く。
直近数か年における年平均成長予測は77%と高い水準をつけており、若年層・Z世代における従来のメディアからのシフトなどによる、多面的なVTuberによるインフルエンサーとしての市場開拓がうかがえる。市場全体での成長を続けるなか、この度発表された経営方針中にはANYCOLORの特徴として「女性が68%を占める多層なファンベース」「トップ層への依存のない収益の分散した安定的な体制」を挙げている。
こうした市場成長と自社の特徴をベースに、成長に向けた取り組みとして「事業基盤の強化」「継続的なVTuberの輩出」「VTuberあたり収益の拡大」の3点を掲げた。
強み活かして’27年までに2倍成長目指す
まず事業基盤の強化については「マネジメントや企画を行うビジネス領域の従業員の増員」と「マネジメント体制の強化及びスタジオへの投資」の2つを例にとり、特に後者は「新スタジオは面積規模をこれまでの3倍の規模に拡張」する予定であるとしてVTuber数の増加や多様な制作需要をカバーできるようにする。
2点目の「継続的なVTuberの輩出」では具体的な数値として「年平均10~15%程度の新規デビューによる所属数増加」を目標に掲げる。2020年以降、同社所属ライバー数は99→103→129→156と2桁人規模で増加していたが、前年比では+2の158と鈍化。今後はこれまでの増員方針に変更になく「今までに無い領域の個性豊かなVTuber」の拡充を図るとしている。
さらに、本トピックからは、同社が直近に力を入れる育成プログラム「 バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」にも言及している。VTAでは、様々なテーマで“候補生”オーディションを実施し、幅広くユニークな才能を持つVTuber人材の輩出を目指すもので、年間で50~60人の候補生を選定する予定だという。
そして最後、3点目の「VTuberあたり収益の拡大」では、コマース領域での企画充実などが挙げられているが、そのなかでも「ユニット展開」の可能性に期待感を寄せている。現在も複数人のライバーで結成されるユニットは多く存在し、それぞれのライバーの個性やユニット活動を通じた個人間の掛け合いなどが好評を博している。
活動の場も配信に限らずリアルライブイベントの開催やグッズ等のコマース領域にもおよび、新たな方向性や特徴が生まれることから「従来とは違うファン層の開拓に繋がる」との認識を示している。こうした既存の強みを活かす方針により、2027年までに売上高88%、営業利益94%の成長を目標としている。