「プリキュア」深夜放送で話題のABC、アニメ事業の現況は 制作子会社が“案件の安さ”で利益圧迫、赤字打開なるか
東映アニメーションは28日、新作続編アニメ『魔法つかいプリキュア!!~MIRAI DAYS~』をABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネット「ANiMAZiNG!!!」にて2025年1月より放送すると発表した。「ANiMAZiNG!!!」といえば、深夜帯アニメ視聴者ならご存知、在阪局であるABCテレビが運用するアニメ枠だ。
同枠ではこれまで、ラブコメからファンタジー、なろう系まで他ジャンルの作品が放送されていたが、初の深夜帯放送となる「プリキュア」を機に、さらなる展開が期待される。そんな注目のABCテレビ(以下、朝日放送)より、アニメーション事業全体の概況や、関連する制作会社の現況を紹介する。
朝日放送のアニメ関連事業は主に朝日放送グループホールディングス(以下、朝日放送GHD)の子会社「ABCアニメーション」が担当しており、業務は主にアニメ作品のプロデュースから製作委員会への出資、ラジオ等関連番組の製作やグッズ販売まで多岐にわたる。
そんな同社について、朝日放送GHDが今月20日に発表した2023年度の本決算によると、売上高は25億6,300万円、営業利益は2億8,100万円をそれぞれ記録したことが明らかに。特に売上については、2021年から4期連続での増加となる成長を見せたほか、グループ内全体にも「コンテンツ事業」へ大きな貢献を与えたとしていた。
「ANIMAZING!!!」枠の製作や運用、そして今回の『プリキュア』展開など、今後もさらなる成長が見込める一方で、同じく朝日放送GHDのアニメーション制作会社「SILVER LNIK.」については、赤字が続くなど利益面での課題が残る。
子会社「SILVER LNIK.」は“案件の安さ”足かせに…質の見直しで脱・赤字目指す
武蔵野市に本社を置くSILVER LNIK.は2007年より続く制作会社で『Fate/kaleid liner』『はめふら』『キミ戦』『政宗くんのリベンジ』などを手掛けており、2020年に朝日放送GHDの完全子会社化。前出の決算によると、SILVER LNIK.は直近に27億6,900万円売上に計上したものの、営業利益は2億2,200万円の赤字に。
吸収合併後の過去4期でも黒字転換を果たしたのは2022年度の▲3,500万円→1億円のみ。こうした背景もあり、朝日放送GHDは昨年10月に組織改編を実施し、SILVER LNIK.等アニメ事業をABCアニメーション傘下に再配置した。これにより「関連会社をまとめマルチウインドウ展開による収益最大化」を図る。
「企画製作側の好調」「制作側の課題」が顕著になることから、決算説明会では本件の質疑応答が多数行われていた。その中で、SILVER LNIK.の現状について問われた沖中進・代表取締役社長は「SILVER LINKは増収増益ではあるものの、収支改善までには至っていない」と収支改善の必要性を指摘。その上で「過去に受注した単価が安い案件が利益を圧迫した」と分析しつつ、「今後は受注する案件の質を見直しながら収支改善を図っていく」とした。
実際のところ、SILVER LNIK.は2023年度にのべ140本もの納品計画を立てていたことを明かし、張り切っていたとしつつも、現場は「なかなかラインがうまく働かず、かえって厳しい状況に」(沖中社長)とコメント。今後については、2026年度以降の納品タイトルは順調だとして、案件見直しなどで「1、2年後には利益は確実に回復する」(前同)と見込んでいた。