『16bitセンセーション』AIが安く簡単にゲームを作る時代 クリエイターに求められる要素とは〈アニメ評論〉

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同名漫画が原作で、オリジナルストーリーで展開されているTVアニメ『16bitセンセーション』。最新話の11話では、今の時代を生きるクリエイターに向けた熱いメッセージを感じられる内容だった。

※以下、10月13日放送の第11話に関する言及があります。未視聴の方はご注意下さい。

1999年にタイムリープした時、2023年では一般的な要素をふんだんに取り入れた美少女ゲーム『ラスト・ワルツ』を作成した秋里コノハ。後々コノハは再び2023年に帰ってくるが、『ラスト・ワルツ』が社会に与えたインパクトが大きすぎたが故に、街並みだけではなく価値観までも変化させてしまった。現在の形を残しつつも“かつての2023年”を取り戻すため、守の協力を得ながらコノハは再び1999年にタイムスリップして、『ラスト・ワルツ』に対抗する美少女ゲームを作成することを誓う。

11話では1999年に戻って1人でゲーム制作することに不安を覚えるコノハに対して、守はAIを活用すれば簡単にイラストを量産できると説明。続けて、「絵だけじゃない。ゲーム作りに必要なストーリーや音楽もAIが支援してくれる」という。

コノハは「ここまでAIが進化してたらもう人が手を加えなくてもゲームぐらい作れるんじゃないの?」とテクノロジーの進歩に驚愕する中、「確かに今のゲーム作りは全体としてその方向に向かっている」と返しつつ、「AIが進化してもどうしても作れないものがある」「熱だよ」と口にする。

守は「AIは早く安価に品質の高い作品を作り出す。だがそこに熱はない。AIにはゲームを作らなきゃいけない理由も、内容に対する葛藤も恐れもない」「ただ、命令を忠実に遂行するだけ。結果、作り手の熱を感じられないゲームができあがる」と熱弁。

とはいえ、「熱のないゲームでも売れるんだよ、完成度が高く見えるからな。だから今の世の中、AIが作るゲームだらけだ」と付け加える。それでも、守は「今僕らに必要なのはただのゲームじゃない、時代を変えるゲームだ。AIだけでそんなものは作れない、人間の力が必要なんだ」と語った。

クリエイターに必要なもの

コノハがいる2023年は『ラスト・ワルツ』の影響により、テクノロジーはかなり進歩しているため、AIによって様々な創作物が生み出されることは珍しくないのだろう。私達が今現在暮らす2023年では、生成AIなどを使用してイラストや音楽を制作することが徐々に浸透している。ゆくゆくは守が言うようにゲーム制作はAIが大部分を担い、“人間がAIをサポートして作られた作品”が市場に出回ることが一般化するのだろう。

恐らくその流れは止められない。数年前から「AIに仕事を奪われる」的な議論は頻繁にされていたが、その人の個性やセンスが求められるクリエイティブ系の仕事は、AIに奪われる仕事とは対極にあると思われていた。しかし、すでにAIが手がけたイラスト集や同人誌などが販売されている通り、クリエイティブ系はAIに奪われる仕事の“筆頭”と言えるのではなかろうか。

クリエイティブ業界にとっては大型台風レベルの逆風が吹き荒れており、悲観的になっているクリエイターも多いだろう。しかし、守の言葉はコノハだけではなく、そんなクリエイターに寄り添いながらも背中を押す強いメッセージのように感じた。

加えて、AIは「1を100」にできても「0を1」にはできず、0を1にできるのは人間で、0を1にするための燃料は”熱”であることが伺える。そして、その熱こそが技術以上に今後クリエイターに求められる要素であり、裏を返せば「熱のないクリエイターは“AIに使われる側”になるのかもしれない」と背筋がゾッとした。

ちなみに、守がコノハにAIで作成した水彩画タッチのイラストを見せたが、このイラストはアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』や映画『メイドインアビス 深き魂の黎明』など様々な作品で原画を手掛けてきた吉成鋼氏が描いたものらしい。「AIが制作した」と言っておきながら、そこは伝説的なアニメーターに描いてもらったイラストを採用したことにはしびれる。「人間はまだまだ負けていない」とメッセージ、もとい“熱”を感じ取って勝手に熱くなった。

11話の前半は守のありがたいお言葉が並んだ一方、後半もある意味印象的な展開だった。コノハは謎の組織に捉えられ、目を覚ますとそこは大量の人間が収納された謎空間。てっきり1999年にタイムスリップしてゲームを作るのかと思いきや、『マトリックス』や『PSYCHO-PASS サイコパス』のようなSF要素満載の超展開に度肝を抜かれた。予想を大きく裏切る超展開となった『16bitセンセーション』ではあるが、ハラハラドキドキしながら残り少ないストーリーを楽しみたい。

【前回第10話の記事はこちら】『16bitセンセーション』 萌え文化は失われ、無個性と化した秋葉原は未来の姿か

©若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT

TEXT: 望月悠木(フリーライター)