【後編】アニメ『ミリオンライブ!』綿田慎也監督×塩谷大介CG監督インタビュー:10周年の歩みを紐解き“大切にしたこと”とは


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8月から劇場先行上映が実施され、現在TVアニメ放送中の『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリオンライブ!』)。

今回、TVアニメの放送スタートを記念して、監督の綿田慎也氏とCG監督の塩谷大介氏(白組)にインタビューを実施した。先行上映を観たプロデューサー(『アイドルマスター』シリーズのファンの呼称)からの評判も高い本作をどのように作り上げたのか、前後編に渡ってたっぷりとお届けする。
(取材/文:千葉研一・写真:編集部)

※本記事は【後編】です。
※以下、アニメ『ミリオンライブ!』第1話〜第4話に関するネタバレ、及び以降の一部内容・場面カットが掲載されています。未視聴の方はご注意ください。

→【前編】待望のアニメ化、その舞台裏に迫る―アニメ『ミリオンライブ!』綿田慎也監督×塩谷大介CG監督インタビュー

「Legend Girls!!」は第3話のエンディング曲にする予定だった

――ここからは、劇場先行上映第1幕である第4話までの内容について具体的にお聞きします。やはり第2話のオーディションシーンはとても印象的でした。ここはどのように生み出されたのでしょうか?

綿田:構成上のことを話しますと、当初ほかのアイドルたち全員の顔見せはもうちょっと後でもいいと考えていたのですが、(第4話〜第5話で)原っぱライブをすることが先に決まったので、そこからの流れで逆算的にオーディションステージを設定していきました。

――そうだったのですね。

綿田:オーディションステージに関しては、「歌っている途中で失敗して、そこから復活する」という、物語性のあるライブシーンをやってみたいと以前から思っていたんです。ただ曲を紹介しました、みたいなライブシーンが続くのは出来るだけ減らしたかったですし、歌に対してちゃんと物語を紐づけていこうというのは脚本の加藤さんと共有していた部分でした。

アイドルアニメだと「トラブルを解決した結果としてのライブシーン」や「トラブルを解決するきっかけとして歌がある」といったドラマが定形になっていますけど、今回はせっかく曲に対して構成から発注が出来たので、曲の中に全部詰め込んでやってみようと思ったんです。それに、『ミリオンライブ!』は歌うま(歌の上手な人)が多いから、それを使いたかった(笑)。僕自身、『ミリオンライブ!』は曲を好きになってハマっていったので、やっぱり曲の良さを伝えたい……そういったことを複合的に見せるやり方として、第2話でのオーディションステージを構成していきました。

――田所あずささん(最上静香役)は当時から歌が上手でしたけど、ただ上手に歌うだけではない表現は、10年経った今だからこそ出来たのかなと感じますよね。

綿田:それは絶対にそうですね。これほど高度な歌と芝居の融合は、今だからこそ出来たんだなと収録を見ていて感じました。

――楽曲面ではオープニング主題歌「Rat A Tat!!!」はもちろんですが、BGMの選曲も素晴らしいなと思って。第3話の屋上のシーンで「Legend Girls!!」のインストが流れるのは、感慨深かったです。

綿田:実は、もともとは毎話エンディングをちゃんと付けるつもりだったんです。でも、前半の話数はエンディングらしいエンディングがないんですよ。

――各話のエンディングは劇場上映用にカットしたわけではないのですね。

綿田:残念ながらそうではないです。本編に尺を使っていったら、とても止め絵だけのエンディングをやる尺がなくて。「Legend Girls!!」(※)はもともと第3話のエンディングにしたいと思っていました。実際にボーカルありを流したパターンも作ったんですけど、結局は(尺的に)入らなかった。それだったら劇伴という形で発注して、第3話の本編で使いつつ、シーンでも使えたらいいなと思ったんですね。苦肉の策と言ったらあれですけど、エンディング尺が使えないからこそ、こうなりました。

でも、「Legend Girls!!」は大きな意味で『ミリオンライブ!』のスタートに関わる曲ですし、劇伴に出来たことで、結果的にはプラスになった判断だと思っています。

制作のようす

※「Legend Girls!!」は最初のCDシリーズ「THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE」の「02」に収録されている楽曲。「01」は「Thank You!」が収録されている。

呼び捨ての謎に回答を提示した裏には、あの人の影響も

――ほかにもアイドル同士の関係性や、知っていると嬉しくなるようなシーン、ネタが散りばめられていて、そこはやはり結構意識したのでしょうか?

綿田:関係値は狙ってやっています。半分ファンサービスもありますし、劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』 での関係値のある子は、それを使うことによってアイドルの紹介部分の説明を減らせるなと思ったので。

でも、知っているからこそめちゃくちゃ怖かったです。みんながネタにしている関係をぶっこむかぶっこまないか。(二階堂)千鶴と(島原)エレナの組み合わせなど入れるか入れないか悩みましたからね(笑)。

――その組み合わせが出てくる時点で(笑)。

綿田:めちゃくちゃコアな人しかわからないものとか、いろいろ悩みましたが、比較的その関係が好きな人の総数が多いと僕自身が認識しているところから入れ込むようにしました。

最大公約数じゃないですけど、それもみんながイメージしている『ミリオンライブ!』のぼんやりした総体の一部だと思っていて。新しい組み合わせを出すと、「え?この2人の組み合わせに何があるのかな?」と思われてしまいますよね。好きだと言っている人が多い組み合わせなら、スッと入って来やすいですし、そこは「新訳」という部分にも関わってきます。あとは、先ほど言ったように、アイドルの関係値を改めて説明しなくて済む、という脚本・構成上の狙いも正直ありました。説明をちょっと省いても想像で埋めてもらいやすいですからね。

――SNSでの感想の中に、初見の友人がちゃんと理解していたと書いている人もいて、ちゃんと伝わっていましたね。

綿田:初見さんにそう思ってもらえたのはありがたいです。10年やってきた中で、この子とこの子の関係値はイメージしやすいよね、といったものが出来上がってきたんだと思います。そういう意味では、これまでいろいろな人がアイディアを出してきたものをありがたく利用させていただきました。

――細かなところでは、未来や静香が(七尾)百合子を呼び捨てにすることに、ひとつの回答が提示されましたね。年上には基本的に「さんづけ」するのに、年齢がひとつ上の百合子を呼び捨てなのは昔から謎でしたから。

綿田:ここはシナリオ打ち、構成打ちの話にも関わってくるのですが、今回はシナリオ作業に『ミリシタ』でメインライターを務められている東 義人さん(バンダイナムコスタジオ『ミリシタ』ゲームデザイン(コンテンツ)ディレクター)にも入っていただいています。

それで、第3話のおおまかな構成の話をしていた時に、東さんから「そういえば、百合子はなんで呼び捨てなのかわからないよね」みたいな話があって。せっかくだからと、東さんのアイディアをいただく形で進めました。今回のアニメを観て、ゲームをプレイされている方もアイドルのディテールに齟齬(そご)を感じなかったと思いますが、そこに関しては東さんに入ってもらっているのがすごく大きいです。セリフの言い回しやキャラクターの関係値といったところは実際に見てもらっていますからね。第3話はまさにその効果が大きく出た話数ですね。

シナリオに関しても、メインで名前が出ている僕や加藤さんだけでディテールまで全部出来上がっているわけではなくて。「この子は呼び方おかしくないですか?」といったいろいろなチェックをされる方がいてくれるおかげで、最終的に皆さんが観て不自然さを感じない『ミリオンライブ!』になっているのが事実です。

――そういうところも大事ですよね。あと、もうひとつ気になったのが、彼女たちの私服です。N(ノーマル)カードの絵柄にもなっている私服から変えた人は、なにか理由があるのですか?

綿田:今回、白組さんのキャラクターデザインに置き換えたことで少し頭身が上がりましたので、年齢感とビジュアルを改めてすり合わせる機会が生まれて、この服だと誤解を生むな、もっと下に見られちゃうな、本来とは違う性格に思われちゃうな……と。そうなるのは困るので、時代に合う形で、なおかつキャラクターの誤解がないようにしたい、という狙いがありましたね。アニメの中でも役割が普段とはちょっと違っている子もいますし、そういったことと合わせて、服装に関してはいろいろ見直しました。

でも、結果的に「キャラクターのイメージが変わった」などと言われてはいないようなので安心しました。

見どころ満載のバラエティ回に、CGだからこそ実現した圧巻のライブシーン

――最後に、第2幕(第5話〜第8話)、第3幕(第9話〜第12話)についてもお聞きします。テレビでの放送はこれからとなりますが、見どころはどういったところでしょうか?

綿田:(MILLIONSTARS Team1stなどと)チーム分けをすることもあって、第2幕は一度未来たちから離れて、劇場(シアター)のほかの子たちを多く紹介するフェーズに入ります。バラエティ回のような形で5人とか10人とか紹介していくので、メインの3人(未来、静香、翼)以外の魅力に触れていただけると思います。そして、第3幕はライブシーンが多いです。劇場先行上映で観た人は感じたと思いますが、一番劇場映えしますね。

塩谷:そうですね。

綿田:第3幕だけ劇場で観てもらってもいいぐらい(笑)。

――より良い音響で観てもらいたい内容だと。

綿田:そういう“映える話数”が第3幕は揃っています。でも、『ミリオンライブ!』は39人の物語と言いつつ、それをどうやって12話でまとめるかが大変でした。ちゃんとまとまったと言ってもらえるのか、(インタビュー時点では)まだ観てもらっていないから正直不安です。赤羽根さん(チーフプロデューサー役の赤羽根健治さん)には「まさかまとまると思いませんでした」と言ってもらえましたが(笑)。

――それは安心しますね。

綿田:第3幕は本当に白組さんのあれやこれや、すんごいやばい技術がたくさん見られます。また、それはそれとして個人的には、第2幕(第5話〜第8話に相当)がすごく好きですね。

塩谷:僕も第2幕は好きですね。もちろん全部好きですけど。

――白組さん的に第2幕、第3幕の話数のポイントはいかがですか?

塩谷:本作で、僕は“CG監督兼演出”という形で入っています。あと3人、山村、天井、平川が話数演出として入っていて、各話数担当者には映像に関わる全てを見てもらっています。例えば第7話の水着回は天井が担当ですが躍動的でCGのダイナミックな良さが出ていて面白いですね。3Dの利点も残しつつ、2D作画っぽい感じにもなっていますし、海のエフェクトとか大変なところも頑張ってやってくれました。

綿田:第7話のアクションは見どころ満載ですし、第8話はお芝居が面白いので、そういうところにも注目してもらえるとより楽しいと思います。僕、第8話が1番好きな回なんですよね。

――話数によっていろいろな楽しさがあるのですね。

綿田:そうですね。ライブシーンも良いですけど、この話数はそれ以外のアイドルの魅力がいっぱい出せていると思います。

――そして、満を持して、ライブ関係は第3幕の話数で畳み掛けてくると。

塩谷:はい。CGのポテンシャルや良さが第3幕は本当に出ています。やっぱりカメラをダイナミックに動かせますから。被写体があって、そこに対して照明を当てて、そこからの照り返しとかもしっかり作るとか。なおかつ、カメラを動かしすぎてしまうと顔が変になることもあるので、そこはアニメーターがひとりひとり細かく見て、監督にも細かく見ていただきました。ちゃんと可愛く出来ています。

綿田:CGアニメになったことは、お話の構成にも大きく絡んでいます。普通の作画アニメだったら、構成の段階から「こういうお話は(作画のカロリー的に)出来ない」と言われて実現しなかったと思うんです。でも、今回は白組さんが入ってくれたからこそ、チャレンジする価値のある構成になっています。それも含めて(第3幕のライブシーンは)ちょっと特別ですよね。

――確かに、39人いて「最後はみんなでライブをしようと思う」と提案しても、作画アニメだったら「無理です」と即答されそうです。

綿田:オープニングのサビのところだけで、作画アニメだったら「やめてよー!」って言われますからね(笑)。

――それを思うと、あの人数のライブシーン、しかも全員が主役として立つステージは本当にすごいです。

綿田:やっぱりどのカットも「担当さんがそのアイドルを見ている」という緊張感を持たないといけないですから。

塩谷:その緊張感はありました。

――「担当さんが見ている」。それはライブシーンに関わらず首尾一貫して忘れずにやったということですね。

綿田:そうですね。そして、それが果たせたのは、白組さんはもとより『ミリオンライブ!』のアニメ化に関わってくれたたくさんのスタッフ一同の力のおかげだと思っています。

――そのひと言だけでも、アニメの『ミリオンライブ!』がなぜ素晴らしい作品になったのかわかりました。ぜひたくさんの人に観てもらいたいです。

『アイドルマスター ミリオンライブ!』作品情報

まだ見ぬ夢を掴みたい、春日未来。
アイドルに憧れ揺れる、最上静香。
本気になれる何かを知らない、伊吹 翼。
アイドルの輝きに導かれた3人を待っていたのは、新たな仲間。
39人のアイドルたちがともに“夢”へと手を伸ばす時、
劇場<シアター>に100万の輝きが生まれる!

【企画・製作・原作】バンダイナムコエンターテインメント
【アニメーション制作】白組
【放送】テレビ東京系6局ネットにて毎週日曜10:00~ ほか
【配信】ニコニコ動画にて毎週日曜日10:30~単独先行配信 ほか
【先行上映】全国の劇場にて全12話先行上映実施

©Bandai Namco Entertainment Inc.

オタク総研編集部

著者 オタク総研編集部
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