米Cloudflare、5億円賠償の著作権侵害判決に異議 CDNが海賊版流布の法的責任を負うのは「不適切」


米Cloudflare、5億円賠償の著作権侵害判決に異議 CDNが海賊版流布の法的責任を負うのは「不適切」
Photo by Miika Laaksonen

米国のインターネットインフラ企業・Cloudflareは19日、国内出版社から提起されていた著作権侵害訴訟の判決について声明を発表。「この複雑な事案の審理・判断に多大な時間と労力を費やした東京地方裁判所の尽力に感謝すると同時に、判決の結論に対して敬意を表しながらも異議を唱えます」と表明した。

本訴訟はKADOKAWA、講談社、集英社、小学館の出版大手4社が、漫画誌や単行本を無断で掲載した大手海賊版2サイトを摘発するなかで、同サイトがCloudflareの「CDN」を活用しており、日本国内のサーバーにデータを複製して国内で多くの人が閲覧できる状態にしたと主張。2020年からCloudflare側にCDNの提供差し止めを求めても事態が変わらなかったため、提訴に至った。

CDNとは世界各地にキャッシュサーバーを配置してウェブコンテンツの配信を高速化・効率化する「コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)」のことを指し、判決では事業者が第三者運営のウェブサイト上の著作権侵害を容易にしたとして法的責任を負い、多額の損害賠償の対象となり得ることが示された。報道では損害賠償額は約5億円とされている。

Cloudflareの「CDN事業者に法的責任を負わせることは不適切」

訴訟の一連の判決に対して、Cloudflare側はCDNサービスの役割について「主にデータを配信するものであり、コンテンツをホスティングするものではありません」として、コンテンツを制御・削除する能力を有するのはウェブサイト運営者とホスティング事業者であると主張。

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Cloudflare CDNサービスのイメージ

そのうえで、CDNサービスが停止されても、コンテンツはホストサーバーに残り続けるため、CDN事業者に法的責任を負わせることは不適切だとの見解を示した。

また、本判決の判断は世界初であり、「日本国内のみならず世界全体において、インターネットの効率、セキュリティ、信頼性にも深刻な影響を及ぼす可能性があります」と懸念を表明した。同社は、グローバルなインターネットの成長を支えてきた責任制限を取り除くことになると指摘している。

さらに、Cloudflareが法的責任を負わないためには、裁判所からの正式な命令ではなく通知に基づいてサービス提供を停止することが必要となり、「濫用の可能性が大幅に高まります」と透明性や適正手続きへの影響についても言及した。

著者 テクノロジー/ゲーム担当
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